影法師 八頭身に伸びにけり 実像なればさぞやモテらむ(秋の夕暮れ①)
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思い出は甘酸っぱいと心地よい苦い渋いは知らなくていい
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豆乳で いちごのビスコ 食べたなら また寝ていいよ 体温高い(眠い)
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向日葵の種の落つ 残暑は座る 秋の領域テリトリーより 去らぬ夏
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紫に朱の差し色や宵化粧 峰みねを染め月を待つらむ
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水道のチョロチョロ見つめ触れてみて頭にかけて舐める猫かな
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久方の 木々と苔庭 映えるカフェ 貴女の笑顔と 優しい音色
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ヤマザキのパイの新作「いもパイ」に 舌鼓打つ 金曜日の朝
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プードルが身を乗り出して嗅いでいる街の匂いを空気を風を
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行き着いてなほ足萎えぬ老兵は はやひこばえの萌ゆる刈田に
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轟轟と飛沫しぶきをあげる滝雨たきあめよ いかづちの先に見える龍影たつかげ
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春眠に 負けず劣らず 睡魔飼い エアコンきいた 居間で力尽き
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「その歳で膝が痛いの終わりだよ」まさにドクハラそれでも何故行く
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小糠雨こぬかあめ 夏に疲れた心にも 肌にもひんやり うるおいくれる
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秋晴れの 稲刈り風景横目みて 走る魚沼 ヒカル新米
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肩先の髪なびかせる秋風の記憶は消えずショートにしても
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老体あいぼうに 鞭打ち軋む心臓は すべてを忘れ 前へ前へと
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聞き慣れぬ 朝のバイクのエンジン音 長月の連休の二日目
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まあるい実 ちょっとお名前は わからぬが 努力は実るよ、と たわわに緑
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道の横エノコログサが誘うので三本もらうすぐ猫釣れる
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好きな物持ってあの世へ行けはしない託したのちに灰は舞飛ぶ
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弟の温き心にもたれいて親をおき去る総領甚六
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チビ猫は「ニャマゾン」箱に 根が生えて 呼べど叫べど にうにう牛乳こない
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冷めた眼で戦後昭和の映像に 亡父ちちと私の姿を見つける(「バタフライエフェクト」観て)
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頑なに他人を疑う少女には全てをさらしてならぬ影あり
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朝風に秋の蝶舞う はらはらと 露草の青 空をうつして
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ジャスミンティーよりも ねこのゴロゴロおん 眠りを誘う薬となるかな
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風に百日紅ひゃくじつこう薄桃うすももの 淡い花色はないろ 暑さなごませ
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窓ガラスしっぽの切れたヤモリ張る里帰りだよと夫の言い分
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五十年丸めてポイと捨てるよに金婚旅行の部屋の屑入れ
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