愛犬の逮捕に走る 転がったワインのコルク咥えて逃げた
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君知るや 人目も恥じず 睫毛墨マスカラ の 落ち滲みたる 我は泣きおり
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しぼり出すちゅ~る 冷ゆる指に着きし める猫のさき舌 ぬく
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暁に 消え入りそうな下弦月 師走の空の雲間隠るる 
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思ひ詰め 言葉を編めず 夜は更けてゆくのみ 歌は未完まにまに
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西の山東の山も薄っすらと雪を被って風花の舞う/朝
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雲間から差し込む斜光照らし出す冴え冴え白く光る山頂
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師走来て 路面凍結冬タイヤ 交換するも老いの身重し 
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アラームを止める指先 かじかみて 毛布に引き込みぬ 寒波の朝
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動かざる思ひ知りたる雨の歌ひとり受けたしあゆみ静かに
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大掃除 拭いたばかりのガラス窓 指差し呼称妻からダメだし 
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救急の惨事を告げばデイケアの瞳の奥に涙の光り
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窓を出てぐるり回って勝手口開けてくれろと猫のルーティン/朝
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かあさんはもう多分餅食えないとお供え餅を1個だけ買う/嚥下障害
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ダイソーで可愛いピアス買い漁る美女と呼ばれた意地があるから /還暦
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多忙なる 一日ひとひの終わり 静寂が クールダウンを 吾に施す
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紅々と色づく部屋のポインセチア猫のあくびも冬を運びぬ
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明日への扉を閉じて今はただ心に灯すおやすみなさい
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雨間あまあいに 青空見ゆる 露天風呂 温風ぬるかぜの師走 春の如し
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白い湯気しゅーしゅーさせて蒸してから蒸篭せいろを開ける瞬間が好き
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縄文の人も食いけむ栃餅や土器のまわりに笑みのあふれり
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枯れ葉さえ 舞わぬ一日 小雨降る 寒気沁み入り 柚子湯を想う
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はだいろがピンクベージュと名を変えて澄まして座るクレヨンの箱
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の腹のうだる痛みに凛と立つ妻は修羅場の花の神なり
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目をこすりもじゃもじゃ髪のおばさんはググれば名医 明けの明星 / ミスで再掲
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通院にペダル踏んでも月一回ひと駅歩けば十キロ以上
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生憎あいにく雨催あまもよひ 予定揺るがす 今宵はつまと イルミネーション
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「寒いね」とかじかむ指をすり合わせお鍋の煮える音を待つ夜
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このゴミが入れば明日は辛くない一回壁に当たって入る/ゴミ箱
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雨催ひ靄もかかった冬の朝 奇妙に温ひ師走の日曜
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