葉を落とし吹き荒ぶ風は北からの いよよ近付く冬の匂いの
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竹と縄で職場の木々は冬支度 雪吊り美し霜月の空
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店閉じし笑顔の美味しケーキ屋の瓦礫の山に秋雨のふる
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晩秋の冷へ込みぬ夜半よわ 寄り添ひて温もり与へ合ふ 犬とつま
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たくましき ガジュマルの木に 宿る気に 活力もらひ 冬を迎える
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雨上がり陽に照らされし草紅葉 空気冷やりと冬迫り来る
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はらはらと さき扇子を振る如く舞ふ 鴨脚樹イチョウの葉 霜月の風
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煮詰まった 頭を覚ます 屋上で チョコを一口 甘さにほろ酔い
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土曜日の街はスローな紅葉もみじ色 僕だけ疾風白きママチャリ
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見送って送られてまた見送って「また明日ね!」で真ん中バイバーイ
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勉強と 元上司に 誘われて 本格的な 茶室で一席
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バツ四で もう懲り懲りと 語る君 鍋の湯気に 涙を隠し
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雑草と門と銅像だけが立つ透明校舎風も透かして/廃校
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ありふれた街の匂いは変わらねど 風邪鼻は聞く異界の香りを
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赤と黄の 紅葉こうよう見つめ 秋の日は 自然が作る 景色を堪能
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ご近所の 紅葉眺めつ 帰り道 立ち止まっては 花の名教え
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コンビニでバニラモナカを食べたんだ 痰の切れない喉にスーッと
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家じまい使うことなき物多し戦後の義姉あねにミニマリストは
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窓開けて入る空気は冷たくて雪の匂いがする雨の夜
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眉の位置ちょっと違えば別の人福笑い術使って直す
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ベランダに 五つ連なる紅き実の 寒風の中干し柿を干す 
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人ひとり動かすことはらくで無く寝返り排泄入浴しかり/ニュースからふと思い出して
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青空と 公孫樹いちょうの黄色見るにつけ 戦禍の国が思い起こされ
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今少し 眺めたきかな 遠き日の 夕雲に似て 山のに沈む
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午前から仕込むおでんの香りたち真冬日初日の夕餉もふたり
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昨晩は咳で目覚めることもなく どうやら抜けたか風邪のトンネル
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バタバタと寒波来てから着る物や掛けて寝る物冬への覚悟
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駅前の イルミネーション 連なった 明るい色に 寒さ忘れて
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辛いのは得られぬ事と思うから与えるだけの恋で止めよう
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見上げれば 編隊を組む白鳥の 規則正しきVの字飛行
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