みなもには残りもみじの朱をうつし じゅんさい池は冬のしじまに
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誰を待つ 訳でもなくティーカップあり 葉洩はもれ日の散る 庭のテーブル
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窓外の月が凍ると気付く夜君が嘘つく煙草の残香
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鮮やかな イルミネーション街路樹に 光り纏いて忍び寄る冬 
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とまと色に染まる朝焼け半開き窓より入りぬ師走の冷気
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生きる事それが一番辛い事若者だっ浮き世去るのに
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秒針と分針ズレているような違和感のまま終わった会議
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ハイウェイのゆく先染める冬茜 美し星に生きてると思う
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夜仕事でやつれた顔の朝の月 西の空には雲のしとね
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つり革に 初めて届き 喜びて 記念日だねと 言ふ吾子愛し
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娘から『父に彼女が出来たみたい』それは別れる以前からのこと
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今週もきみに会えない 残薬が少ないように心細い夜
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丙午ひのえうま 年が明ければ 年女 避けられた年 それでも生まれ
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室内へ日暮れのように灯をともしぼたん雪ふるバッサバッサと
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アラームを止めた切り 二度寝に嵌まり 温き毛布の 冬の誘惑
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地震なえののち寝返り続く幾度目か考妣こうひならびて静かに座せり
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夫から「買うもの忘れた」LINEあり 吾も忘れて苦笑いなり
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カーテンを開けると ぱあっと日がさして 明るい未来を 指し示すやう
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陽当たりの良き敷地には 紅白の山茶花さざんか 師走のバスの車窓
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乗り過ごし無きやう 思考す 歌詠み 集中し 眠気を払拭ふっしょく
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雪にこそ映えて冬柿しっとりと禍々まがまがしくも見える今年は/熊
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墨を置き筆先迷う米国の君に送れず透明な雪
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こんなにも積もっていたと時間差でわかる吹雪で見えてなかった
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待ちわびた今年最後の満月は 分厚い雲の御簾の裏側
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僕の手の中の ちいさな手は熱く 眠いかそうかと 愛おしなみだ
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吹雪後の満月が照らす人々の必死の除雪語る雪塀
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ねこのひげ みつけたあさは よいあさと 我は決めてる 本日晴天
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十六夜の月が明るく照らしぬる 母の帰る道 我が行く道を
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友誘ひ フリータイムにて熱唱 歌と笑顔の 師走の集ひ
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茜色雪を染めゆく夕焼けて苦き珈琲君を思うよ
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