ながあめにぬれそぼつらむぬばたまの夜をこめてなくみみづくのこゑ 

太陽も月もいない 電球の切れた部屋と腫らしたまぶた 

いい歳の猫よなぜ鳴く 寂しいか、子猫のような声を出すほど 

泡沫うたかたの名に似合いしは短歌みじかうた いつか消えゆく心の墓標 

吐き出した涙産まれのユーモアは春まで届いて冬を越させし 

美味しいと感じる舌に励まされ 苦い暮らしに心を肥やす 

冬山の遠く見ゆるは枯れ頭 暖取り丸まるキジ猫見たり 

満員のバスから眺む朝晴あさばれの優しい色に会えぬ君想う 

血の味がするグラタンでギャグ漫画思い出し笑う独り身の夜 

五メートル先の背中を追いながらもう繋がない右手を握る 

‪腹筋に力を入れて読んでいくこれは「私の」ではない感情‬  

望まれないままに望まぬ暮らしをし ただただ望むあなたのしあわせ 

土砂降りの涙の理由わけを歌う歌 月が朝日を呼び起こすまで 

屋上に缶チューハイがありきっと誰かが星と会話した跡 

ひとつきに一度読みたい本がある二度と会えなくなる人もいる 

‪「あのひとに電話をかけて」「すみません」ありがとうSiri、まだ正気だよ‬ 

‪新商品だったとアイス掲げる手また生かされてしまったようだ‬ 

AをしているときBが気になってBをしてるとAが気になる‬ 

海へ行く 終わりにしたい日常の外側へ出るドアを探しに 

色のない波に誘われ焦る春 まだ熟れぬ緑 果ては枯れ草 

「あれ、今日は田中と結婚したんだね」「2組体育無いらしくてさ」 

お互いに気遣いあって大皿に出汁巻きひと切れのみすぼらしさ 

眠る君にキスしないまま冷め切ったギョウザを咀嚼する午前2時 

午前4時 デジタル時計が 教えてくれる 僕の心は 404・Not・Found亡くなりました 

レモンはさ、いいよね。ギロチン落とされた首の断面すら映えそうで 

階下より空に近づくはずなのによけいに空が遠い屋上 

いつだって何かを誰かに恥じているきっと無人島でも歌えない 

屋上の金網越しに鳥が過ぐ街に飼われるぼくを見下ろし 

擦りむけたひざもほっぺもものとせず補助輪はずす背中の翼 

寛容な俺も真夏の熱々な便座設定だけは許さん