人びとのあゆむ速さに滲みゆく銀杏並木のあおいろきいろ 

焦げ茶色の陸橋に汽車あらわれてあとすこしだけ此処にいる 時間 

とびとびにとぶ雲を見るあきかぜのはてにはなにもない空もあり 

冬薔薇の棘の硬さに食い込んだ人差し指に血は出て来ない 

しじみ蝶のからまりあって昇りゆく 太陽にかさなって見えない 

はるかなる道はるかなる夏雲にちいさく息を吹きかけてみる 

塀の高さに薔薇たち上がりちょっとだけ背伸びをしても手は届かない 

木々の葉の影こまやかに映し込み疎水に春の声が聞こえる 

頭上あたまうえ仰げば寒い白椿首を縮めてふるえておりて 

ひと巡り東の空からやつてくるおはやうございますの一年 

この庇護に思ひ伝ふる事出来ぬまどろこし 暮るる空のやさし 

「可哀想」自己満足がお好きだね 花を摘むのは君の意思だよ 

溜め込んだ洗濯物を干してみて計画性の偉大さを知る 

家の中ちいさな嵐起こすボタン一番好きな家事は洗濯‬ 

オパールは不眠の朝に照らされる 美しいとは思えなかった 

鏡にはいつもと同じバケモノが映る 行こうぜ、今日も晴れてる 

人間として人間を生きました 「生産性」に殺されたくない 

意味のないままに歌って、意味のないままにかなしく生きて死んでく 

休みの日 気がつけばほら 日が落ちて 洗濯すらも できてないねぇ 

「よかった」と結ぶつもりもないけれど キミの挫折はただ正史でした 

加速して前のめりになるスヌーズが指の隙間を飛び出してゆく 

スニーカーカクテルパーティーすれ違う知らない二組繋がる会話 

青インクこぼせしベッドの天蓋のロールシャッハは愛を語りぬ 

帰ったら手首に二本腕時計パラレルワールド今収束す 

ベンゾジアゼピン 地球に生きている、君の一部は私の一部 

バイト行き十歳下の子に教わる現在地をまだ測れずにいる 

インスタに賞与を載せるOLがいて賞与のないOLがいる 

ひとつきに一度読みたい本がある二度と会えなくなる人もいる 

忘れない忘れたかった忘れちゃう忘れる忘れたら忘れんなあなたへの五段活用考えるずっとあなたの生徒でいたい 

満月を卵液に浸し焼いていく職人住まう真夜中キネマ