新人のタクシー乗りは駆けながら「ときには眠くなる」と答える 

世界から嫌われたかった 夕立を切り裂く銀のカミソリになる 

春浅い岸辺の風に包まれて封を切るとき月は透明 

「ほんとうの願いを言え」とむらさきの靄に霞むはわたしの心 

ひさびさの煙草は脳に祖父がいた畳の上のひだまり映す 

テレビから離れぬ父と歩く晩そばに愛犬のんびりおしゃべり 

ジャリと鳴る道を見つめるあの小さき足で確かに踏みしめられた 

散歩道みどりの中に誇るあか 秋色吸い込み朝を駆けゆく 

月明かり緋色に匂う曼珠沙華 切なく凛とし我が目を奪う 

雨上がり雫が光る月の下 花は静かに虫のを聴く 

指の先まで満たしたい言の葉の脈へと潜りさらに奥まで 

薄闇に真白ましろのしっぽふわりふわ こみあげる愛しさ夜に溶け 

無垢なしっぽまっすぐ空へ月明かりのもと気になる地面、草、ねこ 

訊かれたら出欠迷う会だけど声掛からぬは少し寂しい 

指先が冷えてシーツを泳ぐ真夜中に 光る画面に手を伸ばす 

洗顔料、湿布、酎ハイ、肉体のこわばり溶かす酸っぱい香り 

足元に小さき細き花見つけ盗めもしない春愉快也 

ささやかな幸せちょっとした不安それこそがこの世界の全て 

公園の日射しのなかで 99.99フォーナイン 血液巡り満ちゆく黄色 

白と黒 対立が生むものもある 繭玉を裂き 目覚めよイラガ 

この世には混ざり合わないものがある イラガの繭の模様に憂う 

憂鬱がぎゅうぎゅう詰めの月曜日 まだ聞こえない天使の喇叭 

アレクサがストップ無視をしてる理由わけ鳴いているのは本物の蝉 

波流る 瀬に打つひれの 水飛沫 橋下きゃかの宿りは 火も起こせぬよ 

この頃の 雪降りたるは 静かなり 吹雪く日待ちて 歩く日々旅 

月の如く 二番の顔を 見せぬ君 言いし時にぜ 吾は世に居ぬか 

する事の 悪しき事なり 天つ神 初日はつひの雪ぞ 減りし事なし 

この道の 足跡の色 白白と 二度逢うせおうせ黄衣の君きごろものきみ 

この間 餌付けしてみた 野良猫は 僕を見かけて 頬すり寄せる  

金剛の 心と言われ 苦笑い 実は意外と 砕けやすいの