好きになる ただそれだけで人間は 幸せになると気づいたあの日 

おおかたは「存在と時間」読まなくて 実存の苦と縁なく生きる  

おまけだよ 「存在と時間」読んだ人 今ならもれなく「苦」がついてます  

わたしにはセンスがないとわかってる 自戒のために短歌を使う 

触れ合いがなかった会話で笑うのに愛情測る機械があれば 

台風が夏と駆け落ちしたらしい 昨日はお楽しみだったのね 

このようにローマ帝国滅亡すそんなことより今日の弁当 

秋風が捲る頁のあいだには知らない店の褪せたレシート 

短命で構わないから燦々と燃え尽きたいの昴のように 

引き返し引っ張り出した羽織着る秋冷の朝身震い一つ 

嵐でも 飛ぶやこふもり 稲穂うえ 風は吹けども 闇は闇にて 

キザなりの流儀と聞いて覗いたら花を一輪摘むことだった 

鼻かめば 耳の奥まで 貫通し 音が可笑しく 響くこの頃 

スーパーの石焼き芋を頬に当て君といたはずの温かさを 

君のいう「嫌いな自分」と私の「好きな君」は同一人物 

人が人から生まれなくなる日までもう少しこの茶番は続く 

車ゆく 道路の水面 雨やまぬ ハイライトよく 行先眩む  

乙女座の彼が頼んだカシスベリー私が頼んだ焼酎お湯割り 

こうやって終わらせることに慣れていくLINEを消して、少しだけ泣く 

うつくしきハーバリウムに閉じ込めしトリカブトぼくはいつでも死ねる 

ペダル漕ぎ胸に吸いこむ夕暮れの 秋の香りにスピード上げる 

雨の日の散歩はおっくう目を見ると オレも同じと尻尾をゆらす 

しってるかい この駐車場は昔海だったんだ くじらや亀もいたかもしれない 

真夜中に誕生日の児泣いている洗濯物も雨に濡れている 

君の手の柔らかさと温もりを知っちゃったから手持ち無沙汰で 

この世とは違う平行世界にて生きる私が幸せならば 

ススキの穂風に吹かれて白銀の波となり声吞み込んで揺れ 

空高く 飛び立つ蜻蛉眺めつつ 文字を転がす 31 

君という予定なくなり秋長し暇潰しなら私にしなよ 

襲い来る兎のような風だった一心不乱に齧られた街