和らぎの萌黄色から青葉へと 装い変えて初夏に向かう樹々
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春疾風 凍てし涙の乾くころコート脱ぎ去り光纏はむ
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青のとき一番星が瞬いてもうじき夜のとばりが下りる
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暑過ぎず寒過ぎぬ午後エアコンのフィルター洗って気持ちも晴れて
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あなたには、届かぬままで 散る恋を 何と名付けて 春に捨てよう
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心まで見詰め返して来るギリア愛する人に思い届けて
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公園で駆けるおさな子 後を追うじいじの笑顔に 緑の風吹き
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馬車道の雨の景色に助手席の窓はゴッホの絵画に見えて
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日残りて 黄昏迫る山里に 我が影伸びて夕陽に染まる 
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心地き宵の温風ぬるかぜ 頬を撫ぜ 北斗七星仰ぎ 家路へ
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君の居ぬ右側慣れぬ夕暮れにオレンジ染まるひと筋の影
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チビ猫が 行方不明の 朝であり 皆で捜索 箱ですやすや
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天仰ぎ 春の星座と 目が合へば さき悩みも どこ吹く風か
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「仲いいな」長袖Tシャツ洗ったら絡みすぎだろ腕と腕とが
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仕留めたる 鼠をくわえ 見せにくる 健気な猫と 共にありし日
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老い宅へ訪問くるる駐在さん既に周知の情報ばかり
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たくあんと野沢菜漬けの桶洗い 冬の始末がひとつ終われり
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おはようの音を奏でるサックスの銀色褪せてセピアなる朝
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父が刺すボタン外れしワイシャツも窓打つ雨もみずいろの濃し
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水温み駆け足でゆく白き砂ちいさき手をひく鼓動の伝はる/妹との思い出
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三十一みそひとに込めれぬ想い溢れすぎ山に向かって相談してる
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とりたてて秀でるもののなかりせば凡なるたひらのなほもむずかし
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石鹸の匂いと君を抱きしめる 裾を揺蕩たゆらす風の優しき
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鶏の 声に目覚めず きじの鳴く 哀しき声に 朝焼けを知る
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春霞 糠にまみれて炊くたけに母のひとこと今さらに染む
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ながいことやってしまった『いいひと』のあくぬきするや竜泉寺の湯
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夜半の竹 薮に光るや月の如 姫はなにゆゑ竹に入りてや
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卯月満つ 藍裂くほどの静寂に 木群むらだちのぞく月ぞうつろふ
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冬眠の開けしじゃがいも待っている姉の電話に隣町まで
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漬け樽をひっくり返すとまろび出た たくあんお前 まだ居たのかい
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