忠実に手本を習う一時間小筆を持つ手のはつか震える
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麦の穂を 自由自在に 遊ばせて 光をうつす 風のマエストロ
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京都御所 清涼殿を眺め ふと一条帝が現れそうな /光る君へ
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茹でささみトマト加えた猫ご飯りんごの愛を食べ尽くす猫
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まだ熟すことを知らずに箱詰めにされたトマトの青いため息/題『箱』
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包みゆく雨の匂いよ我が恋のほてりも逃がすまいと夕立
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一歳の夏は大地を踏みしめて感じるだろう熱や匂いを
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ただ空を見上げる蝉の屍は生を全うした姿なり
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好みの味加減の煮物 いい匂い 自画自賛だがビール欲しくなる
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太陽に追い越されゆく静けさとふたりきりなる微熱の夕べ
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吾も負けじ再度世に出る日を誓い明日の教科のグループワーク
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あの人を どうかお守りくださいと 今日も祈りて 日々は始まる
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朝の風 わりに涼しや 蝉時雨 ハワイもとめてコンビニにゆく
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アスファルト陽に焼けてなお黒光り三号線の朝を駆けゆく
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はるばると原始へ続く過去を持ちメタセコイアは静かに立ちぬ
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夜なのに傘を差す人 新宿のネオンライトに身を灼かぬよう
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水筒を忘れた事を言い訳に今日の散歩は四十分だけ
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真っ白な雪が頂隠す様に洗濯の山に洗濯を積む
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「伺います」など言わねばよかった夏営業 熱射の路をふらつき歩く
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三十一みそひとを探しあぐねて終日ひもすがら 豆大福の塩味うれし
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ねことねこ 毛づくろいし合うときもあり セルフのときも シンクロ愛おし
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猫の老い 我のそれをも 追い越して ずっと一緒を 願う毎日
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枝先で塊咲くや百日紅 花のまま散り路上を染めぬ
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満月を 眺めて 思う 何となく 明日はいいこと あるかもしれぬ
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唯一の心の支えの娘だが巣立ちの日までカウントダウン
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またキミに はらわた煮えて 頓服のお世話になりぬ 薬もつかな( 次回通院まで)
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餌もらうさくらねこほど気にかける人を持たない空白のぼく
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草を刈る 面影の父と 山の墓地 夏の背に汗と ただ蝉時雨
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カセットで 君に渡すよ マイベスト 音と一緒に 恋心込め
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群れの中ひとつ小さな向日葵が花咲かすなり他枯れる頃
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