機微の春さえずり心震わせて土蒸す野花は夢に目覚めて
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病室の窓から眺むる桜花 小雨にけむり しらじらと咲く
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足るを知り 慈雨に感謝す 春の朝 吹く風ともに 年度始めへ
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トゲのない言葉を探す会話するへとへとになる今日も一日
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土砂降りも雪も曇りも惜しみ無く見せる素直な空は憎めず
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薄っすらと汚れ具合も布製の文庫のカバー手に心地好し
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満開の 桜便りは届けども 我がふるさとの蕾は硬く 
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ぽつねんと庭先に咲く花桃の紅白濡れて門出のあした
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花冷えに ちま猫ちゃんは さんかくの おにぎりになる おててはのばして
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桜蕾おうらいに降り注ぎぬ 恵みの雨 潤ひて 満開まで待ちぬ
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らっきょうを 添えたカレーは 春の味 疲れも取れて ギア入れ直す
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月明かり部屋の中まで差し込んで今夜は春を纏って寝よう
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不確かな義理で助けた命など残りの人生不幸しかない
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薄雲ひろがる隙間から ふんわりと まろやかな光届けるおぼろ
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愛されていた君ならん関取のようなる息子 泣き崩れさせ
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純白の桜の花と若葉萌ゆ斜光に風の共演へ酔ふ
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正座して 痺れし脚を 引きて行く そろりとそろりと 狂言の如
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老猫を抱き上げ軽さ驚いてうまいものなど食わしてやろと
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山頂に捧げしカフェの湯気へ乞う友との無事の劔の下山
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しとしとと 恵みの雨が降りしきり 梅の香ただよふ菜種梅雨かな 
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風雨受け 手入れもしない 庭なのに 数年前と 余り変わらず
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母の負を父のいさおで拭ひ去り 私は独り介護あしたを編めり
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今月に入って「すき」と告白を数えきれぬはエイプリルフール
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病院で近況報告『舅死す』知っていたのか静かに聴いてる
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小夜雨のテンポ早まり安定の君の寝息を数え夢見る
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数駅を寝落ち過ぎたり花の酔い 戻り列車に慌て駆け込み
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チビ猫の 寝ぼけて うにゃうにゃいう声を 聞きながら飲む 朝のカフェオレ
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レンギョウの黄はまぶしき光となりうつのこころにまっすぐ刺さりぬ
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はしゃぐたび背徳という氷柱落つ 僕を刺しぬく春の陽だまり
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朝露に にじむ街の 宝石など 持たないだろう うたかたの人
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