Utakata
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もういない人の好みの味付けで 私のために作る肉じゃが
35
大楠の洞に入りて息ひそめ樹齢に滲む樟脳のかほり
19
ぽつとぽつ 草木が「降るぞ」と噂して 私は散歩の
踵
(
きびす
)
をかえす
16
サワガニが横に進んだ道なりを 前に進んで追いかけて行く
16
雨だから君が頭痛にならないか心配をした 変わる信号
16
叡山で消火訓練やってたよまだ信長が怖いんだなあ
16
君の居ぬ間に食べる辛ラーメン ひとり暮らしの風が吹く夜
13
青天が爽やかよりも汗を呼び 春の終わりを夏が追い越す
29
木々の
音
(
ね
)
の静けさそよぐ曇り日は葉の色合いもどこか安らか
18
釣り銭を 正しき額で 差し出せず 我に財布を 開きし老婆
15
万葉の 人の嘆きを詠めばなほ 千の月日も 人は変わらじ
35
二組の万年布団の片方が謝るように畳まれている
28
ホッピーのグラスの先に青い夜 カフェーテラスのない浅草で
11
たらればに縋る毎日もう二度と 分岐できない過去にサヨナラ
9
いろいろな憂さを抱えて貼り付けた笑顔の裏の重たい身体
10
風薫り妻には妻の予定でき子どもとべつで集うママ友
15
旅終えて 帰れば我が街輝きて 凡庸で良し 我の居場所は
19
現実を受け止められず左折した広がる原野に希望は見えず
8
人生の秋にいても毎年芽吹く若葉の様に学んでいたい
8
オリオンの 窓から見えた
星
(
地球
)
は今 まだ青いかい? そして平和かい?
8
銃声と存在意義とひとりごとペトリコールと空と春の日
9
公園で曇りのしたで遊んでる義務感じみた家族団らん
9
気だるさとめまいで自由を奪われて 自由に動ける奇跡に気付く
10
外来をすませ医局で一服し「一日一首」に生き甲斐おぼゆ
18
にょきにょきと 立派なアスパラ顔を出す 心と身体に 元気をチャージ
19
祝日か振替なのか何の日かわからぬままのシフト出勤
12
高原はなお裸木のまさる頃 牧場に幽か
早緑
(
さみどり
)
萌ゆる
22
二人して料理した日朧げに いまはひとりで鍋作り頷く
11
実家から帰るわれ送るゆっくりと歩きだす母背中さみしげで
17
長年の役目をおえて去る
女性
(
ひと
)
の過ぎし苦労は喜びにかわる
17
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