高校で時が止まりし友の部屋 日記のような手紙読みあう
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ピアニカでも鍵盤ハーモニカでもなくメロディオンだと子に教われり
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煙る雨 春雷光った 緑野に つかの間浮き立つ 淡き菜の花
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埋め方がわからないから散らかしたままで寝ている 部屋も心も
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営業をサボって泳ぐ一時間 駅のホームで心地よき風
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たんぽぽも犬の背中も夏支度 綿毛ポワポワあたり一面
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鈴懸のみちほがらかに颯爽とばいすくる乗り駆けぬけるひと
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道の駅泥付き落花生並んでる今夜のつまみに塩茹でにせん
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あおあおと夏を知らせる枇杷びわの葉と元気をくれるきみはビタミン!
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「ひとりでも生きていける」の裏側に隠れてる「ひとりにしないで」
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夢にみる眩しい場所でいつの日か 抱えきれないほどの花束
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歩きつつ見上げたる空は花曇りわれまだ見ざる桜そに見ゆ
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通過する 風に逆らう この気持ち 少し強めに 切符を握る
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牛乳の空きパック使い常温に冷ましたほうじ茶おともに連れて
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ストレスで 産み堕とされた黒いモノ おまえも俺だ ヴェノムと呼ぶよ
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飴玉をもって散歩に出たんだが水を持たぬを悔いた昼過ぎ
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窓開けて重くただれたこの部屋の空気と悲しみ夜空にあげた
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今ならわかるよ 草花いじりながらひとりごと 三十年前の母に話しかけている
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窓際でふっくら眠るねこを幸福として数える通勤路
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時を越え 同じコートに立つオヤジ タメの県チャンプレジェンド 顔がにやける
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ネーブルの薄皮剥がし口運ぶ ツバメのヒナに餌をやるよに
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名も知らぬ草をひきつつふと見れば黄色や白の花の咲きおり
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振り返るという行為が増えてゆく心は未来想っていたい
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灯屋くん帰ってこないね
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潤間ぼへさん帰ってこないね
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失せ物はその気になっても見つからぬ悔み視線を落として気づく
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日常の些細なことに神が宿っていてほしい 八百万の人の願い
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きどころ寝気がつきゃ夜明け一時間寝床で寝よか朝にしようか
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冷凍庫急冷さしたる缶コーヒー そのまま忘れて会社へ向かう
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贈与税、相続税より高いからだからでしょうか放棄認めず
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