自然だと言うには過ぎる厳しさを画面越し胸赤くして見る
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還暦に子等からもらいしスマートウォッチ 心拍数と歩数を刻む
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今は無き故郷の家の庭先に どこでもドアで行く夢を見る
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選帝侯も市民も薔薇も驕るなる国家たる小都市のさなかに
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最後のユダヤ人を死なしめしたれかれも選帝侯のこゑに靡きて
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皇帝の死こそ麗しトーガには血のひろごり赤薔薇のごとし
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躓きてドアポケットがレグホンの白色鶏卵皆砕きをり
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悪魔崇拝せしクリスチャン天使崇拝せし悪魔を笑ふ
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その地にはネフィリムがゐた 墜とされて打ち滅ぼされわたし堕天使
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左むきで夜ふけのハンドル滑らせるおまえはせかい「こんばんは。海」 
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湿度計気にしながらもデンタルピックに研ぐ歯ブラシのけばけば
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お隣りさんは戦争だよって夕焼けのマクドナルドでいっていってよ
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みんなみんな星型に絞るマヨネーズ嫌いの反対はだいきらい 
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母と娘が二人で生きて絶えて逝く遺ってひとり生きられぬから
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久しぶり外科の主治医を見た今日は老けた気がした白衣のすき間
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根雪には遠いであろうゴミ出しの道の端端まだ溶けぬ雪
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待ち合い室平積み雑誌の表示なる小保方晴子に安堵した事
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母を見て泣きじゃくる子を外に出す辛き日々ある母を知らずに
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朝露にきらめくおちば陽のあたる ひと目につかす輝いており
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ベッタラよ こがれてつけし老いふたり 十キロのダイコンふらつきつつも
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父母ちちははとむかし泳いだ海街で 獲れた蜜柑を我が子に与う
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一歳の我が子は全ての食べ物を ば・な・な、ば・な・な と呼んで笑うよ
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朝まだきあかりの家のあちこちに 通院の闇ほのかに照らす
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あかり 雪山照らし 明けきらぬ 朝にはじまる 朝餉のしたく
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すこやかに個性を競ふ老若に男女にみな同じかほのうたかた
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東京に左遷単身赴任でもひとりぼっちのあゝ恵方巻
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旅行ならいっぱいしたしアルバムはたくさんあって急に別れた
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階段を駆け上がってたねあの頃はよろける老犬と今朝もお散歩
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こそばゆい つむじのあたりに ある月が 私を 縦に貫くようで
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森にいて 星屑のうずに 身を投ず そそがれてゆく ときどき流星
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