晩秋の 頼りなさげな日差しでも 燃える赤い葉 心にくれる
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早朝に 落ち葉掃除を する翁 挨拶の声 思わず笑顔に
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墓前にて頭を垂れる父の背にこの二十年はたとせの星霜の積む
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市役所で働く君は研修中 笑顔がグッジョブ ひたむき素敵
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山型の山の分だけ残しおり 朝のひかりに 『超熟』のパン/改
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鈍色の空重ね着をするように赤黄緑の秋 置き土産/改
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夕間暮れだれのかなしみ連れてゆくつぶれた店ばかりならぶ道
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誰だってまぶたの裏に隠し持つ今よりもっと高かった空
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都落ち 紀州路流れ 山息吹  海の青さに 心洗わん
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人として 生きる限りは 難儀あり 透明クリアな鎧 常に纏いて
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手持ち糸で 花束ブランケット編み 色彩センスの無さに凹んで
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人波の秋のよそいに巡らせん 思い思いは いろとりどりに
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今ならば見送り人の多けれど 年ごと細るや 参集の列
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今朝もまたルーティンひとつ崩れゆく 生きづらさ的ルーティンの翳
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外に出よう 秋の日差しに 誘われ 買ったばかりの ジャケット羽織る
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鉄塔をミクロの棘と重ねたら地球は宇宙のウイルスかもね
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ブランコに緩く揺られて去っていくあなたのほうは見返らないわ
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ベニヤの戸たてて回廊坂のぼり左に折れてもう探せない
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七五三 ねがいぶみ書く 女の子 いつか会う人 まだ見ぬ人へ
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久方に 友らと語らいはしご酒 ひねった膝は 痛飲のゆゑ
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気になって駆除辞書で引く追い払う一義の意味だけじゃなくて今/間違ってはいない
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風の中まだ君がいる気がしてる道の向こうの堤防の下
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夕闇に 青紫に火柱が 炎ゆらめく牡丹焚火かな 
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今日も通院 いっぱい食べな エネルギー おかあちゃんも 体力勝負よ
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手も足も出ずに生死も許されず私変わるな残余の命
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トイプーが音もたてずに寄ってくる眠たいけれど退屈なのね
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木枯らしに 種々の落ち葉が舞い狂い 小春日和の昨日を拐う
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「躰の細部にも我が宿る」冬 艶色俳句置いてゆく君/出張
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いつもなら二十日あたりは雪になるあんな夏でも予定通りだ/今日は雪らし
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初除雪びちゃびちゃ重い滑らないああ体力が落ちて老骨/ハァハァ
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