揺蕩える酔夢の中の影法師 回路の君がそっと袖振る
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僕たちの醜さだけに蓋をして「青き春だ」と人は言うなり
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推しぬいの金額見て目をひん剥いた 後には引かぬ これが大人だ
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遊ぼうよ 息子の誘い どれくらい 応えているかと 我反省す
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落ち着きがないし姿勢も悪いです 同じこと言う先生と親
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毎晩に せめて夢の中にと 思うのに 一度だって 姿見せず
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蒸し暑い 電車の中で ぼんやりと 晴れた眺めを そっと楽しむ
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夜更かしでやりたいことをやった朝 眠気と戦い今日も行くの
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督促をむかへうたんかなけなしの涙の日本銀行券で
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体重計身に覚えなき二キロあり それでもいいから食べるよそうめん
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人間に尻尾があればこんなにも悩まず生きてこれただろうに
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風呂が沸くまでの時間だけ泣いて良し 気付いたら朝で風呂はしょんぼり
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室生犀星さいせいの「遠くに有りて」とふ「故郷」へ高速道にて通勤するなり
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子育ては演技力も必要です昨日は鬼で今日は燃える火
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組長の出所祝いに絶対に出しちゃいけないものはケーキだ
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わたしたちうまくやれるわ そこらじゅうクリームまみれになったキッチン
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風邪ぎみの詰まった鼻をこじあける 昨日作った辛めのカレー
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ひたひたと近づく終わり、晩年の。あと何を得て何をか忘れん。
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新緑の木々の匂いをたばこにし 深く吸い込み夜空へ吐き出す
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自分の 体だから わかってる いつ死んだって 後悔しない
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すれ違う回送電車に 脳みそを ひったくられてしまったようだ
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現住所はひとつきりだし 複数あったほうがいいよ 心の置き場くらいは
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君の名は?Googleレンズで問いかける姪に春告ぐフヨウカタバミ
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目で追ひながらふり返る胸にしまひし日々のあはれを
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木喰を探し求めて清源寺 山川深み身延を想う
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草花は名前を欲しておりません 名前は深き 人間の「業」
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人生は引き算だよね、失っていくことだけが事実なんだね
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ことりなく、朝の静けさ。目をつぶればまだ寝てしまう。俺がそこにいる。
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価値観の違う世代に一呼吸ため息一つ空に放てり
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「良い意味で 見た目通り」でも 癪だから 外れてやろう 悪い意味で
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