恋人が残していったセーターの残り香悲し箪笥にしまう
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蕎麦屋まで道々芽吹く木々あれど 相方のなく ただ此処に春
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音もなく 月明かりのみ 照らす町 単車の音に 明かり灯る
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たつぷりと付箋のつひた課題図書読むとは向かひ合ふといふ日々
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球音がカキーンと響き弧を描き光をキャッチ勝ち負けはなし
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告げよ春 この世は冬の幻と 河原の石売るほどのかひ無く(つげ義春逝く)
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ときめぐり 三たび春華に 出逢ひしも 君への想ひ いとも変わらじ
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雪折れせし桜の小枝に八重三輪。すでに花瓶は春盛りなり
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象徴 北極星=ポラリスは 如何なる時も そこにある 場を失えば ただの風船
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春風に花酔い人の波よせて『焼きビール』てふ幟はためく
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しとしとと窓の雨粒眺めながらコーヒーを飲むお湯を沸かして
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朝方に 乳飲み子もぐる 我が布団 子の足ぬるし 春来たり
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咲くたびに庭のさんしゅうと歌ったそれは山茱萸ではないらしい今寝たきりの母さんが歌っていたな庭のさんしゅう/山椒とか
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詠み歌の自費出版を夢みるも贈る相手がいないに気づき
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着付け後の 合わせ鏡に 映り込み いつもとちがう 君の横顔
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バス停前満開の桜実家から家に帰るわれ見送りぬ
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あの頃を妻と重ねる桜かな 腹ばいに駄々こねる子のいて
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5分間休憩中にコーラ飲む自転車旅の唯一の甘え
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風に舞う うす紅いろの 春の使者 はかなさ愛でる 花なればこそ
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咲く花に添える薫りの香ばしい初々しさの萌ゆる葉桜
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在りし日の 君が遺せし 言の葉に 生きるよすがを 見出で安らぐ
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誘われてFMラジオ聞きながら深夜のドライブ夜明けの海へ
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ほんのりと東を照らす朝の日は飛び立つさぎの透ける羽色
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早くから武道で鍛えし同輩は幾つになるも頼もしく見え
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「なんにでもなれる」と言われたあの春の教室にまだ私だけ居る
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野辺の花 黄色一色 ほころびて   揺らぐ春の陽 陽炎立ちて
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笑いあい情けがかよう芝居小屋また来るひとも去りゆくひとも
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梅散るも 人と人とに 花が咲く  弥生吉日やよいきちじつ 天神の市
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さきもの 弱いものたち 先頭に 築かれていく 令和の時代
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心にもない雨がふる花がちる憂き身はともにながれて海に
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