白雲をまばらに隠す鳥たちは天国なんて目指していない。
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もやい解き子ら旅立てば食卓に影のひとつが縛られてゐる
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新緑の清しき風を吸い込みて五臓六腑が青に染まりし
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逆風で腹一杯の鯉のぼり。吾にはなきその強きメンタル
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大阪にすぢぞ多かる御堂筋牛筋煮込みその筋の人
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ボイジャーが宇宙の果てを目指すころ私は部屋の灯りを点ける
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暁に 勤めに向かい 横見れば 宵闇に居た 猫が見送る
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カーテンを開けて今日へと切り替える 連休初日 時計見ぬ朝
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喪っただけの衝撃ではなくて葬儀を終えて駆け走る街
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美術館の 学芸員のように 澱みなく キャベツを語る 君の熱量
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マスクから出てる部分を武装してマスクの中で本音を叫ぶ
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晩春の小雨に烟る藤の花夜の灯りで見れば異世界
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生ぬるく塩からくてもこれは雨、感情線を埋めるのは雨
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街灯にユスリカの群れ 東京にまだ居場所のない四月の僕ら
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喪失の 度に一首を 創出す 一種の素質が 自死阻止続ける
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季違いのもがり笛熄む丑三つに 蛙の鳴き音ふいに戻りぬ
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割り箸を折らずに捨てた弁当が指定ゴミ袋でする蜂起
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もう見ない屋根より高い鯉のぼり今は河原で遊んでるらし
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イメージが希望を形作るよに五月の風になる鯉のぼり
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花曇り雑草取りの果てに立ち汗ひきゆけば初夏の風かな
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銃口を 向ける仇は 幼き日 我と遊びし パン屋の息子
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生きていく沢山の花を抱えて歩いていく砂場の裸足に
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雨あがり えごの花は 輝きて 真白き光 吾が中に
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七十四歳ななじゅうし 未だ試験の悪夢見ゆ 紅蓮の炎 埋み火なりと
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「そんなに仕事仕事って言うなら仕事になっちゃえばいい」と犬が
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五月雨が洗い流した思い出は取るに足らない男の慕情
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見上げれば肉球のついた四肢を投げ 好きに振る舞う毛玉と目が合う
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花びらにほのかな霧の咲きなびく紫淡い胡蝶の蘭や
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レンギョウの明かりのともる通学路転ばぬように迷わぬように
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往来の絶えた通りをからっぽの郵便箱が否認している
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