幼き日 母を見上げる瞳だけ  今でもさがす 我に戸惑う
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手術室冷たいベッド帰れるか怖くて震えでも仕方なく
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小党首 素直に連立組んでれば 生き恥さらさずすんでたかもね
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太陽も勘づく僕の恋心夜の間に馳せた想いも
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親だから どんな理不尽 許される そうならみんな 親になっている
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夕寂びの枯れのからすは 問うもなく訊ねもなくて その錆び声に
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愛してる おはよう ごめん さようなら 恋は花束 抱いて枯らして
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コンビニでビールを3本買って行く 月に2回の懺悔の参り
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花のごと 少女のままに笑む君に 幸せになれ さとき娘よ
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ぶきっちょな形容しがたい君の愛手の平残る温かさから
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四年ぶりにアマチュア無線の虫さわぎ引越し荷物を掻きまわしをり
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遠く遠くという歌手の歌声沁みる初冬の翳り
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土と木でできてる時代もあったらし土月十一木日十八土木の日なり
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道まひは いつも目と目で通じ合う 欠ける事なき「の夜の」望月>光る君
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道長の 見上げた望月 時空越え 愛でる我らも 大和人なり
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電線に空区切らせて並べれば棒飴のごとねぶりたき青
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初時雨に霙の混じるこの朝は「蓮根の日」なりしゃっくりと咬む
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胃袋に生姜スープとカレー詰め シャーコラカモォオン 冬の将軍
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壁面に映る枯れ木の大影は 一目で蔦と見間違うほど
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「イヤイヤ」言うのは子供だけれど 「嫌」と言えるのは意外と大人
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冬背広 前ボタンかけ風防ぎ 手はポケットで暖を保ちぬ
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「あかちゃんがゐない」とさわぎわらいあい五本の指の手袋をつけ
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魂のキャッチボールに見えたので君との会話はいつも方舟
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帰りの電車は、遅延で始発から座れた、働く女性6〜8割家路をいそぐ
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俺という雪がひとひら降り落ちる 喜べ、お前の好きな冬だよ
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爪先で地球本体つまみ出すとてもほんとにちっちゃな星ね
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義父からもらったねじ巻き式の懐中時計は 寒くなると遅れる
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人生は光ばかりが評価され灼かれる痛みを分かち合えない
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雨の日も君の隣で歩けるとたちまち晴れてしまう秋の日
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不吉なる庚申塚の立つ坂を 歩く速度を落とさず登る
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