靴底を張り替えてなお履き続け靴紐緩む夜の下駄箱
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はな咲けどまだ浅き春昏れゆけば戸口に立ちてにほひぞ知りぬ
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市役所は どこですかと問う 留学生 まっすぐな瞳に エールを送る
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春の雨 まだ咲きめし桜花さくらばな 散ることも無く しとど濡れつつ
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カフェの客午後二時にして吾一人次が来るまで立ち去りがたし
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言葉にしたら 壊れそうなこの想い もどかしさ抱え今日を過ぎゆく
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二人して久しぶりだね カラオケのマイク握れば 隅っこに春
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くもり空 ねこたち今朝も おべっどさん ふたりなかよく きゅっとひっつき
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猫さんがくれというので食っているカニカマを出すこれじゃないらし
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山頂を雲で隠して山たちは幽玄ぶって佇んでいる
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あなたへの届かぬ想いしまい込む朝の光に桜ちらちら
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白湯を飲みほっと息つくマグカップ雪の降らないこの街の白
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ランデブーと古い言葉がお似合いの今夜の月と木星の距離
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誘われて 春の匂いの する方へ 花々ひらき いのちあふるる
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幼き日の 思い出詰まる生家の跡 今異なる人の歴史を刻む
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気がつけば戦争中を生きてゐて真綿で首は細くなりゆく
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変はりゆく 街並みの中 桜咲く 古戦場のみ 置き去りにして
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母眠る永代供養の納骨堂 よく来たねえと写真笑みをり /春彼岸
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寄り添いて不味き牡丹餅分かち合う 笑う夫の手の節愛し
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あの戦この国にさえ来なければ それでいいじゃんニホンのホンネ
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人生のゴール地点見えてきた ここらで少し歩を緩めよう
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長い影西日に帳がおりるころ壁塗り終えた父と銭湯
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いとまあり  読書しようと  意気込めど  わずか十分  やる気は失せて
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チェインソーまたさくらんぼ切る音と思えば柿の木の刻まれて
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出る出ないこれで9条改正はないのだろうと思う言い訳
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またひとつ名もなきフォルダ開けてみる 今は亡き人そこに居ぬかと
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川べりで 白鳥送る 人もなく 声のみで知る しばしの別れ
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恋人と呼べずに去りし人送る横浜駅のやさしい雑踏
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西の窓 沈みゆく陽をでた夕刻 今家々の屋根が遮る佳景
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取り出して 眺めて聴いた 「レクイエム」 モーツァルトの 最後の手紙
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