大国は命を喰らふケルベロス血に飢ゑギラリ牲義を掲げ
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真冬より 肌を舐めたる 春の風 襟袖口を強く締めたる
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店先にぶらさがりをるはたはたの 骨柱ごと顎でくだきぬ
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眠いのに抗うクセは拒眠症 死んだらゆっくり眠ればいいさ
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青空にキリンの如くクレーン立つ データセンター積み上がる 雲
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イチゼロの波の間に間に小舟ゆく情と涙の櫂に絆され
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山はまだ 寝起きのような 色をして 少しくしゃみを こらえている
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宇宙(そら)に咲くアカシアの黄よ夢ならば漂ふ香こそ瑞々しけれ
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腹の虫 飼えばむしばむ心の和 虫は大好き黒い怒りが
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弛めたる 身体に沁みる 歌もあり ラジオの時間 一人の時間
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朝六時 わたしのためのコンサート あなたの寝息と鳥のさえずり
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親戚の鼻筋見ればふと分かり祖父と吾には禿げの血筋も
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戦争も花粉も我の上をゆくどこまで鈍感でいられるか
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大谷のホームランの音なりよりも吾にとっては良薬となり
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真っ白な紙の中から現れし尾っぽを立てて迎え出る猫
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低く飛び白高ければ黒今朝も白鳥たちの編隊が行く
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住宅街 カレーの香り 帰り道 ひとりぼっちの部屋は夕暮れ
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午後一時 待ち合わせする バス停へ 切りたての髪 足取り軽し
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歌の橋 月まで千年つらなりて重ねる短ざく飾る浮世に
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目に留まりこころに留まる楽しさが ひとつふたつと増えていく春
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この国に 不穏な空気 満ちてきて 自由の意味を 今問い直す
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たぶんもう完全犯罪できるほど知識あるよね沢口靖子
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塾へ行く 道は毎日 向かい風 負けてたまるか 待ってろよ、春
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絹糸のような黒髪眩し友 無い物ねだりのあたしは癖毛
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十五年 母に寄り添ってくれました ありがと、タヌ猫 どうか安らかに
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香木は樹々の傷あと治癒の樹脂 風雨の歳月かほりに溶けて
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降雨のち 晴れて風吹き 暴れたる 花粉と黄砂 今年心配
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雛の前マラカス振って飛び跳ねて…忘れた孫は、大学生に
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白内障 手術終えし友 「新世界」目を輝かせ われの背を押す
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すれ違う人みなマスク 顔かくし心隠して己閉じ込め       
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