義父植へし老木なりたるイチジクの小さき実集めジャムにする朝
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耳撫でるゆりかごのうた傷付いたインナーチャイルドが今日も泣く
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魚焼き グリルの手入れが 面倒と 購入以来 一度も使えず
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網膜のフィルター越しのセピア色 世界は眩しい羨むほどに
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どんぐりが包まれ眠るベッドかなブナに寄り添ふ猿の腰掛け
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「明」の字をいかに使うか思案中 「明星焼きそば」ふと浮かびたり(詠進歌・・)
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すれ違ふ 白髪女性と 目が合へば 過ぎし日想ひ 互いひに微笑びしょう
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亀にえさ自分もごはん けむりみ 靴とベルトの色を合わせる(朝)
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すくわれて向こうに行けと流される小魚になり途方に暮れる
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五十年丸めてポイと捨てるよに金婚旅行の部屋の屑入れ
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会議場 百日紅で 彩って 説明を聞く 参加者の笑み
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轟轟と飛沫しぶきをあげる滝雨たきあめよ いかづちの先に見える龍影たつかげ
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一晩中 二人で想い 話きり 始発にのって 仕事へ戻る
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ちま猫の にゃるそっくさきの あおいそら かくにん確認したら せんたく・すたーと
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老々の足音聞ゆ秋の日の慌ただしきかな金婚の旅/改
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かっぱえびせん 梅の花びら のこってた 幸先いいぞ 来い来いハガキ
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夢にみし母は吾の手離さじと 握るちからぞ胸貫ける
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神様は 一所懸命な女子のこと あたたかい目で 見ててくださる
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義実家の御守グッズ ふくろうに 不苦労と掛け 我に持たせし
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バスの中エスカレーター信号待ち五七五を詠める充実
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好きな物持ってあの世へ行けはしない託したのちに灰は舞飛ぶ
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遊び来て 狭庭に彷徨うキジ雛の よちよち歩き姿微笑まし 
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久々に友と話せばあの頃の 記憶さやかに甦りたり
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ベッドの上 前屈ストレッチしたら ちま猫の 薄目のあいた 寝顔と目が合ひ
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本人にその気なくとも年齢は老人だから敬っとくれ
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カサカサと 囁く竹林 涼しげで 行燈の灯に 秋の空気を
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秋茄子の光る畑や熟したる無花果見つつ通院の道
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夜半よわの窓 ひらけば つゆの香を含む風 鈴虫の 部屋へ誘ひ
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朝夕にデイ送迎車行き交えり老い人多き坂道の町
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朝イチの美しき声はキミだった! ひょいと現る小さなコオロギ
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