母の背をとっくに越した小六がぎこちなく袖通す制服
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小春日の温もりは母を 木枯しの厳しさは父を想ふ初冬
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朋輩よ虚無に陥ることなかれ 妻亡くしてもはなお生きる
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指先が母になりゆく初冬の夕 ポテトグラタン肉じゃがにする
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雨上がり陽に照らされし草紅葉 空気冷やりと冬迫り来る
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都会ゆえ はきと星空みえぬけど ひときわ明るく 輝くシリウス
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かなしみをふきよせたよな冷たあめ 秋のおはりの冬のはじめの
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一人暮らし大枚叩いて犬を飼い仔猫を拾いて家族生まれし
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数日を朦朧として終えた悔い早めの風邪薬から飲まれる
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堅豆腐こんぶを敷いた湯に浮かべ 沸かぬ手前で弱火にゆらし
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杖たより丸太階段登りきれば余呉湖に映る紺青の山並み
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そこにありて 草木の陰に 冴え冴えと なみだに映る 野菊のいろ
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銀杏いちょうの森 緑から黄に変わる頃畦道に列 黄葉祭り
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小春日の連休なか日インフルで寝込む夫に林檎剥く午後
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家を出て目指す先には鬼ヶ島 犬、猿、雉に出会ってみたいね
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枝打ちて寂しく映る木々たちは根と根で繋がるネットワークで
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チビ猫は さいきん べっどのじゅうにん住人で ちょっとやそっとじゃ おきてこにゃいの
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気がつけば駆け出していたあの頃の無闇に明き三日月の夜
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入口の 小さな白い 喫茶店 バナナジュースは 初恋の味
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積雪は 十九センチ きのうまでの 浮かれ気分は 静かに埋まる
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かりんとう黄粉きなこまぶすティータイムお菓子も纏う冬の衣を
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何時もなら 心酔する短歌うた詠む歌人ひとの 投稿無き日はutakata寂し
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お風呂上がり 二粒だけのお楽しみ アイスの実ぶどう 約20kcal
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亡猫あいびょうは出会った瞬間ハナつんを僕にグレーの良さを伝へて (ロシアンブルー)
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ガシガシと腐葉土食べて脱皮する空に輝く樹液を見つめ
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寝たきりに なってもできる 趣味求め 短歌を選ぶ 三十五歳
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自動ドア電源切ればただ不便熊出る間致し方なし/介護施設
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ふかふかに干されたお布団 取り込んで 人心地つき ココアなど飲む
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チビ猫は タンスの上で おどってる ちま猫ちゃんは うろうろうろうろ
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ひこうき雲 真っ直ぐ道を差し示せ 我がゆく道を 主よ、護り給え
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