母のケア諦める事いっぱいで、でも生きていくあなた私も
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雪降るし雪積もったらうずまるし無精演繹草刈りしない
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キャベツ一玉 ひさびさ88円也 明日は鍋かな 立冬も過ぎ
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おまえだけイメージ良いの俺という悪がいるから成立してる
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晩秋の 夜空を焦がす松明の 火柱燃ゆる鎮魂祈りて 
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崩れ落ち 泣きじゃくる日も あっていい 弱さもキミの 素敵な一部
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人逝ひといって家の解かれての失せて金木犀の匂わぬ今年
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肌寒し雨天日の居間 ホットティーマグに触れ 指先温まり
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前線が空を画して明瞭に 此岸と彼岸を隔てるごとく
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いつの間に 図太くなった  自転車で 近づいてなお 動じぬカラス
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南天の あちこちに咲く帰り道 マリーゴールドの蜜を吸う蝶
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失言の恐怖症って言いながらいっぱいしゃべるあなたに安堵
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相方の胃カメラを待つ吾もまた朝昼抜きの空腹にあり
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カチっと音がするように 歳がまた一つ加算された 終わりに向けて
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てん裂けて 矢の如く鳥は 飛びゆけり 視線も合わぬ 異郷の住人
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使用後に硬貨が戻るロッカーの百円のように無意味な夫婦喧嘩バトル
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2杯目のお茶は 金木犀のお茶 あまきかほりに 酔いしれ眠る
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宰相の本音ポロリに弁解も軍靴のをまどろみに聞く
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鈍色にびいろむ マーブル模様の空 雲間にひとつ またたく星影
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切り株にしばし座って並木道 まだ新しい木の肌に触れ
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岩波新書ポケットに入れて昼食同じ値段の牛丼をくふ
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寒い日は アクアパッツァ 魚好き 君のうんちく 素敵な味付け
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恥じさへも詠んで笑って模索して部屋は片付き一歩前進
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亡き友のペンダント着け参加する同窓会で逢える気がして
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晴れ渡る 母の生まれし 日に思ふ 空襲逃れ 生き延び『ツナグ』
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晩秋や ソメイヨシノの 赤らむる葉は 早々と散る 桜の如
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採血終え レントゲン終え ちっちゃなエリザベスカラーカラー どうぞ神様 この子を護って
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雪遊び手足の凍る帰り道母待つ家のありしあのころ
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かまどから離れぬままの母せかす匂いに待てぬ腹鳴る夕餉 / 追憶 五人きょうだい
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あらたまの茜さす空澄み渡り憂き世のおりを染める東雲しののめ
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