隣席は 誕生日ケーキ 受け取りて はしゃぐシニアの声幸届く
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Pの字のまっすぐな線やさしくて涙のしずく半分持ちて
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夕月夜 なれにし袖の梅の香を標とぞせむ 夢の通ひ路
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老眼にハンダごて持ち思い出す子供の頃の鉱石ラジオ
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カフェオレと ランチパックのピーナッツ ランチパックたまごの無い朝
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沼ひたり特権に生くひとり星「がため」眠りてめざむや否や
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松田山花の盛りに花見ゆく小田急電車のゆらりを友に
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行間に 人生熱く 滲み出て 詩歌が見せる 生き抜く力
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衿を開け 雲一つない 道を行く 東の山は 少し霞みて
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北窓のデンドロビウムに逞しき花芽みつけしふたつみつよつ
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行列や現世利益の祭神に 忍耐力を競ふがごとく
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檄文を千文字つらね隠す爪 檄の噂に上司パワハラ鎮まり
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連休の中日のありてやさしけれカフェインレスにこころね休め
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湯気が立つ夕餉ゆうげの後に湯に浸かり疲れのぼりてこの身ほぐるる
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黙々と餃子を包むこの刻は悩みも包み心洗ひて
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ほうじ茶の蒸す間をはかる砂時計 曇りて見むとす細き白糸
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感動が 編集されて 清書され それもあるのか 商業五輪
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春来たり 水の冷たさ 和らいで 朝の空気も 私に優しい
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種が落つ器の音は桜色 種がいっぱいポンカンだから
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白米は少し残して昼飯用 庶民は難民ここはジパング
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初対面 孫飼うチワワの 愛らしさ おもわず頬の ゆるむジジババ
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犬置いて スキーできぬと 十五年 銀の世界に 白き想う
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こんなにもみんなで帰る道のりが愛しいことを最後に知った
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憎しみと 誤解うごめく この世にも 人の真ごころ ありと信ぜむ
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咳続き眠れぬ夜は 君みたいに背中丸めてじっと朝待とう
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飴玉を噛み砕かずに舐め切れるそれぐらいには心穏やか
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伊丹発福岡行きの定時便 洗濯物干す我を見下ろし
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老夫婦 言葉交わしつ土起こし 手に手携えゆく道想う
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「いのち」てふ心の揺れる声のして蝋燭灯す 孫三歳に
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かすれはて横断歩道の縞はなく誰も渡らず誰も渡れず
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