聴き終えたやさしい話に作り手もきっとと思う「ゆず、香る」 /深夜便ラジオ文芸館にて
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娘から投函頼まれ必ずと愚直に手で持つ言われた通りに
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春浅し 日暮ひぐるる時の 伸びゆけば 時計の針が 開花を進める
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落ち込んで 項垂れている 首に触れ ラピスラズリの 青を手渡す
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歴史上生まれた人の総計は千百七十億人といふ
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墓仕舞うおのこかいな休めるは仏法僧か 裏高尾、春
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春彼岸 息子の隣ちょこんと正座 ちさき手合わせ神妙なきみ
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目薬を子にさす朝の春がすみ見上げる顔のいがいな近さ
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理不尽りふじんな  孤独こどくかす  看護かんごの手  胸襟きょうきん開き  きずなしん
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春思い  三寒四温さんかんしおんの  よんを待つ  来れど来れども  七寒零温ななかんれいおん
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頼らない僕らは孤独でストイックひとり遊びに長けてしまって
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流れ去る モーツァルトの 協奏曲コンチェルト 意固地な我を 解き放たれり
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花びら追い はしゃぎ跳ねてた樹の下に  袴姿の君 凛と立ち /卒業の日の孫へ
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何ぞ故 我の人生 ままならず とりあえず寝て 明日の我なり
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ガタゴトと農道揺られ耕運機もろこしもいだ たくさんもいだよ
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好き嫌い「憎悪」は枯らす木の幹を「慈美じみ」は梢に小鳥を呼んで
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真ん中の姉は似ている亡き母かあさんにだから読まない僕の歌など
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雲がまたかたちを変えて流れてくなににもなれないわたしを置いて
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目覚めれば 何処から歌声 東風こちに乗り 聞こえ来るよな春の朝
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これからの十年おもひ大きめの洗濯機買ふ春分のそら
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くさや好き差別されても耐へぬいて 妻に隠れて独り味わふ
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太陽の  まぶしき光  に受けて  わがほしと  しずかに燃ゆる
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女童(めわらべ)の ように小さき 母の肩 揉み参らせて 淋しかりけり /母を恋ふる記
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恥ずかしい気持ち悪いし見たくないどうか変えてと願う春分
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連休の最終日には孫きたる 初日進めよ二日目疾けよ
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一緒に居たあの頃よりも あなたのこと考えてる自分 戻らない時間とき
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残る日を数えて暮らすかの人もその人もまた 生きてきたひと
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春秋(はるあき)の 彼岸に会いし 大叔母を 偲ぶよすがの おはぎ食みつつ
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あの頃はヒロシマだった広島の戦後八十年も戦前
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苔むした義父の墓石 労るようにそっと撫で合掌す 在りし日の夫
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