眠れずに記憶の海を漂ってこの人生もわるくはないと
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ブレネリは狼がでる怖いのと母と一緒に聞いている童謡うた
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放課後の音とにおいが好きだった心パンパンだったあの頃
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甘き色 洋菓子のごとき 薄桃の 薔薇に頬寄せ 爪を塗る夜
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世界観?ひとりちっぽけ井戸の中 出れぬ井戸なら潜って海へ
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針の月日の出まぢかき昊にあり 夜のとばりを断ち截らむとす
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心折れ 今を嘆きし 老木に  接ぎ木を成して 見届ける妻
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ねこたちは すやすやねてる 寝かしとこ おかあちゃんは 寝室で練習
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冬の陽の低く届きぬ工場の舗道舗石の目地のやはらか
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目的駅近づきぬ 睡魔に負けじと 車内アナウンスに 耳かぶ
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近江の海けふは静かに凪てゐて 日輪ははや比叡の峰に
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蜂蜜を紅茶に垂らす一年が穏やかなれと出初めの朝に
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嬉しくて少しさみしい コミックの全巻セット大人買いして
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冬至より二十日ほど経た夕陽には 日増しに復す熱量がある
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虚無僧こむそうは尺八吹いて托鉢す芸は祈りで修行の成果
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ベランダで見上げる空は空だけはいちばんだから四十五年
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針金をねぶったときの味がする 牡蠣の亜鉛で舌をしびらせ
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カーテンを開けて 光を入れましょう フルーツ二種と みかんヨーグルト
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にうにう牛乳は ねことわけあい チンしてね おくちふかれて いやんいやんよ
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本来は獲らなきゃ食えぬものだろと感謝を持って食むウインナー/たずさわる動物と人
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おい彼氏おまえは下男だ控えおろうっ お嬢様から三歩離れよ
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勉強はビリでもいいが弱い子は必ず守れ指切りげんまん
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賑やかな孫らの歓声来てみれば指さす先の部分入れ歯よ
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言わないと分からないこときっとある その納豆の期限は昨年
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ねこと朝寝 至福のときよ お互いに 先に起きられ ちょっとサミシイ
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同世代訃報の多き昨今を馬耳東風に、生きてみている
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身を捨てて我が子を救う親鹿の瞳を胸に冥府への道
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あと三年みとし耐えてみるかと冬枯れの朝の冷気にすくんで想う
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春風の運んだような筆跡で 顔も知らない君に恋した /創作短歌「手紙」
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取り替えし電球色の懐かしき 暖かきやら 心ぼそきやら
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