テニスボールはっきゅうを追いかけすごす中学の師と肩を組む卒業の空
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気が重く下向き歩けばおしゃべりな春の花々吾を励まし
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手帳用証明写真は二年ごと違う顔見る老いの変遷
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本当は気になってはいた洗面器 磨いて疲れて気が済んで
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群生の黄色の水仙斉一の首を伸ばしぬラインの踊り
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歌を詠むたび 遠い過去 蘇り 良き思ひ出も 亡きあの人も
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姉猫おねーたんのほうに おててをのばしたる いきだおれふう・ねんねの ちま猫
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春霞 山並み隠す正体は ゴビ砂漠ゴビより飛来し黄砂の所業 
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キミの声遠ざかってく日々だけど 私は今日も月を見上げる
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朝食あさは抜くぼっちランチの今日の日は たまごサンドを頬張る予定
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少しだけ 後ずさりした 春の朝 少し厚めの 上着を羽織る
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古希祝い 孫もローソク吹き消して どっちが主役? にんまり二人
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散る桜閉じる蒲公英 世のすべて終わりがあって美しくあれ
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球根は起きたいだろう尺余の雪積む庭にまた雪が降る
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本当に美しい日はおそらくは忘れてしまう程穏やかで
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昔ここ何だったっけ建物が解体された跡地の前で
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春風に乗って漂う風船よどこへ行くのかどこまでも行け
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美ら海と 優しい島人しまんちゅ 支えられ ナンクルナイサと 教えらし日
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いい夢を見てスッキリと目覚めたい なかなかそうもゆかぬのであり
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さき手を するりと抜けて 風船は 春風にさらわれ 空を舞い
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戦争も 犯罪もない世の中が やっと来たねと いつか言えたら
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土手沿いに 白い満開 雪柳ユキヤナギ 細い枝 春風にそよいで
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ようやっと 形見のクッションねどこ 洗濯す 沈む心と 晴れた青空
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「銀河」といふ 実家の母の 紫陽花よ 葉っぱが山ほどついて春かな
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先々週 通ったときの豪雪は 幻のよう消えた信濃路
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露天風呂から仰ぎ見る 空色は ゆるやかに濃く染まる夕暮れ
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寒桜 散った萼にも雨雫 染井吉野の前座を終へて
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ベートーヴェン ピアノソナタ8番の第2楽章みたいだ 春だ
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パラパラと久々に聞くこの響き雪載せぬ屋根弾く雨音
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走りだすあなたの汗が春を呼ぶ想い描いた未来が今だ
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