東には破裂しそうなオレンジの空をからかう星々の群れ 

扇風機に溜め息つけど憂鬱は笑いにならず夏至の更けたる 

心臓に一番近い肋骨に錠をかけたる我が恋なれば 

心音のひとりっきりの切なくてひとりふたりと靴をそろえる 

梅雨明けの空にかさぶた鱗雲 傷のあとにも虹のあれかし 

青空は遠く地面は近いもの逆になるとき人は死ぬのだ 

臆病を抱いてただただ目が冴える大の字の夜 月が明るい 

殺してやる、殺してやると叫ぶほど命を重視していたらしい 

奇術師はさびしい顔のうさぎたちをつぎつぎ逃して幕を下ろした 

真夜中の暗さが至極丁度良い自分の顔を見ずに済むから 

小さくて統計上は数に入らないこんなに美しいのに 

繋ぐ手に軽く力を込めてみる 想いが全部伝わるように 

ファミレスで始発待ってる時きみが語る哲学はぜんぶそよ風 

初恋の彼の一号ホームラン観てたスマホにこぼすチューハイ 

やわらかに日毎にひらく切り花の薔薇のいのちを愛でる食卓 

巨大なるクマバチまん羽音はおとして窓うなるただただ恐ろしく 

継ぐ人の無き家清く飾られて裾先すそさきくぎ掛かる如く呼ぶ 

小太鼓のみて閉じる傘越しの空に龍神雨を吸い込む 

おいしさに免じて許してあげるけど とんじるじゃなくてこれはぶたじる 

コンビニの明かりで燃えた網膜の、涙の膜で守られた箇所 

ない交ぜの心を挽いて粉にしてお湯を注いで上澄みを飲む 

人の声せぬ正月はおとなしく手酌で旨い日本酒を呑む 

暁の窓の無数の露にない暗い絆を求めて止まぬ 

陽の名残なごり集めて重き鈴なりの蜜柑は照らす冬の庭先 

誰一人救うことすら出来ないで マクドナルドのストローを噛む 

こっそりと隙間に開く蒲公英よお前いったいどこから来たの 

菜の花と モンシロチョウの 関係は 君に恋した 僕の献身 

みしみしと成長痛の音がする若き桜の伸びていく様 

さんかくの 底の方で組む さんかくの 真ん中ぐらいの穴からの世界 

風のないスカスカな眼の存在に読んだ本から阿修羅の宇宙