松本直哉    フォロー 10 フォロワー 10 投稿数 381

われてもすゑにあふこともなきへだたりの波間をこゆる一羽のかもめ  

足のつかなくなるところまでおよいだらみえるでせうか白い夏の帆 

はかなくもなきいでにけりひとすぢのせみの声する梅雨のあとさき 

あぢさゐの花にこころをたとへまし憂しと見し世のうすむらさきの 

顔のしたなべてどくろとおもふときほのかに白きどくだみの花 

第四コーナーからだかしげて曲がる子のひかがみ白く夏さりにけり 

ほととぎすなくやさつきのしののめの降るとしもなくふる雨の音 

泣くことをひさしくわすれゐたりけり夏のあざみのあをく咲くあさ 

はつなつの木蔭にすずむかりそめのこの世はなべて異郷と思ひき 

うながされ子らはかへりぬ揺れとまるふらここひとつのこる夕ぐれ 

手のひらのうへにのせたるしろたへの豆腐すずしき夏は来たりぬ 

夢の世にすめばなつかし夏木立こずゑの鳥のさへづりの声 

巣ごもりの子らにあけくれいひかしぐさみしきわざをわれはするかな 

願はくは花のなかにて酔ひ死なむみつばちほどのひとにうまれて 

穢土なれどうつくしきかな風わたるあをばわかばのけやきの並木 

あたらしき制服の子に風かをるひと月おくれ入学のあさ 

あぢさゐの花さきそめて梅雨ちかくわが身世にふる雨だれの音 

わくらばに人に生まれてさまよへど立ちさりかねつ穢土に咲く薔薇 

つねよりもすみわたりたる空の青ひとのいとなみ絶えしこのごろ 

咲きにほふ薔薇のかをりをかぐあさの空見上ぐればありあけの月 

さみどりの豆ひつそりとさやのなかひしめきあうてみのるはつなつ 

生きかはり死にかはりして露の世に咲きいでにけり白妙の薔薇 

新じやがと新たまねぎのとろとろのヴィシソワーズの夏は来にけり 

縄とびのポニーテールのはてしなくゆれつつ春の過ぎゆかんとす 

ああ五月さつき初聖体のこどもらのころもの白く薔薇咲きいづる 

どのようなさみしい音がするだらうもしすずらんにすずがあつたら 

籠り居の身こそなぐさむここちすれさつきの朝のくれなゐの薔薇 

さへづりの鳥の高さに思はるる距離といふ名の甘きあこがれ 

花々を行きつもどりつみつばちの羽音ものうく春闌けにけり 

いちはつの花咲きいでてたらちねの母の忌日のしづかなる午後