松本直哉    フォロー 7 フォロワー 6 投稿数 257

子の寝顔見つつおもへり子をすてて世をのがれにし釈迦牟尼のこと 

かへりざくゆふべの園の花いばら去りゆく夏のほほゑみに肖て 

ひと夏をこえて琥珀に熟したる辣韮そへてゆたけき夕餉 

玉くしげふたたび逢はぬひとゆゑに長き夜すがらいねがてにして 

ものおもふ身を深草のつゆしげみさびしききはみ手折りてぞ来し 

サンジャック通りこゆればふかき闇みるべきほどのものはみたりき 

さめやらぬ夢のほとりにおく露のかわくまもなくものおもふころ 

ほのぐらきパリのメトロの通ひ路に玲瓏と鳴るヴィオロンの音   

みすずかるしなののくにの死ぬまへにたづねてみばや野尻のうみを 

うれひつつ庭ながむればうたかたの夏のはてなる一輪の薔薇 

プールサイドみえないままの背泳ぎのただあをいそらだけをたよりに 

思ひ寝のゆめにもなみのおときこゆさがみのうみを恋ふるよなよな 

手をつなぎなみうちぎはにおりるよるうちあげられたいるかさがしに 

あらざらむこの世のほかの花野にも咲きやしぬらむ曼珠沙華のはな 

言ひさしてふと口つぐむまなざしのひとみのおくのまさをなる海 

まきもせずつむぎもせずに遊ばましガリラヤの野の百合ならませば 

をりとりて髪にかざせる花ばなのいのちみじかき恋もするかな 

したもえに恋ひやわたらむすがわらや伏見のさとの伏し目のひとに 

あす知らぬいのちといへどさもあらばあれあきのなすびの塩麹漬け 

ながあめにぬれそぼつらむぬばたまの夜をこめてなくみみづくのこゑ 

あまのはら星星のみなもだすときさやけくひびくイズラフェルの琴 

見たくなきもの見ずにすむあたら夜や無月の雨のふりみふらずみ 

しめやかにあきさめのふる音すなりむかしのひとの夢よりさめて 

秋の田の穂のいろいまだあをけれどいとど待たるるこがねのみのり 

見しゆめのうつつならなむぬばたまのやみにきえいるヴィオロンのおと 

夢の世のうつせみのこゑとだえしてこずゑをわたるあきのまつかぜ 

夕されば草葉のかげに鳴く虫の心づくしの秋は来にけり 

はかなしな葦の入り江はゆめなれやあべのはるかす灰色のまち 

ちぎりてしそのことのはもうつろへばわくらばにおく秋の朝露 

絶えにけりひとよの夢をかぎりとて交野がはらにあきかぜのたつ