松本直哉    フォロー 10 フォロワー 12 投稿数 418

マッチ擦るつかのまみゆるまなざしの純粋にしてまさをなるうみ 

反帝の立て看板を担架とせむ無援のひとを送る葬列 

えらぶなら姓はガルシア名はペドロ鳥など飼うて世を過ぐしてむ 

頬紅をさせば息あるごとく見ゆひそやかに鳴れラヴェルのパヴァーヌ 

くるくるとダーマトグラフむくやうに帯をほどけばしろき膚みゆ 

さらさらと帯解くひとのおもかげのよみがへりくるひとり寝の夜 

くちづけと愛撫のあはひやすらへば谷町筋は群青の闇 

圧しころす嗚咽かすかに隣室の五月の花と言へクレマチス 

炒るほどに香りたちたり海の色まなこにのこるかたくちいわし 

禍ときづかぬままにあそびけり世界がうみにおほはるるまで 

とどこほる雨雲の帯ながながとわがこころにもなみだふりつつ  

あぜ道のみぎもひだりも蛙のこゑ田植ゑ終はれば梅雨ちかづきぬ 

旋盤工募集のポスター色あせて雨のにほひの京浜蒲田 

あすはただわかれゆく身ぞ笹まくらかりねのやどの明かりを消しぬ 

たれもかれも討ち死にしたりはつなつの六時間目の古典文法 

かぜふけばななめになびくけむりみゆはかなきものはいのちなりけり 

手をつなぎかちにてわたる思ひ河しのぶ逢瀬のみづのつめたき 

バー越ゆるせつなのせなかしなやかに反りつつとぶや陸上の夏 

ひとり活きひとり死ぬこそいのちなれほのかに苦き独活うどのきんぴら 

空のはて恒星ひとつほろぶときかすかにゆるるつるばらの茎  

脚と脚手と手からませねむりけりほととぎすなくよるはやさしく 

きみの手にみちびかれ入る深き森くらくしめりてほのあたたかく 

をさなごに小さな靴を履かす朝きみにとつてはすべてが未踏 

第四コーナーすぎればみえるしろいおび両手ひろげてまちうけるひと 

木の間よりもりくる月のかげ白くいまさかりなり茉莉花のはな 

なにもかも絵空ごとぞとおもふとき天にははなび地にはくちなし 

海のいろあをかりしかばびんづめの手紙ながしぬあてさきもなく 

オーボエダモーレふいにかなしき夕なぎの松帆の浦にうしほ満ちくる 

求愛の姿態そのまま凍らせて永久とはにもだせりギリシヤの壺は 

ひそやかにリュート鳴りいづものなべて薄明となるいのちのはてに