松本直哉    フォロー 9 フォロワー 9 投稿数 325

さざんかの小径をゆけば冬うららちるちるみちる啼きかはす鳥 

亡きひとのゆめばかりみるこの幾日うめのつぼみのほのかにあかき 

「だつこして」むづかる吾子をたかだかとかかげてみれば冬空の青 

たまきはるいのちなりけり弓なりにからだたわめて雲梯の子よ 

見し夢はうつつならなむしんしんと肺碧きまでヘレスポントス 

うつすらと霜のおりたる冬園にほのかにあかきシクラメンの花 

いまだ土をふむこと知らぬみどりごの足に触るればこころやはらぐ 

イブの日のデートは野宿ひさかたの星星の降るベツレヘムの丘 

有り明けの空にかかれる月かげの消えかへりつつもの思ふころ 

さくさくと小口にきざむ青ねぎのかをりすがしく冬さりにけり 

朝寝髪くしけづりつつ子の話す夢のつづきはわたあめのやうに 

すみれほど小さき人に生まれなばすみれの色の靴を履かまし 

夢はいつもかへつて行つた白壁に干し柿熟れる遠いふるさと 

なにものももたずに生まれなにものももたず死ぬこそいのちなりけれ 

火事あとをみるためにするまはりみち月かげしろく廃墟を照らす 

住むひともなくて荒れたる庭なれどいま盛りなりさざんかの花 

知られじな夜もすがら吹く木枯らしに散るもみぢ葉のつもる思ひを 

ふたご座のひととあひみるみづうみのほとりにたてば夕波千鳥 

白珠の散るかとぞ見る小夜しぐれぬれて帰りし妹が黒髪 

ひとつづつ蝋燭ともす長き夜の思ひまされど逢ふすべのなき 

めづらしきシャボンの泡のにほひする霜月尽の夜の仕舞湯 

霜さゆるあしたの空の結ぼれを解きつつなくや朝鳥の声 

みづからのとげにきずつく柚子なれどなほあまりあるかをりなりけり 

散り紅葉ひとひらひろふ暮れがたのからくれなゐに染まるわが恋 

虫の音もたえて久しくなりにけりものみな枯るる真夜のしづもり  

うつし世のほとりにいこふ水鳥の羽交ひにあはき冬の日の照る 

ぬぎすてて裸にちかくなる樹樹の凛として佇つ霜月の空 

散りぬれど色こそまされ朝露にさくらもみぢはしとどぬれつつ 

たまきはる命はかなく「死と乙女」聴く小夜ふけてあはき菊の香 

しぐれ降る生駒の山の峰かくれ見ねど恋しき君がまなざし