松本直哉
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いつの日か再会するのを楽しみに生き延びてゆく浮世の海を
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期待してけさもLINEをあけてみる 既読のつかぬままに幾年
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あざやかな線を描いて飛翔する旋律みたいな生涯だったね
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あの海のどこを歩いているのだろう ラジオの告げる波浪警報
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形見とて木綿のシャツに袖を通す ああなつかしいあの子の匂い
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難破船うちあげられた砂浜の無数の骨のうえにたたずむ
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口ぐせは「ノー柚子胡椒ノーライフ」 炊きたてごはんをお椀にもって
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補助輪をはずし漕ぎ出す子のようにひとりで生きる練習せねば
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おそろいのピアスを買った誕生日変な顔してプリクラ撮った
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「性狷介 みずから恃むこと厚き」虎みたいだといわれていたね
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「この国が平和だなんて思えない」記憶に残るいつかの会話
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木霊かな 空耳かしら 呼びかけて答えを聴いたような気がする
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悔やんでも詮ないことと知りながらいっしょに行ってあげたかったな
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肥沃なる三日月地帯で遊びましょ この世の憂さをすべて忘れて
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足の爪それぞれ違う色塗って展覧会にあらわれた人
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荘周の胡蝶みたいに軽やかに夢のむこうに会いにいけたら
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「茎わかめこりこりしてていいお味」 作ったサラダほめてくれたね
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もうすぐ夏至と言われて気づく 一日がすぎてその分遠ざかる距離
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静と動まったく違う性格もダヴィッド同盟つくれば無敵
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刀折れ矢もつきはてているときもいっしょにいれば力がわいた
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やわらかに柳青める川沿いも避難勧告区域となりぬ
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取り返しのつかぬところにいるのかな あしたの米を研ぎつつ思う
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どうやってバトン渡せばいいのだろう 海山川もかくも汚れて
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山裾の古い農家を訪ねれば「避難しないでここに残る」と
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ろうそくの光のもとで読んでいる新潮文庫『沈黙の春』
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気休めのように聞こえる 専門家でてきて告げる安全宣言
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堅牢といわれたものも流されて屋根吹き飛んでけむりがあがる
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盛り場もネオンがきえて見上げればかがやきわたる満天の星
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こんなにもあたたかいのか 停電にろうそくひとつひかりがともる
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俄雨雪に変わってしんしんと足から冷える避難所の夜
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