松本直哉    フォロー 9 フォロワー 9 投稿数 350

あかねさすむらさきいろの花の咲く庭に出づれば日暮れのおそき 

みづからの重みにかしぐアネモネや姉も妹も卒業の春 

だよねといへばせやなと答ふるきみありてかすみたなびくをちの山なみ 

ひと絶えてしづまりかへるまひるまのひかりのなかのひなぎくの花 

懇親会いまはまからむ子なくらむ乳ぜり泣く子をえやはわすれむ 

あをき花いちりん庭に咲きいでて今日まなびやを巣立つをとめご 

ゆきやなぎ咲きそめにけりわが妹が衣はるさめ降りみ降らずみ 

しづかなるしろき炎のたつみればもくれんのはな咲きいでにけり 

かたかりし冬の結ぼれほどきつつ鳴くややよひのうぐひすの声 

卒業のあくるひ髪を染めにゆくきみのひとみのかがやける春 

やはらかくゆるやかに吹くはるかぜにほころびにけり辛夷のつぼみ 

卒業歌うらごゑにして春あさくきづなや愛を信じさうになる 

くちびるに捺印をして契るとき恋は荒れ野と思はざらめや 

水かへて水がすむまであらひませう汚れちまつたかなしみのため 

ひさかたのはるのひかりのふるさとにほころびにけり花のつぼみは 

こぞのなつ金魚を埋めし土の上に一輪のはな咲きいづる春 

いまだ風つめたく吹けど道のべの沈丁の香にしばしたたずむ 

やせたいといふをとめごに白菜のサラダつくれば風は春いろ 

なぜなやむものに光をあたへしかヨブ記読みつぐ夜半のしづもり 

ぬばたまの夜道をゆけば梅のはな重くぬらして春雨のふる 

郵便夫てわたす朝のきさらぎの合格通知のあかるき厚み 

地におちて見るまに消ゆるあはゆきのはかなき恋もわれはするかも 

梅のはな散るかとみれば冴えかへる空よりふれるこな雪の白 

ほのかなる香にさそはれてみちすがら足とどめけり梅が枝のもと 

春ちかくなりにけらしなぬばたまの闇夜にかをるあはき梅が香 

さざんかの小径をゆけば冬うららちるちるみちる啼きかはす鳥 

亡きひとのゆめばかりみるこの幾日うめのつぼみのほのかにあかき 

「だつこして」むづかる吾子をたかだかとかかげてみれば冬空の青 

たまきはるいのちなりけり弓なりにからだたわめて雲梯の子よ 

見し夢はうつつならなむしんしんと肺碧きまでヘレスポントス