松本直哉
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瑞垣のひさしき世より恋ひそめき妹とへめぐる芍薬の園
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霧ふかきあさの根本中堂にふとくひびかふ勤行の声
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元号もやまとことばになさつたら?それほどからがお嫌ひならば
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肉体ははかなき器橄欖山登りしのちの睡魔はげしき
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ペンギンも飼育係りもなかりけり避難命令解除いくとせ
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薤上の露も干にけりなつかしき友の訃とどくはるのゆふぐれ
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のんびりと毛づくろひするまどぎはの金色の毛の猫になりたし
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震度六ゆれてこなごな姿見のひかり危き水無月のあさ
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‪簡単な和音ひとつにゆきなやむ告別ソナタさらふあけくれ‬
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ひさかたの月のひかりのふる野べにベルガマスクの即興の劇
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君恋ふと身も焦がれつつ燃えつきぬ闇夜に消ゆる蛍火のごと
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我もまた島とならんや善悪の彼岸に寄する波のまにまに
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ぬばたまの夜のふけゆけば合歓の葉のまなこをとぢてねむる吾妹子
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四輪馬車しりんばしゃしづかにきしれはしばみの瞳あかるき花よめのせて
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金色の稲穂のうへをふく風の秋たけなはとなりにけるかな
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あめつちは香炉のごとし秋されば金木犀の風ふきわたる
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こしあんふたりつぶあんふたりのうからゐておはぎをつくる秋彼岸かな
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なつかしき木かげつくりしけやきの木重機の牙にひきさかれつつ
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はらはらと帯解くごとく梨の皮剥かれて白きはだへの見ゆる
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青空のかけらあつめてきしごとく青き花咲く花野の夕べ
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うつせみの人目をしげみ地下鉄のふた駅さきにまちあはす夜
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炎帝も颱風も去り秋高し白薔薇ひとつ咲きのこる庭
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雨音のとだえし夜半の闇の奥虫の音きけば秋ふかまりぬ
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惨憺と臓腑あらはに折れにけり野分すぎにしのちの松の木
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単線の終点に立つ秋の暮れ来世は鹿に生まれかはらむ
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オリーブのあぶらのやうなかなしみに茄子をひたせばにほひ立つ紺
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月かげの白く照らせる頬杖の雲のはたての人を恋ひつつ
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しんしんと屋根ふむおとにめざめけりあさいちばんの瓦屋さんの
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オムライス素麺そばのヘビロテの夏もをはりぬ主夫のあけくれ
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法師蟬きれぎれになくひるさがり墜死の友にあふゆめをみし
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