松本直哉    フォロー 6 フォロワー 5 投稿数 228

鳥のかげよぎるつかのま見しひとのおもかげゆゑにながくなげきつ 

いかにして韃靼海峡渡りけむもろくはかなくしろきその翅 

あさなゆふなをやみなく降るさみだれのみだれてものを思ふころかな 

なぎ倒してもふりかへらずにかけぬける陸上の子髪なびきつつ 

ひとことも口をきかずにすぎし日のをはりにかをるくちなしの花 

カフェのひるバゲットちぎるひだまりにもの欲し顔のすずめの一羽 

ちかみちはこつちといつてさきばしる立ちこぎの子のひかる銀輪 

たましひはうつせみならむうつろなるうろのたがひにひびきあひつつ 

わがこころ降りみふらずみさみだれのうすくれなゐのあぢさゐの花 

麦熟るる野にかげろふのたつまひるおほに相みしひとぞ恋しき 

早苗田のあぜみちゆけば山やまのすがたうつしてあかるきかがみ  

泣きぬれしねざめの床にほのかなる雨のにほひのゆめのあとさき 

ひとさじのナツメグをふるグラタンの香のなつかしき夏めぐりきぬ 

トレロカモミロをとこのなかのをとこなりたたかひよりも昼寝のすきな 

かれはてしなみだのもとをたづぬればかなたに消ゆるなつの逃げみづ 

われもまたひとりのトマスきずぐちにゆびさし入れてなほもうたがふ 

きつねには穴あり鳥にねぐらありガリラヤの丘葡萄熟れつつ 

‪うつすらとひたひにあせのにじむ子の髪かきやれば夏野のにほひ‬ 

たましひのわびしげなればたましひをかいてんもくばにのせて見てゐし 

レクイエム果ててもどりしうつせみのかぜはみどりに雨をはらみぬ 

おのおのがしろく小さき十字架を負ひつつ咲けりどくだみの花 

ここではないどこかへとんでゆくためのしろいつばさがあればいいのに 

ひたすらに花におぼれてみつを吸ふ蝶となりゐし思ひ寝のゆめ 

にくしみがにくしみを生む世をさけて肉じやがをにるなつのゆふぐれ 

手にはなほぬくもりのこる別れぎは袖をふりつつとほざかりゆく 

ソロモンの栄華にまさる野のゆりのよそほひをせよ我がたましひよ 

カーテンをしめてだきあふまひるまのあやめもわかぬわたつみの底 

北溟の鯤てふ大魚わが家に飼はんとしたるゆめみてめざむ 

こんなにもみどりまぶしい五月の日ネクタイえらぶ弔問のため 

ほほのなみだぬぐつてかるくキスをしてしやくりあげる子ねむらせる夜