松本直哉    フォロー 9 フォロワー 9 投稿数 335

むらさめのすぎにしのちの雲間よりさえざえひかる秋の夜の月 

みたされて添ひふす閨のくらがりをほのかにてらす秋の夜の月 

言ひよどむくちびるあかき去りぎはのあきのゆふべのあざみ野のえき 

ゆるやかにマズルカは鳴り甘やかにリラの花咲くいざ唇を君 

ははそはの母のふふますちちふさのあまきにほひのはるかにとほく 

すききらひすききらひすき乙女子のかざしの花をちらすあきかぜ 

飛ぶ鳥のあすかいまかとまつのみのいつみきとてか恋しかるらむ 

ひとつやねのもとにおきふしまとゐするえにしのふしぎ思はざらめや 

香をとめてあくがれいづるこころかな金木犀のほのかにあまき 

手のひらと手のひらあはすそれだけで思ひ伝はる魔法もがもな 

たましひは秋の扇となりにけりうちすてられてあふぐかたなく 

さしまねくすすきの花にさそはれてこの世のほかのいづこなりとも 

まそかがみ照る日のあさのをとめごのうれひつつ編むみつあみの髪 

いなづまのつかのまに見しおもかげをえこそわすれねひとり寝のよる 

琴はしづかになりいだすらむしんしんとものみなねむる秋のまひるま 

ぬばたまのくろく靡けるその髪を織らばや千千のよるのとばりに  

玉の緒のいのちみじかく桜葉の舞ひちる秋となりにけるかな 

しらたまの耳やはらかきをとめごのピアスのあなをうがつもくろみ 

子の寝顔見つつおもへり子をすてて世をのがれにし釈迦牟尼のこと 

かへりざくゆふべの園の花いばら去りゆく夏のほほゑみに肖て 

ひと夏をこえて琥珀に熟したる辣韮そへてゆたけき夕餉 

玉くしげふたたび逢はぬひとゆゑに長き夜すがらいねがてにして 

ものおもふ身を深草のつゆしげみさびしききはみ手折りてぞ来し 

サンジャック通りこゆればふかき闇みるべきほどのものはみたりき 

さめやらぬ夢のほとりにおく露のかわくまもなくものおもふころ 

ほのぐらきパリのメトロの通ひ路に玲瓏と鳴るヴィオロンの音   

みすずかるしなののくにの死ぬまへにたづねてみばや野尻のうみを 

うれひつつ庭ながむればうたかたの夏のはてなる一輪の薔薇 

プールサイドみえないままの背泳ぎのただあをいそらだけをたよりに 

思ひ寝のゆめにもなみのおときこゆさがみのうみを恋ふるよなよな