Utakata
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松本直哉
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収穫のまえの田んぼも水びたし なんとはかない人のいとなみ
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マスク外せば腐臭に眩む 食欲もなくて飲みほす一杯の水
7
輸送の便とだえ幾日 からっぽの棚の奥には飴玉一つ
7
白票を入れて薄氷踏み帰る きれいごとしかいわないやつら
6
きょうはもうさすがに限界 見返れば一日掘って数十メートル
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「どちらから」「大阪からです」軍手はめマスクをつけて線量はかる
6
海岸に近づくにつれ増してくる とりのこされたものたちの声
8
築百年お別れですと張り紙は解体予定の家の柱に
13
リレーしてはこびだしてる ここに生きもうここに居ぬひとのおもかげ
6
ごっそりとえぐりとられた室内のがれきのなかの婚礼写真
8
来ぬひとを待つもひとつの煩悩か 鐘を撞いてもぬぐいきれずに
3
「努力など奴隷や駑馬のすることよ」すずしい顔で昼寝してたね
5
頂でいっしょに見てた青い海あの海のどこにいまいるのかな
4
突風にあおられるように会いたくなる 職責こなすこの昼さがり
4
レクイエム最後の和音消え入れば拍手もなくてつづく黙禱
5
なにもない単色の浜に立ちつくす 大波引いてみな消えうせて
5
手つないで雷の夜眠ったね あのぬくもりにまた遇いたいな
5
形見分けと渡されている衣装箱 帰ってきたら何を着せるの
7
神さまの気まぐれですか 地を揺すり海波立たせもてあそぶなど
5
どのような
科
(
とが
)
があったというのだろう 一瞬にして押し流されて
7
寸毫の疑いもなし いつの日かまた会える日がかならず来ると
4
すぐそばに立つ気配して目をあける 短い午睡のなかのまぼろし
6
スイッチを押せばあの日のままの部屋 いつもつけてた香水の匂い
3
成人式出たくないから初詣ふたりで行った オブラディオブラダ
4
五千分の一縮尺の地図もって最後に踏んだ砂浜に立つ
4
いかほどの恐怖だったか 黒い波押し寄せてきてすべてのみこむ
5
野崎孝訳が好きだと言ってたね 青い表紙のライ麦畑
5
頑固だねってよく言われます 生きてると信じつづけて哀悼もせず
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巨大なる波にさらわれいまいずこ ひしゃげた列車日にさらされて
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適当に相づち打って通話切る それが最後とわかっていれば
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