松本直哉
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みみづくも濡れそぼつらむひさかたの雨音しげく聞こゆる寝覚め
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引き潮やあらはれいづる磯浜に春日を浴びて蟹とたはむる
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マッチ擦るつかのまみゆるまなざしの純粋にしてまさをなるうみ
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反帝の立て看板を担架とせむ無援のひとを送る葬列
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えらぶなら姓はガルシア名はペドロ鳥など飼うて世を過ぐしてむ
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頬紅をさせば息あるごとく見ゆひそやかに鳴れラヴェルのパヴァーヌ
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くるくるとダーマトグラフむくやうに帯をほどけばしろき膚みゆ
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さらさらと帯解くひとのおもかげのよみがへりくるひとり寝の夜
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くちづけと愛撫のあはひやすらへば谷町筋は群青の闇
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圧しころす嗚咽かすかに隣室の五月の花と言へクレマチス
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炒るほどに香りたちたり海の色まなこにのこるかたくちいわし
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禍ときづかぬままにあそびけり世界がうみにおほはるるまで
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とどこほる雨雲の帯ながながとわがこころにもなみだふりつつ
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あぜ道のみぎもひだりも蛙のこゑ田植ゑ終はれば梅雨ちかづきぬ
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旋盤工募集のポスター色あせて雨のにほひの京浜蒲田
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あすはただわかれゆく身ぞ笹まくらかりねのやどの明かりを消しぬ
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たれもかれも討ち死にしたりはつなつの六時間目の古典文法
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かぜふけばななめになびくけむりみゆはかなきものはいのちなりけり
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手をつなぎかちにてわたる思ひ河しのぶ逢瀬のみづのつめたき
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バー越ゆるせつなのせなかしなやかに反りつつとぶや陸上の夏
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ひとり活きひとり死ぬこそいのちなれほのかに苦き独活うどのきんぴら
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空のはて恒星ひとつほろぶときかすかにゆるるつるばらの茎
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脚と脚手と手からませねむりけりほととぎすなくよるはやさしく
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きみの手にみちびかれ入る深き森くらくしめりてほのあたたかく
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をさなごに小さな靴を履かす朝きみにとつてはすべてが未踏
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第四コーナーすぎればみえるしろいおび両手ひろげてまちうけるひと
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木の間よりもりくる月のかげ白くいまさかりなり茉莉花のはな
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なにもかも絵空ごとぞとおもふとき天にははなび地にはくちなし
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海のいろあをかりしかばびんづめの手紙ながしぬあてさきもなく
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オーボエダモーレふいにかなしき夕なぎの松帆の浦にうしほ満ちくる
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