鵠(くぐい)
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生活感のない短歌。戯言の収納場所です。

あの島でたしかに生きていた二匹の野良猫の黄色い虹彩
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命さえあればいいという傲慢でお前を救う夢をみたんだ
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薄っすらと嫌われたまま出ていく日にもらったガーベラのオレンジ
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夜蜘蛛がどこかからきた予備校で「逃がしてきます」と言ったあの子
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平成に公開されたきみの髪は夜になびくハニーブロンド
4
地下街に忘れたままの雨傘を迎えにいけずソーダをのむ
8
かなしくていとおしい日々でしたよ。悪役の君。白銀の君。
6
靴裏でマッチをすって煙草吸うみたいな癖をもっと眺める
5
面白いバディと称されふたりとも不愉快そうに珈琲を飲む
8
疑問など感じさせないほどまでにあなたのことで歪ませてほしい
6
僕たちは集中豪雨に傘がなくせめて叫んで駆けていく道
8
心臓が欠けたままでも生きていてほしいと願う夢をみました。
6
踏切でヒトリシズカと名をつけたなにかがずっと風呂場にいます
4
「好きです」と戯言ひとつ直筆で書いてお前に渡したかった
8
「髪切って。あなたは俺を殺さない」あずけられた襟足とハサミ
5
まだ虹が生きものだった時代なら私も人を捨てて飛んでた
9
よんさいですてたにほんごでつづったおかあさんって……窓を擦った
5
永遠にレモンが好きな子であれと思っているよ 墓にそなえる
7
青の島にひとりでいる魂を黄色の花と迎えにいった
3
おおやけにしてはいけない仕事でも 「ただいま」と言う 「おかえり」と言う
10
要約ができないほどに不可解な手紙を遺し鳥になる人
8
祝福の星の光が届かない地下で踊ろう ふたりだけだね
7
明け方の星を眺めた初仕事きみの煙草に分けた灯し火
9
後戻りできない地点を越えた朝バジリカータの赤を注ごう
3
それぞれのカップの欠けがわかるほど近くだったあいつらの訃報
6
猫はみな悪の手先とわらってたアイツの来世はきっと黒猫
9
いまならば貴方の瞼に触れられる線路脇の偶数の花
4
よそ行きの香りを胸に吹きかける今日も出れない子ども部屋より
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