マフラーが去年と違う君はもう僕のことなど忘れたでしょう
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改札の外は 突然の秋雨 お守りとなる 折畳み傘
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昨晩は咳で目覚めることもなく どうやら抜けたか風邪のトンネル
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積雪は 十九センチ きのうまでの 浮かれ気分は 静かに埋まる
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マフラーにウールの帽子と手袋で 暖のがすまじ霜月の朝
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現在地 フロアガイドで 見るたびに 行きたい店が いちばん遠い
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歌をよむよめばよむだけ膨らむでいびつな螺旋の器になりぬ
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風に舞うミズキの紅葉もみじ見つめおり 白き山茶花揺れる夕暮れ
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「ダイジョウブ コレハハツユキ スグトケル」窓の外見て唱える念仏
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東雲の 明け三日月を見上げれば 暁の雲ゆるり流れり 
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もう馬の名前は全部ひらがなです ひらがなにしたら怒れないから
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ちゅーる食べしているときは いきいきと 不安と希望の狭間で揺れる
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砂時計さらさら流れる心地して まだいかないで 連れてかないで
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めざむれば予報どほりの初雪にさかりの黄菊もみな綿ぼうし
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星を見て歩く砂漠の地平線 ふちピリリ容赦なき風
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好き嫌い そんなとこまで 損得で 決めているなら それは損だよ
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食べても食べてもこころが満たされることがなくてまた菓子をつまむ
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光射す海の彼方の船影は蒼き月夜の夢の箱舟
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幸せに なってはダメと 思うよう そんな呪いを 誰がかけたの?
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悲しみも苦しみも涙とともに消え失せてしまえ 消え失せてしまえ
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所詮旅行。なのに嫁入り前夜のよう娘の髪をいて整え
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初雪を覚えて幾年いくとせ生きただろう娘と雪が円舞曲ロンド舞う夜
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結婚し、妊娠流産、離婚して、再婚、出産、 出産、離婚
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遥か先 冬の出口に 春が咲き  今年の吹雪 如何に融かせむ
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彼と行く旅行の小遣い渡すため夕飯と風呂も用意してます
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去る春の 名残り香追ひて 夏秋に  問ひて吹雪の 永き隧道
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外来を少し外れて人誰もいない通路の行き止まり窓/病院
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「分からないきみの気持ちが分からない」芭蕉風味で別れたカレシ
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方言は口を擦り抜け口癖に名を変えきみの口に滑り込む
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喪失はひとつずつ違う形で私の心に穴を開ける
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