香月董花
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ひとすじの線路に沿って風走るうわべのそらにとんぼとどまる
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かねたたき叩くやみ間にたずねきくいらえを持てばともどもに
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雨音にまぎれて待つ間きれぎれに聴こえて遠く声を待つ虫
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かねたたき夜雨に叩く たちまちに雨音立てばしばしまた止む
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つゆほども先行き知れぬ気のままに精霊雨しょうりょうあめは日を延べてふる
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影深む街は夕さり暮れゆけば灯火に遠く形を留めむ
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八棟の光り輝く夏雲の十一階の影深む街
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百年も続く日照りはこの星も滅ぼすことにひとりでになる
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風に乗る微かの雨はふくまでを睫毛の端に宿る間もなく
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触れるとも触れぬともなく 唇にくすぐるほどにとどめゆく指
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赤く濁る夏雲なびき狂い来れば真昼の街をまぼろしに見る
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窓を打つ風ははたはた軒に垂る雫ほとほと いつしか止みぬ
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アスファルト朝まで濡れて雨上がりひるほどまでの涼風通る
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道ゆきて影さすものを見あげれば光に返るエナメルの翅
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金網に留まるまでにはからすにも思うことあり おもむろに飛ぶ
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風立てば風に逆らい風はらむ翼つばめの様々に飛ぶ
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燃えまさる影のない道 網膜の動画の傷に川とんぼ飛ぶ
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雲を呼び風が走れば雨となり跡立つ波の今は行くという
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立ち騒ぎうつるいとまの水かがみ ゆうべの雲はひとときに行く
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ほの白く昔のわれは空蝉の葉裏に宿り羽となるまで
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黒つやのてんとう虫は六月のむくろとなりて地に落ちてあり
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ためらいはこの手にふれてまたたくも来てはまた去る蛍いとおし
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夏をまつの根の闇に蝉の子は最後の夢を今日とむさぼる
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日のうちは光のなかを浮き島の影から影と移りたたずむ
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橋上の灯火の列はかがやいて眩く遠く暗闇を行く
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川音とかじかはたえず流るるも鳴くとも何を思わなくとも
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ゆく闇に影は見えねどゆき逢えばそれと知らるる幽霊蛍
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もとの根も傾くばかり椋鳥の葉末もさわに騒ぎつつあり
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雨の間を夜ゆく街のひややかに手びさし透かし光まばゆき
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一日いちじつの雨は一夜に流れ去り 群れ雲ゆきて 夜に雨ふる
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