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店仕舞い古本屋兼喫茶店在りし日の我が声が聞こえる
4
物寂びた紙の香りを思い出す図書館通う懐かしい日々
7
雨どきの しじまにいたり 君に問う 散りゆく恋路 恋情いずこ
5
晩秋の色葉散る庭大輪のキダチダリアの薄紅揺るる
26
起きるため眠る獣の四畳半 金魚はいつも横を向いてる
8
空白に勝手に咲いた水仙が勝手にしおれて勝手にさびしい
10
もう過ぎた十一月に降る雪は私のようにきえてゆくもの
7
気が楽と言うけど私の心臓はそれどころじゃないの貧乏ゆすり
6
あぁ、君のいつも上がった口角は僕を倒せるやわらかい武器
25
朝四時の空気の匂いは 独りきり コンビニ着くとヨシダさんいる
8
暮れてゆく部屋の机上にスリープの明りの点滅するコンピューター
10
哀しみに刹那打たれて落丁の次第に増えし人生を生く
23
海に僕捨てられたからヴィーナスに片腕あげた十六の冬
6
乗っかって ノリに海苔にもノリノリで 君と黄身とが踊り出したり
6
「こんばんは お疲れ様です」業務連絡のようなメッセージが君は好きなの?
6
(
去りぬ人 恋しき君の影追って 追っては追って 僕は夢を知る
)
3
(
あの頃の 優しさ故の涙抱き ただ此処に飾る 我のドライフラワー
)
5
焼酎のソーダー割に柚子ザクザク「酔いどれ天国」一人気ままに
23
シャンメリー そっと冷蔵庫の隅に入れ クリスマスに向け 気分高める
18
全部見て全部忘れる生きているご飯を食べるまだ生きている
8
通ぶってあれやこれやと試しつも 白いご飯にまさる快なし
21
ゆく秋の名残惜しきは
枝々
(
えだえだ
)
に僅か残れる桜紅葉よ /明日から冬らしく
26
納豆に日頃の苛々ぶつけても健気に美味い ごめんね。納豆。
25
夕餉まであとしばらくの間がありて 寝転がったら眠ってしまひ
17
「納豆を高速回転させるとき 苛々してるの覚えて置いて」
15
あんずって故郷のアイスの味に似てる よねって言われて微妙なあんず
7
仰臥して鳩尾あたりに手をかさね 呼吸をひとつ、もひとつ深く
18
学校の音楽室からもれてくる練習曲を月も聴いてる
28
窓に寄り 鰯雲見れば 君が弾く チェロの
音
(
ね
)
低く 空に溶けゆく
22
シナプスは
陽
(
よう
)
の粒子にときめいて月に微睡む雲の白網
20
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