読みさしの本をめくってゆくものは風ばかりですもういない僕
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言葉による感染 死に至る病 この色盲の夜
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美しいものだけがほんの少しあればいい人間嫌いが募る
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海は入魂しはじめる敗北するオナガドリの行方
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日に何度も水浴びする不潔恐怖症の二階の老女マクベス
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跳躍に至るまでの助走詩人の仕事はとけてしまう
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ふるさとの黒い土をひとすくいの舌の先で舐めてみた
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鬱病に縊れた作家 世界を震撼させた投資銀行の死いずれも二〇〇八年
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ジョン・ベルーシ踊れる肉塊サモハンキンポも侮りがたし
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すずめの子そこのけそこのけお馬が通るそれにつけてもおやつはカール
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米騒動 遠く離れた 丘の上 配給拠点に 鉄の雨降る
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虫の子は破れた身体のうみにいてのたうつことなく斃れていたり
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「悪い」だなんて勝手に言われて拒絶され嫌われる「私の不安」
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梅雨入りの間近 つぼみだ眠り ゆるりと育つ 我が月下美人
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片付け中、カゴと見るなり入る猫。私あなたをずっと愛すよ
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よくねだられ「おねえの辛辛カラカラスパゲッティ」 もう作り方も忘れたけれど>学生の時分は、よう作ったった、チャーハンとか。夜食(笑)
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芒種のころ 誕生日のくる実弟おとうとよ ちなみにわれは 立冬の生まれ
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ぱっちりの おめめで ねこがみつめてる きたいのまなざし なにが ごきぼう?
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起きぬけのザァと通る天気雨今日はベンチに座れるかしら
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雨カゼは天のふか愛定期便来なけりゃ皆んな忘れたままだ
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きみおも 幾度ゐくたひゑし かなよる またまで まくるめはや
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この胸の小さなトゲがひとつ取れ ほんのひと時気が楽になり
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梅雨前の僅かなチャンス逃すまじ 布団洗濯物ほしもの晴れ空のもと
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何度目か 出して使つてまた干してはためひてをり羽毛の布団
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鏡見てこれが自分だと思えずに 三十余年生きてきました
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銀色に光り輝く森タワー 早起きの朝は気持ちがいい
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これからも僕らのラッキーナンバーは永久不滅の『3』であれかし
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うぐいすの 声に癒やされ 写経する 墨の香りが 朝に溶けゆく
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庭隅の日当たり悪い紫陽花もやっとピンクに染まる水無月
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「ミスター」と呼ばれしひとの享年が偶然にせよ八十九歳はちじふくとは
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