夕食はおなかにやさしいものを食べ 休暇最後の酒を愉しむ
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昼下がり電車が通る音の意味 中断していた日常が呼ぶ
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失せ物を 煙草の煙で埋めたって 割れた心は 戻らないのに
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睦まじい友とあの子の仲を見て 作り笑いに荒れる夕立
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けふでもうはだしの日々は終わりかな 明日からはまた靴下をはく
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かなしみにかなしみ重ねるかのよう会いに行く砂利道の鋭さ
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「生きているだけで偉い」と 再確認 鼓動で揺れる 献血帰り
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腫れた目でブルーライトをスクロール朝ってなんか4時からだよね
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ピカいちと指を丸めて赤らむ君彼女はどんな真珠というの?
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もう何も言ふことはない ただ皆の上に 今週も平和の祈りを
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Tに激戦の跡点々と パスタにあらず 担々麺の
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残業 帰らぬ伴侶 揮いあげた拳で叩くシンバルの黙声こゑ
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夏しよう 君はガツンとそう言って私たちは水へ向かった
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夜風さえ 僕を試すかのよう 肩に触る
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紙飛行機 一度だけきれいに飛んだ 誰が拾ってくれようものか
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夏、消しゴムの角だけがやけに潔い
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末っ子の車見送り早々と気持はすでに短歌会へと
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そういうふうにしか生きられないひと かわいそうだけど私もそう
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静寂せいじゃくに包まれし 朝の公園 祭りのあとのやぐら ぽつんと
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ナルシスト悪口だなんて言わないで自分を愛した、ただそれだけ
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立方体 回す指が 愛おしく 恋の理由が 揃いました
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私の育てるものは 必ずや 遅れて花開く ぢっと待ち花開く
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夏は過ぎ 二人 大人になってゆく 薄くなる空 うたかたの夏
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積み上げた石垣のような本たちに苔を生やした日曜日夜
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お盆時期 曜日感覚 狂いだし 今日でリセット あすは月曜
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くまぜみにすだく小蟻のなりわいを 黙し みまもり向日葵は立つ
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何やかや常に言い訳するけれどどれひとつとて良い訳は無し
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多趣味とかそんなんじゃない よろずごと 三日坊主の成れの果てなる
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昨年は立ち枯れていた箒草ほうきぐさ今年はでかいでんでんでんっ
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絶望の朝だってただそこにいて陽を浴び優しい脈打つ猫
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