虫さんを 外で見るのと 家のなか 同じ虫でも 怖さがちがう    
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落選もしない安全圏にいて中村悠一だけを見ている
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AIに恋人の愚痴吐き続け今夜も一人枕を濡らす
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ある日死ぬ スマホで文字うつこの刹那でも そう慄いて 生きて死ぬ
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いっそ極悪人であればと思いもしないことを呟いてみる
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煙突の湾岸沿いに立ち並びしょうかのごとき船の警笛
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石ころを遠くに投げていたころは未来は100メートルもなかった
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東京の ご立派家々眺めては  羨ましくないそう思い込む
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『キッズ・ファミリー大歓迎』 つまり招かれざる客と知る
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シーユーと言いながら頭を下げる授業終わりの高校生
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目の奥が疲れで痙攣し始めたところに食らう寄生虫の話
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君とでも、楽しめぬものあるならば それを知るのは楽しいでしょう
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喫煙所 煙草弾いて火の種潰え 労働めいた雨 身に絡まる
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幾万と 欠けては満つる 月の夜 繰り返しては 歌は詠まれて
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上弦の 月を隠した 「3」の日に 89野球歳 皆に愛され…
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雨の日は心落ちつけ手習いの条幅二枚半紙は五枚
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「あるある」とわらいしはずの我もまた 夜のスタバで被るニューエラ
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しゃべる度ほくろが揺らぐただそれで話の記憶うたかたに消え
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森のカフェ ご夫婦ですかと 誤解され 貴女の困った 微笑みに惚れ
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君がためとて死せる兵士ひやうじの金鵄章などがために冥銭となる
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馴染めずにはみ出していく人生のそのどこまでが個性だったか
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期待され泣いた「すみません、わたくしは笛を吹かないタイプの妖精」
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澄みきった青空見上げて息子言うお空の雲はどこにいったの
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我先に 団扇へかける 子供かな 筒姫息吹く  太陽も微笑む
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キャンディを一つ頬張りタイムスリップ 無口な君もかつては子どもだった
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若い子の目にも眩しい真っ白なスカート揺れて夏を呼び込む
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きょうだいのこの身とその身とその身さえ あれば形見と笑いあった日
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りゅうりゅうと湧き起こりたり入道雲 出番は少々フライングかも
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お茶碗にお茶を注いで召し上がるいかのしお辛あさりのしぐれ煮
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「紫陽花」とひとこと残る買い物メモに書き覚えがない六月
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