一秋
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初心者です。よろしくお願いいたします。

煙る雨 春雷光った 緑野に つかの間浮き立つ 淡き菜の花
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庭面にわもにも 晩霜おそじも降りし 春の朝 土踏む音に 耳立てる猫
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曇り空 人影ふたつ 耕して 静謐の野に やがて春の雨
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年々に 力抜け落ち 箸落とす 老境の つくづくと眺めおり
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側溝の 流るる水を はねるに 魚影揺らいで 春の天つ風
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冬に春 風じりあって 桜月 曖昧ぼんやり わが身しどけなく
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ぬるみゆく 酷冬の水 洗顔の 指に確かめる 花冷えの朝
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病院の 空青くして ちぎれ雲 ひと空を見上げ やまいへ帰りおり
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春風に 震え咲きたる 繁縷はこべらの 花びら落ちて 野に白き文字
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この冬の 雪散りし空 暮れなずみ 家並みの淡く 春待つ夜よ
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残されし 時間ときをふたりは 愛おしく いつかさよなら、 いまはこのまま
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雪纒う 冬のシクラメン 寒空に 含羞はにかみに似た 薄紅とも
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曇り窓 息吹きかける 子らの目に 歳月としつきのごと 積もりゆく雪
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霧に似る 時雨しぐれしずくは 散りゆきて静寂しじま凍れば やがて雪の宵
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一面の ぼたん雪の空 その果てに あけ淡々あわあわと 夕陽映りて
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ボケ防止 クロスワードから 数独へ 進化する妻に 亭主おのの
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突風に 灯火ともしび揺らぎ 消ゆる人 老いの漁火いさりび 暗き海に揺れ
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夕暮れの 電車に消えた さよならを 黄金こがねの冬陽 静かに包み
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雪道に 小さな手袋 ひとつあり 雪に落とした 家族の欠片かけら
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庭に降る 雪を見ている 人ひとり 静寂しじま抱えて 暮れゆく夜空
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廃屋に 粉雪かかる 村外れ 思い出にも 雪は降り積む
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初雪の 路上を行き交う 人々の 白き息だけ 賑やかに踊り
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野にも落つ 雨を往くひとの 白い息 生命いのち言の葉 もう冬隣り
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冬ざれの 棚田にひとつ 背中あり 人世ひとよなど知るかと 晴れ渡る空
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山裾の 弱き夕陽に 冬の鳥 ねぐら探すよに 舞い上がる二羽
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霜月の 音なき夜に 目覚めれば 夢に冷え冷えひえびえ 冬が寄り添う
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秋深い 病院坂の 空青く 揺れくだるわれは ただ影法師
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降り掛かる 淡き紅葉もみじに 秋時雨 山麓しずかに 色深まり
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秋雨に もやる棚田に 立つ孤影 きみの風雪を 誰も知らない
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さる夜道 じっと月見る 秋蛙 繁殖済んで また行き暮れて
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