一秋
0
13
投稿数
250

初心者です。よろしくお願いいたします。

垣根越え 山茶花さざんかの花 べにさして 含羞はにかむごとく 路地にこぼれおち
12
孤雲浮く 深き青空 愛おしく ああいつか死ぬのかと 身震いひとつ
8
花白く 展示の卓に 秋気吸い て鶴のごと 寒蘭立てり
11
息白く 終日の雨 山煙る 老いの縁側 ただ秋霖に暮れて
11
淋しかった? 「ううん」とほんのり 笑う子の 祖母の帰りを 待ちし秋の日
11
寒さ知り ただ鳴けずして 時鳥ほととぎす  晩秋の陽光ひかり 夢幻ゆめまぼろしを飛ぶ
10
友の庭 一輪の桔梗立ち 深紫 冷気混じりの 細雨に濡れて
15
赫々あかあかと ニュータウンの空 入り日映え  家並み暮れかけ 行く秋静か
7
軒の下 銀糸切れそな 虫ひとつ  秋風に負けるな おれの蜘蛛の糸
7
風揺かざゆらの 季節忘れし 青い花  今頃やっと 秋の朝顔
12
秋障子 畳のへりに 日は落ちて 凜冷の風 素足をなでる
19
残光の 黄昏に下る 坂道に すすき揺らす風 はや秋を知る
11
今何て? 耳寄せて聞く 老妻の 暗き耳の奥 跳ねゆく木霊こだま
9
終の夏 濡れそぼる羊歯 かき分ける 雨音だけの森 水の惑星ほしゆく
6
カーブミラーに 陽炎ゆらぐ 草の道 蝉の亡骸なきがらひとつ 静寂しじまに落ちて
9
揺れさやぐ 垣根の風に 朝顔の 夏空うつす 青のひとひら
9
ひぐらしが ただひとしきり 夕暮れて 山の忘れられし 草の墓しずか
9
老母逝き 置いてゆかれたと 泣く妻の 背づる孫よ 焼場の空は澄み
7
濡れ燕 狂おしく翔ぶ 雨上がり あかねに染まる 夕暮の森しずか
7
落日の 寺にあかね差し 桔梗染む 行き交う人々 逆光ににじみおり
6
孫去りて 玩具ひとつが 転がりぬ 誰も居ぬ庭 短き蝉の夏
15
軒の端に 夏の夕雨ゆふさめ 降りかかり  待つこころだけ 雨音に冷え  
12
水生園 雨煙に紫の 菖蒲群  池面叩く驟雨、 濡れるよ形而下なにもかも
8
空は滝 降水帯の午後 側溝に 凄まじき水流みず ふっと呑まれおり
5
塀際へいぎわに 咲きし紫陽花 梅雨空の がく濡らす雨 細く降り続き
13
夕陽差す 遺棺に君は 一礼す  羽を畳んで 深き鶴のごと
6
初夏が来て 病院の坂 登りゆく  浮雲の下に 片隅の暮らし
11
花曇り ベランダ花壇に ヒアシンス おそ春日はるひの 青星揺れて
6
白黒の にわか雨町 傘の無き さな孤独が 路傍にちおり
11
玄関の ぬくき朝の陽に 狼狽うろたえる 老いの肩先 残りし冬ゆえ
4