一秋
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初心者です。よろしくお願いいたします。

足早な 思い思いの 夕暮れの 人の列にかかる 秋雨の寂しき
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この朝に 降るほそき雨 濡れながら 冷気胸に吸い 生き直せしあした
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やがてまた 曇り空暗く 降りかけて 秋雨の舌に 今朝も冷たく
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雲ひとつ 無き青空に 迷い道 すすき野にみちなく 陽光ひかり薙いで風走る
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抜けるほど 青極まる天 玲瓏の はや寒空に 秋くさめひとつ
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濡れていた 私鉄の街角 別れし日 あの夏の小雨に 声もなくわれは
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流れ去る 終電のひと 見送りて 置き去りにされし こころ畳む夜
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幸薄き 老婆死して 俄雨 シャイロックどもの 長き葬列に
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葬列の 家族の空に 百舌鳥もずは鳴く 血鎖滅び 高鳴く谺
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風強き 秋の川波 光跳ね 水へと踊る あの夏さまよふ
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うす雲に 駅裏の秋 人気ひとけなく 草の鉄路に 弱き陽落ちて
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柿の木の 古木なる枝 柿ひとつ ての熟柿じゅくしは 秋風にゆれ
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奥比叡 頬冷やす風も 紅葉す あけ色の葉散り もみぢ、、、と後ろの声
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篠突いて 橋ゆく傘を 叩く雨 欄干もやる 五条橋夜更け
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夜の車窓 微睡まどろむ若き母 その胸で 夢にあやされ 眠りつ笑う子よ
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待ちかねた その日の秋を 鈴虫が りりり、と鳴いて 夜の縁側
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直らない 玩具おもちゃ抱きしめ 泣く孫に 根負けじじい 同じ物買い
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棚雲に いちめんの茜 色づきて 人の世の夕焼け 美しきこと今更に
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林檎食う くしゃりくしゃり 咀嚼の 寂しき生物 われに息づけり
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姿なく 消えたご近所 老夫婦 何処いずこにゆきしか 知りたくもあり・なし
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朝顔が 今頃に咲く 夏庭の 色枯れるごと 秋は深まり
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墓石より 樹木葬と 老妻は 骨壺咲く木 ならねば良いが
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ホムセンの 園芸の秋庭 人群れに 赤を散らすごとく 彼岸花揺れ
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鞦韆ブランコは 秋の乗り物 孫揺れて 砂場の横に 長き綱影
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西空に 暮れゆく老いの 紅き雲 仮寝の椅子に 差すひかり淡く
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夕焼けが 鉄棒の長き影 写しをり 足かけて回る 子らの影もずっと
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夜のうみ 水切りの石 飛び跳ねて 三世さんぜのゆくへ 闇に消えゆけり
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今はなき 夜汽車の昔 思い出し 不眠の夜を 枕木のに乗せ
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耳たぶの 柔らかきほどの 無花果いちじくの 紅く恥じる実 初秋にかじ
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故郷ふるさとに 一所に一生 父はあり さきの渡らぬ 燕ごとくあり
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