一秋
0
12
投稿数
234

初心者です。よろしくお願いいたします。

立ちのぼる 離れて久しき 母の声 電話の向こう 時雨しぐれる夕暮
7
二度寝する 毛布の手触り 思い出し 肌引き寄せる 初秋の朝
4
まだ暗き 朝闇のなか 眠りつつ 夢に泣く人 そっと揺り起こし
12
わらべは 風の子 夫婦ふうふう吹いて こさえたゆえ 孫さんいつも風邪
3
風鈴の 細きに惹かれ うつらうつら 眠れ昼寝の子 夢に木漏れ日
5
銀箔の 夜明けの雨に 濡れた町 景色はひんやり 秋の空気感
4
延暦寺 朝霧にならぶ 法衣の数 法華大会ほっけだいえの日 凜として僧あゆむ
6
朝明けに 長袖羽織る 肌寒さ 四季の変わり目 ゆるく線引く
11
目覚めても この世に二人しか らぬかと つとに老妻 いたわるあした
10
中秋の 満月ひとつ 浮かぶ夜 地球テラの月明かり 我が苦きを薄めて
4
風揺れの 垣根の空も 澄みわたり 木蓮の実る 秋の入り口
12
診察後 平癒のきざし 認めたく 医者の言読む 思いははやりて
8
若き頃 老人の病棟と 揶揄せしも 病老の待合 今その真ん中に在り
8
かき氷 やけに口冷たき 九月末 残暑戻りて 扇風機帰る日
5
月影の 夜の庭に クコの花 薄紫の孤 ちいさく震えおり
3
水涸れの 草の川原に 降りていく 陽炎の道の下 ふと消えゆく人
4
弱気き 遠慮の肩支え 暖かき ひかりへ委ねる 介護の君に
6
夏去りて 風色変わる 夕の路 宵待の吾に 寂し色の風吹く
2
ボケ防止、と クロスワード 始めし妻 兆候きざし埋めるごとく 無言で解く夜
8
旅に出る 切なきイントロ 若き唄 二気筒のバイク 風に乗せし夏
2
アレ、ソレと 指示代名詞 電波にす 仲良き符丁も 老いほろ苦く
9
七回忌 日盛りの夏庭 降りかけて 草むしりの亡父 背の面影くゆ
6
夜の駅 終電のこころ 行き場なく 破月ゆらゆら 線路の夜空
6
さとす なにをとむかつき いや待てよ 暫時待てよと そっとわれを脱ぐ
4
書物をば 積ん読にして 砦にす 五畳の書斎 わが祖国なり
6
柔らかき 木目菓子バウムクーヘンの輪 そは重なり 残生ざんせいかさごとく 惜しみて食む
4
手をつなぐ 幼き姉弟きょうだい レンズにて ふいに涙滲むは 老いの緩みか
6
横降りの 驟雨を走る 土手堤 心ざぶざぶ 向かふ土砂降り
4
路傍に ゆうべの糠雨ぬかあめ 水溜まり く足踏めば 青空の波紋
6
子が育つこと 奇蹟に近し 出来事と 小さな手ひらけば なぜか哀しき
3