一秋
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初心者です。よろしくお願いいたします。

朝明けに 長袖羽織る 肌寒さ 四季の変わり目 ゆるく線引く
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目覚めても この世に二人しか らぬかと つとに老妻 いたわるあした
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中秋の 満月ひとつ 浮かぶ夜 地球テラの月明かり 我が苦きを薄めて
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風揺れの 垣根の空も 澄みわたり 木蓮の実る 秋の入り口
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診察後 平癒のきざし 認めたく 医者の言読む 思いははやりて
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若き頃 老人の病棟と 揶揄せしも 病老の待合 今その真ん中に在り
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かき氷 やけに口冷たき 九月末 残暑戻りて 扇風機帰る日
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月影の 夜の庭に クコの花 薄紫の孤 ちいさく震えおり
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水涸れの 草の川原に 降りていく 陽炎の道の下 ふと消えゆく人
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弱気き 遠慮の肩支え 暖かき ひかりへ委ねる 介護の君に
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夏去りて 風色変わる 夕の路 宵待の吾に 寂し色の風吹く
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ボケ防止、と クロスワード 始めし妻 兆候きざし埋めるごとく 無言で解く夜
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旅に出る 切なきイントロ 若き唄 二気筒のバイク 風に乗せし夏
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アレ、ソレと 指示代名詞 電波にす 仲良き符丁も 老いほろ苦く
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七回忌 日盛りの夏庭 降りかけて 草むしりの亡父 背の面影くゆ
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夜の駅 終電のこころ 行き場なく 破月ゆらゆら 線路の夜空
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さとす なにをとむかつき いや待てよ 暫時待てよと そっとわれを脱ぐ
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書物をば 積ん読にして 砦にす 五畳の書斎 わが祖国なり
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柔らかき 木目菓子バウムクーヘンの輪 そは重なり 残生ざんせいかさごとく 惜しみて食む
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手をつなぐ 幼き姉弟きょうだい レンズにて ふいに涙滲むは 老いの緩みか
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横降りの 驟雨を走る 土手堤 心ざぶざぶ 向かふ土砂降り
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路傍に ゆうべの糠雨ぬかあめ 水溜まり く足踏めば 青空の波紋
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子が育つこと 奇蹟に近し 出来事と 小さな手ひらけば なぜか哀しき
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よろしくねと げたる名札 朝陽受け 含羞はにかみ眩し 若き介護の人
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かげろふ立つ 芥の広場 草いきれ 廃工場こうばの真昼 誰も居ない夏
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雨夜うやにだけ 痛む古傷 丸まりて うつらうつらと 夜の雨音
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漂う夏 残暑のだるい風に きみとの記憶 いまは残らず 蝉のこえしきり
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茜空 夕陽も届かぬ 奥の間で 頬に冷え畳 秋を見つける
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薄曇り 水の冷たさ おもう朝 残暑こぼれる 夏の終わりに
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昼下がり やしろの蔭と 森に蝉 宿題みし子は 夏草に消え
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