TORAKO
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日々の想いを三十一文字に・・・

夏の夜ライン電話で集まれり各地に住まふ三姉妹いて
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店頭に売れ残りおり備蓄米もしや皆様米倉持つや
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目覚めどき背中を撫でる母の手に包まれたきや赤子のように
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轟音が聞こゆるようなコントレイルひこうき雲太く残りて夏空眩し
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あるじなき家に咲きおる紫陽花の凛々しき青に故人偲びて
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アオダモに掛けた巣箱に耳すませ漏れ来る音に生命知るらむ
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水無月の晴れ間に夏の熱気沸き脱皮するごと衣脱ぎ捨て
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窓を打つ雨粒見つむの胸の日々の煩ひ洗い流せよ
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田の景色知らずに育ちし吾なれど海馬に在りて水張田に鷺
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紫陽花の花芽みつけし退院日移ろふ季節やっと目に入り
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急病の娘の家に向かう道不穏な夜を照らす満月
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陽だまりにアンモナイトの型で寝るネコの真中まなかにわが面埋もうずめり
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遠く見ゆ山膨らみて雨ごとに緑の絵の具塗り重ねゆく
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川沿いに名残り桜と菜の花が二色で描くデクレッシェンド
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卆寿越え「今年も見たり山桜」とゆらぎし文字の叔母からの文 
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泡立てのリズムで揺れるコック帽車窓から見ゆ調理師学校 
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思春期の憂い払いて青春の門出に立ちぬ十八歳じゅうはち皇子みこ 
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餌台の順番待ちのシジュウカラ向かいの枝で井戸端会議 
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大鍋にカレー仕込みて春休み孫ら食らひて鍋底笑ふ 
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ふきのとう湯がいて青く匂いたつ「ばっけ」の呼び名馴染みて久し 
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春の宵空薫そらだきのごと香しき匂ひ運びぬ梅の下風
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鶯の初鳴き聞きてそういえば上着羽織らず朝のごみ捨て
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寒緩み賑わう街に時刻とき(2:46)くれば皆足止めて鎮魂祈れり
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家ありし瓦礫の山に立ちつくす声なき吾に雪吹きつけぬ(2011.3.11を偲び)
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雛飾り春の兆しを待つ庭の梅の蕾に啓蟄の雪
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紅色の苺洗いて香りたちひとつ頬張る台所の春
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雪やみて枯葉押しのけ顔を出す春を告げんとクロッカス見ゆ
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寝支度の吾を追い越し部屋に入り布団の真中まなかで吾を待つ猫
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如月の雪の晴れ間に射す光近づく春のにほひ含みて
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四十二になりし娘にその歳の吾を重ねて背中支えん
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