しっぽ
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拾い上げるほどではないけれど
眺めるには退屈しない程度のものを。

ひっそりと朗読をはじめました。
https://www.youtube.com/@Sippo_4

カタツムリ その眼差しに何を見る 夏へと続く放念の雨
12
過ちは正されずともよいのだと猫が横切る道に咲く花
17
幸せはそろりそろりとやってくる 様子うかがう子猫のように
14
蝉が鳴く前にだけ吹く薫風を留めるすべが無かろうものか
11
街中で誰も手元を見ていない そんな時代もあったのだとか
9
夏前を忘れぬための一呼吸 あの世みたいに美しい朝
14
沈黙が 言語に変わる その前の 刹那に揺れる 朝焼けの花
17
世が乱れ どんなに日々が 荒んでも 季語は優しく 美しかった
12
春空に母の一字を書いてみる 高さは願い 余白は祈り
11
手の中に あなたが隠す 嘘の香と 五月の風が 鼻腔に残る
5
春虫は どうもお呼びで無いようで ただ気配だけ残しておくね
8
尽きかかる桜の陰に月掛かる 東の空は雀色時
9
「 春先は 退屈でしょう? 麗らかで 」 あの日の声は 誰であったか
15
ウグイスが 笑い笑われ また笑う うららかな春でございますね
9
裸眼では 像を結ばぬ 瞳には 一重桜も みな八重桜
15
春風に ほぐれたらいい 何もかも 寒さも空も 蕾も君も
15
たまに来て どかりと座る セロトニン そうよ私は あなたの奴隷
10
追憶が層を成しては花弁に ハレもケもない春の呼び声
14
時を経て空き家になった縁側で 春の陽射しは何を温む
17
早起きの春に支払う三文は 神酒と祈りと朝摘みの花
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この腕に 抱える花が 君ならば 物憂い春も お散歩日和 \ 愛犬十回忌
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久々に秒針進む音を聞く 夢を明日への導線にして
13
不器用な僕らが望む幸せの目盛りが一つ進む春なら
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三寒の あとに四温が 来ないから 梅のつぼみと 春待ちの朝
19
「捨てないで」 指に縋って 泣き付いた 雪と見紛う 真白きあなた/発泡スチロール
17
ぼた雪が 繰り返される 生活に 句読点を付けるかのようだ
15
本心を 貫くような シリウスと 目が合ったのは 何度目だろう
16
寒月に 希望を叫ぶ 夢ならば 飽くるほど見た 狂うほど見た
10
もういいと戸棚にしまい終わらせた 夢は私を赦しはしない
14
移ろって 行かざるを得ぬ 歳月と 持たざる者の 移ろわぬ詩
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