つい夢中そしてあとに来るまたやったこんを詰めずにぼやっと行くべし
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パン、トマト、チーズ並べて新しい4月の朝は異国の如く
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でもだって背中に投げてしまうからごめんなさいと今日は言わない
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最後まで聞かずに切った 分かってる 冷めた紅茶は飲みたくないの
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遠ざかり 久しくなりぬ パン屋さん 意を決して 今朝は奮発
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踏んづける花は血溜まり桜は死枝にまだらな傷口緑
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夜明け前 海へ誘われ 日の出まで はしゃいだ友との 若き思ひ出
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留守番のご褒美ほおばるうちの亀 彼の好物シャケのお刺身
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生命を省エネモードに切り替えて 亀は黙って留守居をはたし
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夢うつろ さりとて紙の 手触りと 巻末の文字 焼き付く枕
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飼い主が所用で五日家を空け 亀は留守番なにも食べずに
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布団から 手や足を出し 背伸びする 寒くない朝 春が来たんだ
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釣り下がるドウダンツツジの白花に触れば小さな鈴の音聞こゆ
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歩きつも急に聞こゆる雷鳴に空青きまま速歩で帰る
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スタッフのユニフォーム替り気のせいか華やかさ増す新年度なり
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のんびりと 露天に浸かり 雲見れば 浮世の垢も洗い流せリ 
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今宵見ふ月と花とをおなじくは遠ひ地に居ふ君へ送りたし
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層雲が隠す灰色の教室 黒鉛延びて空と繋がる
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今ひとつ わからないけど なんとなく みたいな感じが 楽しかったり
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愛おしく髪を梳く手に身を任せ目を閉じて聞く柔らかな声
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クーピーを買い与えられたときめきを百均で買う水彩鉛筆
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ひらめきは大した事はないもので先にスマホに訊けばよかった
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お茶したい刺し子もしたい親友とも宛の手紙も書きたし明日の休日
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両脇に建ち並ぶ家 私沿い 空見えぬ今 暗渠と呼ばれる
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メンクリの待合室のオルゴール 曲は『命に嫌われている』
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春の夜の月をペンではえがけない 白く滲んだ雫みたいで
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「今日ライブだから帰り遅くなる」「あぁ克樹か」と理解ある父
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また一匹照明の中に虫入る 暴れる足が止むのはいつか
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楽しげにLINEで話す娘らの 朗らかな声が聞こえるようで
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公園の木に鴉の巣撤去され七つの子たちいたら気がかり
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