寝ぼけ見る 鏡の中に せがれいて 驚く吾を 妻が頷く
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仕事終え 蛍光ペンを はしらせて 中二の君に 今会いに行く
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「オレの人生ここからや!」と叫ぶ子よ 君の前途はきっと明るい /近所の小学生
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「血を流しながら痛みに耐えなさいこれは祝福」「うるせぇクソが」
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網戸して10cm開けた窓からの ひやり夜風よ眠りを誘ふ
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もれ出づるあの月影を飲み込まば透きとほるほどやさしくならむや
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扇子見るたび思ひ出すフィラメント幾千といふ挑戦の先の
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敷石の下に泳いでさかなたちまばゆい蜜をぱくりと食べる
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あの頃の思い出そっとしまい置く一瞬の様で永遠の様
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閉じ込める三十一字みそひともじに秘められた思考と記憶がうたになるまで
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Tシャツの一枚だけで済む天気西に向かって旅してみたい
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何回もコールしたのにどうしたの? ごめんセコムの車に轢かれた
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こんなにも広い我が家は久しぶり引っ越す前の最後の夜に
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うららかな時期も過ぎ主演になるべく街頭へ飛ぶ練習をする羽虫や羽虫
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黄昏や 枇杷びわの木登る 幼き日 初めて足を掛けた感触
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ご無沙汰のOB会が嫌なのは 当時の序列思う屈辱
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見たっけ?って言いあいながら炙り烏賊 水族館から五分の店で
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青梅が桃のかおりを出す頃に リカーと砂糖買いに走りて
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蝉が鳴く前にだけ吹く薫風を留めるすべが無かろうものか
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見たくないテレビを見てるひとりの夜五十字以内でまとめなさい
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学校に忘れ物のない日はないまるで人生がそうであるように
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交差点にて立ち尽くす見上げれば最新バージョンの私なり
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マナカマナインドネパールレストラン「国宝」観たあと彼との食事
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思い出は脳にはなくて 地雷とか機雷のようにそこここにある
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落日に君だけさがして陰落ちる飛ぶかあるいは風になれたら
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閉店間際のバーガーショップにて 揚げたてポテトの申し訳なさ
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神でさえ術なき宵の蕭条の暮れゆき人の散り散りと消ゆ
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「お願いだ、僕だけ置いていかないで」 「方舟はもういっぱいなんだ」
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完熟の トマトに惹かれ 二袋 梅雨入り前に リコピン補充
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しまったあ! この暑いのに クノールの冷たいスープは切らしてをりぬ
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