遺影から手術の痕を消した日よ また夏が来る 頼んでないのに
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息子らよりのウエッジウッドのマグカップ惜しみ飾りつ二十六年
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ダイエット励んでるのにむしろ増えヤケクソで食む天ぷら定食
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ふくらんだウィスカーパッドに秘められし 君の魅力に目が離せない
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突然に 腹が鳴るなり スイッチは どこにあるやら 呼び戻される
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夜に負けて君はライターにオレンジを灯して、消して、灯して、消して
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たぶん犬派なんだろうなリポストにいつもいいねをくれるあの人
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眼前の 夕日に向かいて 風を受く 白波は投げし 汝れは何ぞと
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先生の声を無視して君だけの楽園に行こう(無垢な絞殺)
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窓際に夜の業火は忍び寄り イイダクダクと水の降る音
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紙やすり発火するまで(凹凸を消す為に)人の背中をさする
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風わたる けやき並木に きみを待つ 木の下影に 初夏を包みて
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歌詠めば自分のじかんを取りもどす町からはなれられない我は
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いつの日か 今の節目を 振り返り 是と言えるよう 力を尽くす
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バター餅 嗚呼憧れのバター餅 濃い濃い緑茶と さぞかし合はむ
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亡骸となりゆく白き虫の子に枯葉の揺籠作りて寝かす
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声を出し、荒城の月歌えしは、我が人生の思い出なりか
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黒柿の痕の残りし道を見て「これなに」と問ふ子に言葉をさがす
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読みさしの本をめくってゆくものは風ばかりですもういない僕
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言葉による感染 死に至る病 この色盲の夜
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美しいものだけがほんの少しあればいい人間嫌いが募る
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海は入魂しはじめる敗北するオナガドリの行方
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日に何度も水浴びする不潔恐怖症の二階の老女マクベス
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跳躍に至るまでの助走詩人の仕事はとけてしまう
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ふるさとの黒い土をひとすくいの舌の先で舐めてみた
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鬱病に縊れた作家 世界を震撼させた投資銀行の死いずれも二〇〇八年
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ジョン・ベルーシ踊れる肉塊サモハンキンポも侮りがたし
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すずめの子そこのけそこのけお馬が通るそれにつけてもおやつはカール
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米騒動 遠く離れた 丘の上 配給拠点に 鉄の雨降る
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虫の子は破れた身体のうみにいてのたうつことなく斃れていたり
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