Utakata
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千葉甫
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カメラから視線の逸れた瞬間があの日の記念写真に残る
10
廃屋の庭に茂った冬草のところどころに真白い小花
13
冷えきったタイルに伸びている影が歪んでいってナメクジとなる
7
高層のビルに群がる鴉らの上に
茜
(
あかね
)
を帯びてくる雲
14
十字路をよぎる人影、犬の影、斜めによぎって行く鳥の影
19
卓上の一つの
林檎
(
りんご
)
に映る灯があって夜のゆく声の無い部屋
7
背後から過ぎ行く黒いヘルメットにまるく
映
(
うつ
(
)
)
って今日の落日
12
読み
止
(
さ
)
しの本を閉じれば隙間風触れて首筋冷えるこの夜
14
去って行くバイクを聞いて朝刊の
入
(
はい
)
った音と知る夜明け前
16
朝の雨ところどころに濡れ残り空の光を映すこの朝
9
年賀状投函予定の前日に急逝告げる喪中のはがき
13
点
(
とも
)
る灯の明るさ増しつつ急速に雲は厚みを増す窓の外
9
カーテンの
陽
(
ひ
)
ざしにぴこぴこある影は
庇
(
ひさし
)
に突き出た雀の
尻尾
(
しっぽ
)
14
音低く吹くハーモニカ少年の日の記憶から拾い出しては
11
一度だけインターホンの鳴った
後
(
あと
)
降り続いている夜の雨音
13
不透明ガラスの窓の
夕光
(
ゆうかげ
)
に塀行く猫の大いなる影
22
日記帳開いたものの昨日とは代り映えせぬ日だった今日も
11
聴
(
き
)
いているギターの曲に遠い日の絃の感触
還
(
かえ
)
る指先
14
夜は冷えて目覚めるたびに一つづつ電気シーツの目盛りを上げる
10
満ち満ちた陽ざしの中の紅葉を
煌
(
きら
)
めかせては過ぎて行く風
14
みどりごのむずかる声に愛のある笑い声立つ待合室に
17
灯を消して闇の中から蛇口より滴る音に呼び戻される
15
陽光の満ちた明るい通りまで冷たい日陰のこの道がある
14
雲割って店の奥まで射した陽にこちらを見ている眼鏡の光る
6
一枚の落葉も歩道に見えなくて
裸木
(
はだかぎ
)
で立つハナミズキの木
14
探しものしていて出てきたこの写真撮ったあの日の揃っていた顔
12
眼が覚めて仄かな白の満ちた部屋ここから見えない月の光に
11
店先の椅子に置かれて行く人らを見つめ続ける手書きのメニュー
10
暮れてゆく部屋の机上にスリープの明りの点滅するコンピューター
10
朝の窓開いて今日も遠く立つ
桜紅葉
(
さくらもみじ
)
の輝きに会う
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