千葉甫
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行く秋の陽ざし静かな白壁にまったく静止の裸木はだかぎの影 
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此処ここまでは漂ってきた草のわた濡れた舗道にくだって終る
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夕光ゆうかげの透き通りつつ今日はまだ枝にとどまる木の葉幾つか
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最後までドアを閉めろと舌打ちに似た音立てている冷蔵庫
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低く差す陽ざしの中の散り残る紅い木の葉の輝くこの日
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今日もはや夕陽となって葉の落ちたの骨格の滑らかに照る
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散り残る葉のある枝から散り落ちるように雀のはらりと下りる
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テレビから出てきた笑いに誘われた一人の笑いが浮く暗い部屋
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冷え込むと予報の出ている午後晴れて閃いて行く金色の蝶
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裏窓に点る灯りが見えている家解体の跡地隔てて
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一頻ひとしきり通りを染めた夕茜薄れていって街灯とも
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店内へ伸びた陽ざしに照らされているのは誰も居ないテーブル
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なめらかに音も立てずに秒針の回り続けている待ち時間
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来週は強い寒波が来るという今日の陽ざしに羽虫の光る
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したたった水が床から眼のように光って見上げる真夜中のとき
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忘れないようにメモしておくことをすっかり忘れていたのに気づく
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側面に夕陽の照っているビルの暮れた窓にはともる青い灯
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『行けなくて御免ね」と言う再生の留守電から来る聞き慣れぬ声
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見るともなく見ていた遠い窓の灯の消えて私もそろそろ寝るか
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暮れてから降り出してきた雨音を聞きつつ眠る静寂しじまに覚める
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人逝ひといって家の解かれての失せて金木犀の匂わぬ今年
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見上げれば青一色の空を背に紅葉映えるハナミズキの木
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眼の隅でとらえたものは卓上に立つ空瓶にうつった私
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床板の軋んだ音にはっとして目覚めた夜の月の明るさ
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見下ろした舗道にうつる灯のあって今日の終りはいつからか雨
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私には気づかず過ぎて行く人の薄い陽ざしに曳く薄い影
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足元を吹かれていった一枚の紅い木の葉を折々思う
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ハナミズキ通りへ折れて紅葉は今が盛りの一樹に出会う
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今日からは住む人あってカーテンをなびかせている四階の窓
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取り敢えず答礼をして擦れ違う誰だか思い出せないままに
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