千葉甫
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目が覚めて月の明るいカーテンの外をよぎって行く影を見る
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わが帽子打った一(ひと)つの転(ころ)がって散らばる木の実の中に紛(まぎ)れる
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めっきりと日向(ひなた)と日陰の気温差の出てきて頓(とみ)に秋は深まる <
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一筋(ひとすじ)の飛行機雲のふやけつつ次第(しだい)に帯(お)びる夕映えの色
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いつからか降り出していて鳥の居た屋根を濡らしている朝の雨
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鵙(もず)の声響(ひび)いたあとに雨の音ひっそり続いている今日の刻(とき)
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束の間の思考空白 目の前をよぎって行った蝶を見つめて
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一枚の魚鱗(ぎょりん)のような昼の月淡く懸(かか)っている今日の空
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会計で予期より低い金額に買い忘れていたもの知らされる
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肩の冷え感じて今朝は目が覚める一夜でめっきり秋深まって
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入れ代わり立ち代わりくる怪メール今日は国勢調査名乗って
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おもむろに蛇口に膨(ふく)らむ水滴が今日の光を映(うつ)して落ちる
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近づいてきた声の群れ いっぱいに頭上覆(おお)って鴉らの行く
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眼を刺した稲妻のあと間があってゆるく転がる雷鳴響く
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直進か左折か右折かサイレンが近づいてくる夜の十字路
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眠り待つ今日の記憶は煌(きら)めいてよぎって行った金色(こんじき)の蝶
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吹く風は秋の気配を帯びながら漂って行く一匹の蝶
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炎昼の日陰の中の一輪のハイビスカスの紅(くれない)冴える
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開けている窓からたまたま入ってきた風に仄(ほの)かな秋の感触
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去って行く車の角を折れながら鋭く光るリアウィンドウ
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どうしても浮かばなかったアイデアが出てくる とにかく始めてみれば
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振り返り片手を上げて去った人それが最後となってしまった
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今はもう記憶の画像 矢車菊咲いた小道も出会った人も
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夕映えを背にしたひとつの窓の灯が点(とも)るのを見る消えるのを見る
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陽光に炎のように閃いて停止指示する手旗が上がる
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灯を消した今日の終りに雷鳴がゆるく響いてくる真上から
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陳列の匂い皆無(かいむ)の弁当を見た目で選ぶ心許(こころもと)なく
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この夢は以前に見たのと同じとの思いの兆(きざ)す終る間際(まぎわ)に
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もうこんな時間となったか あと一章読んで今夜は終りにしよう
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卓上の本のページに降りてきた紋白蝶と暫く憩(いこ)う
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