千葉甫
1
1
投稿数
128
取り敢えず答礼をして擦れ違う誰だか思い出せないままに
17
LP(レコード)の最後の曲の音絶えて陽ざし静かなカーテンの外
15
暮れ際の陽(ひ)ざしの低く伸びていて光る舗道の凹凸(おうとつ)を見る
14
甲高(かんだか)い急ブレーキの音のあと事(こと)なく過ぎてゆく夜の刻(とき)
11
電線の先の先まで連なった鴉らを見る ふと目を上げて
7
鴉らの道を隔てて交わす声 スタッカートの応えもあって
5
完成の間近な家の灯(とも)されて金槌を打つリズミカルな音
10
中空に声を交わして群れている鴉ら徐々に去りつつ暮れる
12
荒庭にカンナの花の咲き残る一輪あって風冷えてくる
10
目が合った馴染(なじ)みの猫の挨拶(あいさつ)か尻尾(しっぽ)を立てる躊躇(ためら)うように
13
真夜中の通りを抜けていった音 車だったかそれとも風か
12
朝空の薄墨色に架かる虹 道を跨(また)いで屋根から屋根へ
10
事(こと)もなく行く日の暮れの窓外を音無く過ぎる赤い閃光
6
唐突(とうとつ)に近くへ下りてきて弾(はず)む雀一羽と私との朝
8
散り残る木の葉幾(いく )つかカーテンに影を落として揺れるこの夜
9
閉め忘れた窓に気がつく室内に雨の匂いの籠(こも)り始めて
15
コンビニのレシート挿(はさ)んでいたページ開いて次の展開を読む
7
ひとときは厚みを増していた雲の薄れて夕陽が滲み出てくる
6
草の葉の大きく揺れて突然によぎって行った一陣の風
10
首筋に空気の動く気配来て見回す夜はただ更けてゆく
6
まだ青い葉群の中に紅い葉が点々と出るハナミズキの木
7
暮れてから暫(しばら)く灯(あか)りの点(とも)る窓カーテン開くことのない窓
7
窓際のブロック塀は猫の道いつもの猫と暫く見合う
9
紅葉の一樹輝く窓からの眺めの遠い木立の中に
7
青空の雲を見ていた眼を閉じて私も漂う雲と一緒に
5
夕茜(ゆうあかね)薄れていった大樹からいま浮き上がってくる丸い月
10
海からは遠い此処(ここ)まで二度三度船の汽笛(きてき)が来る今日の風
10
雲割って一気に落ちてきた陽ざし秋とは思えぬ重たさがある
14
蛇口から落ちてくる水てのひらに温(ぬる)くて秋はさらに深まる
7
落ちてきた声に見上げてよぎり行く鴉一羽を見る月の夜
7