Utakata
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千葉甫
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目が覚めて月の明るいカーテンの外をよぎって行く影を見る
6
わが帽子打った
一
(
ひと
)
つの
転
(
ころ
)
がって散らばる木の実の中に
紛
(
まぎ
)
れる
6
めっきりと
日向
(
ひなた
)
と日陰の気温差の出てきて
頓
(
とみ
)
に秋は深まる <
11
一筋
(
ひとすじ
)
の飛行機雲のふやけつつ
次第
(
しだい
)
に
帯
(
お
)
びる夕映えの色
13
いつからか降り出していて鳥の居た屋根を濡らしている朝の雨
15
鵙
(
もず
)
の声
響
(
ひび
)
いたあとに雨の音ひっそり続いている今日の
刻
(
とき
)
12
束の間の思考空白 目の前をよぎって行った蝶を見つめて
13
一枚の
魚鱗
(
ぎょりん
)
のような昼の月淡く
懸
(
かか
)
っている今日の空
13
会計で予期より低い金額に買い忘れていたもの知らされる
5
肩の冷え感じて今朝は目が覚める一夜でめっきり秋深まって
16
入れ代わり立ち代わりくる怪メール今日は国勢調査名乗って
8
おもむろに蛇口に
膨
(
ふく
)
らむ水滴が今日の光を
映
(
うつ
)
して
落ちる
14
近づいてきた声の群れ いっぱいに頭上
覆
(
おお
)
って鴉らの行く
8
眼を刺した稲妻のあと間があってゆるく転がる雷鳴響く
8
直進か左折か右折かサイレンが近づいてくる夜の十字路
9
眠り待つ今日の記憶は
煌
(
きら
)
めいてよぎって行った
金色
(
こんじき
)
の蝶
10
吹く風は秋の気配を帯びながら漂って行く一匹の蝶
11
炎昼の日陰の中の一輪のハイビスカスの
紅
(
くれない
)
冴える
11
開けている窓からたまたま入ってきた風に
仄
(
ほの
)
かな秋の感触
10
去って行く車の角を折れながら鋭く光るリアウィンドウ
10
どうしても浮かばなかったアイデアが出てくる とにかく始めてみれば
8
振り返り片手を上げて去った人それが最後となってしまった
8
今はもう記憶の画像 矢車菊咲いた小道も出会った人も
10
夕映えを背にしたひとつの窓の灯が
点
(
とも
)
るのを見る消えるのを見る
14
陽光に炎のように閃いて停止指示する手旗が上がる
9
灯を消した今日の終りに雷鳴がゆるく響いてくる真上から
8
陳列の匂い
皆無
(
かいむ
)
の弁当を見た目で選ぶ
心許
(
こころもと
)
なく
9
この夢は以前に見たのと同じとの思いの
兆
(
きざ
)
す終る
間際
(
まぎわ
)
に
8
もうこんな時間となったか あと一章読んで今夜は終りにしよう
10
卓上の本のページに降りてきた紋白蝶と暫く
憩
(
いこ
)
う
10
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