雨降りでいかにも寒そげな予報聞き 上着羽織ると暑くて邪魔で
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一日で 暑さ払いし 風吹きて ようやく来たる 秋の十月
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二時間の診療を終へし老いの脳はエナジー枯渇しシャットダウンせり
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魂の 傷がその人 たらしめて そこはかとなく 悲の彼岸花
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ティーン・エイジ・ドリーム 今にしか かけない詩も あるんですよ
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青チャート 単語帳と 文法書 (受験戦争 がんばろうね)
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だれにでも届く挨拶みたいだね 近頃冷たくなった水など
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メールする今も月は綺麗ですか? 着信音もならない毎日
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欲望のままに生きたいわけでなし ただよっている差異の波まに
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秋惜しむ 湖面に落葉 舞い落ちる 湖畔の木々は 冬支度かな
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夕べには 久しき友と 語らいし 時間ときを忘れて 杯を重ねる
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旅先の  ススキの原野に 分け入りて いと足早に 秋は過ぎ行く
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目を閉じて音に世界を感じとる。犬の散歩に追いこす自転車
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ゲリラ雨は呪詛の響きや曼珠沙華 倒れし花の庭に秋風
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道すがら色付きを待つ街路樹を 毎週撮りて冬来るまでの日記とす
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空なんて高ければ高いほどかなしい 悔やむことには果てがないこと
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ウソみたいに顔がまるいこと 写真にしたらウソになるかも、 猫
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猛き朝 泡立つ胸に残るおり ただいまの声おそらく君も
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死を語る子の眼が我を抉る夜 蒼白き部屋ああどうしたら
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夕餉すませ 風の吹きたる家庭いへにはにたははに実る柿は哀しも
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追いかけてくれる優しさ期待してゆっくり歩く駅までの道
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幼きにかげおくりして並びたるかたへの影は今はあらぬか
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はろはろに流れてゆきし白雲の数あるごとにわれは憧れむ
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永遠とわの日にかじる果実はみずみずし 甘し酸っぱしめでたしかなし
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哀しびは氷雨の如く たたなづくわが柔膚にきはだをふかく刺したり
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愛だった愛だったはず君のいた駅の名前は思い出せない
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奪われてきたわたしから奪えない愛をもらったひとであること
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君の名をただひたすらに繰り返すヒグラシもついに黙る 秋だね
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剥製標本にして忘れたいことも留めてしまえる短歌
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ひとところに留まれぬのは辛いのか降って流れて気となる雨よ
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