三年間我にウイルス寄せ付けぬ真白きマスクかべを今日も着けゆく
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夕飯を「うまい!うまい!」と食む君を「煉獄さんだ!」子が笑う小さな幸さち
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今年また桜の下に共に見し人の面影懐かしむかな
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春はただこの一時の名なりけり桜に浮かれ惑ふ夢の間
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洗顔の終はりし後の耳たぶに真珠の如く水滴さがる
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毎年のことだが桜が満開になると鵯がきて騒がしく鳴く
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誰もいない壁にボールを投げつけて一人傷つくそんな人生
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でも君は幸せだもんねいつだって 突き放したって何もないのに
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満月がやり直せないこの夜を見つめて一人浮かんだまま
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リスカは横より縦の方が血が出るよ 心配されるための知恵
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脳漿の雫滴るシナプスのスパーク数多あまた雨の山茱萸
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コンタクト外すと世界は滲みゆく「優しく見える」と誰かが言った
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真夜中に辞書ひくことの嬉しさできみの言葉を紐解いていく
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本当は別れたくなど無かったよ。夫婦が他人に戻る喪失
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眠さには勝てずに今日もソファ泊お皿たちもシンク泊
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ブルーライトカット画面をささくれた親指の影黒く横切る
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何でもない時に目を見て笑い合う こんな幸せ いつまで続くか
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可能性それは天文学的で経験しない未来なのかも
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浴槽で ぬいぐるみ洗う 娘たち まるで葡萄踏み 謝りながら
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くっきりと妊娠検査薬の赤両手つかんで見つめ任せろ
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移り気な私の中でいつまでも陽だまりにいる 君一人だけ
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十二歳 秘密にしたり 隠したり 全て知りたい 子どもの心
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誰からも嫌われないけど誰からも好かれないような人生ですね
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涼し気なアジアンタムの葉の陰に明るく響くアレクサの声
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慣れぬ地名の天気予報聞き目を閉じる いつもと違う心臓の場所
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ブレザーのボタンください、それすらも言えないわたしに春はまだ来ない
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2階席から
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いつの日か何者かになりたいと思う人達がひしめく都会で
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アンテナと 丸いタンクで夢見てた MOTHER2、ネス、スカイウォーカー
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三輌目 英語繰り出す をとこらの ひとりずつ去り やがてしづまる
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