愛の主成分がやさしさであることを信じたかった 田園の焼け空
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汲みたての水を求めて喚く猫 二月中旬 暦では春
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コミュニケーションというよりコレクション 鍵アカわたしのいいねは君に見えない
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世の中は 無常と理不尽で 成り立っている それを受け入れて 生きていく無常
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そうやって調子いいこといっちゃって もうあげてないよ「にゃー」あげないよ!
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もう季語に入れていいよね 春告げの 面倒い行事 確定申告
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冬ならば 夏の暑さも 恋しくて 夏近づく頃 その恋冷める
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愛を説くバレンタインデーの日も通勤電車に一人揺られて
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自販機に君が着ていくクラシカルカラー 緑茶飲む度思い出すだろう
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「大丈夫」なんの根拠もない時に、ふと出る一言 最後の言い訳
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前倒しバレンタインのいちご飴律儀な君はクッキー返す
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Sベッド 前は並んで寝れたのに 今は頭を 互い違いに
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捨てるのも手に入れるのも難しい保護費は安く物価は上がる
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子 爆睡 なぜか浮く手を そっと持ち 布団の中に 優しく仕舞う
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花札を してればおれの狙い札 から奪われて 揃わぬ五光
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暖かな日差しの下で鼻をかむ回数が増え春はもうすぐ
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弾けたら広がる海に飛び込んで 行ってみようか物語の先
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誰にでも手放せぬものあるはずで 私の場合は薔薇の毛布
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履歴書を目の前にして私たち 21年何していたの
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「かぁかぁ」と鳴き真似すれば「カーカー」と烏の返す平和を愛す
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毛づくろい パーのあんよがみえている ねこのほんのりピンクの指よ
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コンサートランチタイムのピアニスト グレーのスカートペダルで揺らし
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ひさかたの 雨のめぐみて下萠したもえの 野もぐむ春となりけり
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みちのくに 春のいたりて刈株かりばねに ひこばゆ森のあをちひさし
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I love you 闇夜に消えた チョコレート とろけていく 染み込んでいく
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瞬きをするたび増える胸の棘 二重写しのままの世界で
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心臓を 撃ち抜かれたよ 鮮血だ 君が抱えた その花束で
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右腿みぎももにスマホの重みの無い朝は何だか自由になった気がして
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耳たぶと同じ色した花選ぶ どこから見ても完全なる恋
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涸沢の雪に二つの命消ゆ アルピニストの仲間の慟哭
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