美乃
0
6
投稿数
64
主のなき部屋にたたよふ在りし日の家族の影のとほくこだます
13
父の弾くギタアといへばいくそたび同じところを間違えてけり
7
夜が来て朝が来る前 ことの葉はあとかたもなくこぼれたあとで
13
母を送り父を送りてはたとせのやうやう溶くる春のゆふくれ
14
ひさかたの光散らしむ 忘れないよりも忘れるほうが優しく
10
その人の語ることには想ひ出を手放すにはまず深いものから
7
さりとてものどかなりけりこの春をかぎりとすらむつひのひとひら
16
永遠といふにはあまりに透きとほる陰を重ねてなほも翳らず
12
うぐひすのはかそけくも春をまつ君が袖へとひとひらの舞ふ
13
その角を曲がればたぶん消えてしまう あとは何事もなかったように
10
夢といふ夢を見明かしいまはとて下弦の月も眠るころかな
10
少しずつもとの居場所へ還ったとばかり思っていたのだけれど
9
まづ母に赦しをば乞へ諸々の仕業数ふる初七日の夜
14
想い出すこともないまま花の香に不意を突かるるきさらぎの夜
14
しづみゆく世界の底でつれづれに思ふあした笑む花の色など
11
ありあけの月かたぶきていづれゆく道に涅槃の雪降らせつゝ
9
片道の道行きと知るまなざしの すでにここより出でて彷徨ふ
9
声ならぬ声が消えてしまうとき世界は何をなくしたのだろう
12
どうすれば良いのかといふ正解を探さずにすむ一日がほしい
10
みそひとの時の静寂しじまにこだまする 思ひのいよよ儚かりけり
10
どこかではほっとしていた 低きへと易きへとただおちてゆくのを
12
誰しもが歩いてゆく いつであれどこからであれ 終わりの始まりを
11
もう少しここにいたいと望んだら 世界はどこか変わるだろうか
13
姿なき今宵は月が底なしの心の闇を照らしつるかな
12
うつくしいものを見たいと乞い願う私は醜いかおをしている
13
楽になるために赦すのか 眼の前をただ茫漠と暮古月逝く
15
もてあそえにしもて子をいたづらに苦しむるとも知らで老いけり
13
どうしても現れるといふならば代わりに私を消してください
7
勘当を失言と言ひ繕ひし父よそれを失言と云ふ
12
墓前にて頭を垂れる父の背にこの二十年はたとせの星霜の積む
17