美乃
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想い出すこともないまま花の香に不意を突かるるきさらぎの夜
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しづみゆく世界の底でつれづれに思ふあした笑む花の色など
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ありあけの月かたぶきていづれゆく道に涅槃の雪降らせつゝ
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片道の道行きと知るまなざしの すでにここより出でて彷徨ふ
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声ならぬ声が消えてしまうとき世界は何をなくしたのだろう
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どうすれば良いのかといふ正解を探さずにすむ一日がほしい
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みそひとの時の静寂しじまにこだまする 思ひのいよよ儚かりけり
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どこかではほっとしていた 低きへと易きへとただおちてゆくのを
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誰しもが歩いてゆく いつであれどこからであれ 終わりの始まりを
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もう少しここにいたいと望んだら 世界はどこか変わるだろうか
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姿なき今宵は月が底なしの心の闇を照らしつるかな
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うつくしいものを見たいと乞い願う私は醜いかおをしている
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楽になるために赦すのか 眼の前をただ茫漠と暮古月逝く
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もてあそえにしもて子をいたづらに苦しむるとも知らで老いけり
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どうしても現れるといふならば代わりに私を消してください
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勘当を失言と言ひ繕ひし父よそれを失言と云ふ
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墓前にて頭を垂れる父の背にこの二十年はたとせの星霜の積む
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堕ちてゆく枯れ葉は歌うピカルディの三度のようにどこか明るく
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善悪などとうの昔に手離して もう少しだけ軽くなりたい
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葉が落ちる それだけのこと それだけが いまの私に分かるすべて
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夢であれ現実であれねむらせてくれるのならばどちらでもよい
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その先へ往きたいのだといざなってやまない銀のまぼろしたちよ
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終わりまできっと読めない 世界から長い手紙をもらったけれど
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語らいをためらいをそして歳月を その手と共に重ねたかった
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言葉になる前からそれは 言葉には 言葉にだけはなるまいとして
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誰からも忘れ去られてここにいる そんな行く末を願ふものたち
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手離してしまったものの温もりをいつまで憶えていられるだろう
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ひとつまたひとつ消えゆくあかつきの空の最後に殘る願いは
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遠くまで来てしまってから気付く これは誰かの物語だと
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かの青に染まずたたよふしらとりのかなしみをふと見たような気が
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