Utakata
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美乃
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主のなき部屋にたたよふ在りし日の家族の影のとほくこだます
13
父の弾くギタアといへばいくそたび同じところを間違えてけり
7
夜が来て朝が来る前 ことの葉はあとかたもなくこぼれたあとで
13
母を送り父を送りてはたとせのやうやう溶くる春のゆふくれ
14
ひさかたの光散らしむ 忘れないよりも忘れるほうが優しく
10
その人の語ることには想ひ出を手放すにはまず深いものから
7
さりとてものどかなりけりこの春をかぎりとすらむ
終
(
つひ
)
のひとひら
16
永遠といふにはあまりに透きとほる陰を重ねてなほも翳らず
12
うぐひすの
音
(
ね
)
はかそけくも春をまつ君が袖へとひとひらの舞ふ
13
その角を曲がればたぶん消えてしまう あとは何事もなかったように
10
夢といふ夢を見明かしいまはとて下弦の月も眠るころかな
10
少しずつもとの居場所へ還ったとばかり思っていたのだけれど
9
まづ母に赦しをば乞へ諸々の仕業数ふる初七日の夜
14
想い出すこともないまま花の香に不意を突かるるきさらぎの夜
14
しづみゆく世界の底でつれづれに思ふあした笑む花の色など
11
ありあけの月かたぶきていづれゆく道に涅槃の雪降らせつゝ
9
片道の道行きと知るまなざしの すでにここより出でて彷徨ふ
9
声ならぬ声が消えてしまうとき世界は何をなくしたのだろう
12
どうすれば良いのかといふ正解を探さずにすむ一日がほしい
10
みそひとの時の
静寂
(
しじま
)
にこだまする 思ひのいよよ儚かりけり
10
どこかではほっとしていた 低きへと易きへとただおちてゆくのを
12
誰しもが歩いてゆく いつであれどこからであれ 終わりの始まりを
11
もう少しここにいたいと望んだら 世界はどこか変わるだろうか
13
姿なき今宵は月が底なしの心の闇を照らしつるかな
12
うつくしいものを見たいと乞い願う私は醜い
貌
(
かお
)
をしている
13
楽になるために赦すのか 眼の前をただ茫漠と暮古月逝く
15
弄
(
もてあそ
)
ぶ
縁
(
えにし
)
もて子をいたづらに苦しむるとも知らで老いけり
13
どうしても現れるといふならば代わりに私を消してください
7
勘当を失言と言ひ繕ひし父よそれを失言と云ふ
12
墓前にて頭を垂れる父の背にこの
二十年
(
はたとせ
)
の星霜の積む
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