美乃
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どうしても現れるといふならば代わりに私を消してください
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勘当を失言と言ひ繕ひし父よそれを失言と云ふ
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墓前にて頭を垂れる父の背にこの二十年はたとせの星霜の積む
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堕ちてゆく枯れ葉は歌うピカルディの三度のようにどこか明るく
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善悪などとうの昔に手離して もう少しだけ軽くなりたい
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葉が落ちる それだけのこと それだけが いまの私に分かるすべて
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夢であれ現実であれねむらせてくれるのならばどちらでもよい
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その先へ往きたいのだといざなってやまない銀のまぼろしたちよ
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終わりまできっと読めない 世界から長い手紙をもらったけれど
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語らいをためらいをそして歳月を その手と共に重ねたかった
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言葉になる前からそれは 言葉には 言葉にだけはなるまいとして
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誰からも忘れ去られてここにいる そんな行く末を願ふものたち
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手離してしまったものの温もりをいつまで憶えていられるだろう
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ひとつまたひとつ消えゆくあかつきの空の最後に殘る願いは
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遠くまで来てしまってから気付く これは誰かの物語だと
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かの青に染まずたたよふしらとりのかなしみをふと見たような気が
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終わりなき夢があるならわたくしのかわりに永遠とわの夜を睡るひとへ
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すべて世は黄昏たそかれの中 おちてゆく言の葉に游ぶ音の葉に游ぶ
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Piazzollaの不意に流れてくゆりたつ かつて踊った時のすべてが
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言の葉も思いも尽きて殘るのは そこにあなたがいたということ
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いさよひの月にたづねる わたくしは眠りたいのかそうでないのか
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月と夜と海の歪な均衡を 誰が真っ先に破るだろうか
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月だけに聴こえる聲と 月だけが知る言の葉で 海は呟く
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非通知といふ手ざわりのその下に あるかなきかの人の心は
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ゆっくりと吐くほうが先 みづからに言ひ聞かせつゝ五つ数へる
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暮れてゆく空の静寂しじまにただひとり 委ねただろう母の身を泣く
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むなしさの底を知ろうとすることの そのむなしさはいやというほど
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いつかこの秋を忘れる 喪失と身軽さだけでここにいたことを
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花ひとつ携へてゆく応へてはくれない母の聲が聴きたく
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グレゴリオ聖歌の果てて燻り立つ 母よあなたの骨の白さよ
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