行き先を分かつ線路の交点の錆びても熱き正しき道程
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点と点つなげて空と交信するとんぼの風は時のあまいろ
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積年の寂しい恋だと言えなくて 君が好きだよ「冗談だよ」
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ちくちくと炭酸水の泡たちに不甲斐なさ責めたてられるようで
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穏やかに揺れるレースのカーテンはしぼんで流れまた膨らんで
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思想的一貫性を維持すべく身体を意志に従属させよ
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何者にも規定されない時間こそ、第一等の輝きを得る
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僕がいま探し求める故郷ふるさとは 弱さと共に生きる里なり
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愛なんて 死ねと殺すのミルフィーユ 君がいるから成り立つ気持ち
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素直さが無意味だと知る真夜中に あなたのことをなにも知らない
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共依存機能不全で育まれ歪なままで大人のフリを
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なぜだろうきみと出会った日の夜に万引きをする夢を見たのは
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カラーシャツ売り場できみの瞳だけパレットにない色をしていた
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辛いのは吾だけじゃない共有の傷みを分かつ愛の歌詠み
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浦々を掠め盛夏の洋上にヒバリ巨きな疑問符を置く
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鳴き声は 異性を惹き付けるためらしい 僕の嘆きは 頬が引きつく
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私は 殻から出れぬ セミである どうかパキッと 潰してください
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美しい君の横顔、背の高さ。忘れたかったが改めて知る
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檸檬にも本の匂ひは残れるや触れあふ点の刹那のえにし
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本の上無為に置きたる檸檬にも定まる点の必然やあり
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繕った言葉ばかりが物語る わたしはわたしを犠牲にしている
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四つ辻に埋めたことばを掘り起こし灰紫の海に溺れる
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ただ一度肌を重ねたそれだけで傷つけられた証に出来ず
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「どっか行こ」と騒ぐ朝の声を左から右へ流す扇風機
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ゲーセンの壊れたレバー押したときたまにふりむくきみの清しさ
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おだやかで足音立てない君の死は ベルベットみたいな手触りだった
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ことのはの林立してゐる気色より歌にほひ立ちときに迷へる
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葉はあまたいづれをらば光り来む永久とはにかかやくことのはのうち
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西つ方うす色にじむ階調を紫陽花雲と名づけてみむや
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平積みの本の天辺てへんの檸檬へと夜は月光こぼし与ふる
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