悲しみは深く大きく広がって砂漠さえをもなくしてしまう
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彼岸へと導く電車あったなら往復切符手にし会いたい
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信じたくないからずっと走ってる立ち止まったら夢が裏切る
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アレグロはまだ遅すぎるわたくしを三倍速で耕しなさい
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通勤の 橋を渡れば しらさぎが 朝陽を受けて 川面に居りぬ
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ときめきが 消えた僕らに もう二度と 訪れぬ冬 別れもうすぐ
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「それでも…」に 続く思いや 表情が 二人の距離を さらに縮めて
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私たち違う銀河に住んでいる だから言葉でさえも歪んで
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車窓より眺める富士は誰を待つ凛とし覆うウエディングベール
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遠距離の切なさばかり甦る 画面越しのホワイトイルミネーション
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もうきっと 次の季節は 望まない 来春らいしゅん君は いないのだから
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しるすとて あとのこらぬこひなれど なほあらじとて胸にしるさむ
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冬服のクリーニングのタグを切る春を待つ雪国のほとりで
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ドドドドド迫り来る冬照らされて艶々になる晩秋の柿
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悪評を 受けて書かれる 我が母校 溜飲嘆きが 相交じる冬
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印刷の立ち合いという待ち時間待つのも仕事・・・歌でも詠むか
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忘年会 この週末は 早すぎた 今日シュトーレンを送ったところ
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ちま猫と 5ミリの距離で見つめ合う こばらがすいて おめめでうったえ
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青き空風が誘って白波に海は戯れ笑みこぼす我
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富津岬先端に立ちその先のその先に見る対岸のせい
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朝陽射す空と海とが境なく緋色あけいろに染むホテルの窓辺
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寒風に 草木枯れゆく初冬にて 季節外れの恋の花咲く   
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推敲が敲くになったその理由わけを知らずに押されるインターホン
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ゆる夜に 白息しらいきつきし言葉ことのはは 情けふかくて思ひみけり
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日の入りは前は前へと倒れ来るぬくい地表の空気読まずに
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日干しする鰯の顔にぎらついたわれが映った両の眼の真昼
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ほととぎす 紫の花慎ましく 初冬の風受け気丈に咲けり
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ぎっしりと詰まった細胞に流れ込む 音の群れたち 私を生かす
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気持ち悪い 恋ってもっと綺麗じゃないのか、 このまっさらな シーツのように
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目から出る矢印 互いを指し合えば 時が止まった 触れ合いの合図
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