Utakata
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猫谷しゅう
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帆立みく 、桃香でもあります。よろしくお願いいたします。
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雨の日の良さをかぞえる少しだけ苦手な人を薄めるように
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たましいが付いてくるのを少し待つ高層に着くエレベーターで
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さまざまな港を船が寄るように猫が日陰をめぐる真夏日
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水切りで回復をする花ぼくも過去を忘れて生きながらえる
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降る雨といっしょに傘の水玉も抜け出しそうな午後休の街
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木漏れ日の模様になってすこしだけおなじ種族になる犬とぼく
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あたらしい町でわたしの続編に気の合いそうなカフェをみつける
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多幸感あがるビールの一口目ぼくの明日をチューニングする
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相槌と愛想笑いを会得して法事ではやや植物になる
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さみしさが周波数あわせるように溺れるほどの夜の静けさ
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誰にでもまだ生きやすい世界ではなくて卵を持つように訊く
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とりどりの油彩で花を足すようにランドセル群れゆく通学路
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春風が撫でたところが泡立ってゆくように花ひらく白梅
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絶滅をゆるくしながら人類の不和は尽きない賑わうテレビ
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沈黙に目隠しをするようにやや音量あげて聴くカーラジオ
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この先の未来のどこか予約するように見初めて買うワンピース
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苔のむす森深くまで分け入った心地でひらく古書店のドア
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さみしさは歪なかたち自分でもわからないのに猫が収まる
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なつかしい夕日のような声がまだ鼓膜にあってふとあたたまる
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冬なのに暦を越えた晴れぼくのどこかうっかり咲きそうになる
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人よりも劣るところを伸びしろと言い換え今日の月があかるい
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憧れにふいに襲われ文豪のような眼鏡を試す夕暮れ
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いつだって君の味方という目して犬はわたしの砦になった
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焼きたてのクロワッサンを食べるよう音弾ませて霜をふむ朝
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しあわせと美味しいはほぼ同義語でついつい落ちるカロリーの罠
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灯台が夜に亀裂を走らせて光る地上のポラリスとして
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便箋にひと文字目書く心地して踏み出す朝のいちめんの雪
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図書館の細胞を取り戻すよう返却本を手にして司書は
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焼き芋の温もり胸にあて僕のこころをすこし追い焚きしてる
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感情を試着するよう小説の主人公へと思いを馳せる
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