Utakata
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猫谷しゅう
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帆立みく 、桃香でもあります。よろしくお願いいたします。
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シャインマスカット手にしてドラクエの勇者のようにレジへとすすむ
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履歴書の本音に蓋をするように明朝体がやけに冷ややか
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ふと香りやさしく肩を叩かれたような金木犀と来る秋
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きみのその微笑みをあらわすのには言葉はとてもちいさな器
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行列の一番まえにこぎつけて最大級に恋する気持ち
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真夜中へ錨をおろすよう本をひらく夢との境界線で
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歯車が一途に回るしとやかな音の棺となるオルゴール
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夜を研ぐようにページをめくるたびリアルになってゆく主人公
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点火するようにコキアは色づいてクレッシェンドで秋が駆け出す
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主旋律奏でるように街を行くあたらしい靴履いた秋晴れ
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画材屋は変わらずあったガーネット溶かしたような夕暮れの街
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さみしさの居場所とおもう雨だれの音がやさしく溜まる窓辺は
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町じゅうに朝を杭打つようにして配達員が新聞をさす
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出迎えてくれると分かる犬の待つ帰路は一等星のあかるさ
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空を刺すように乾杯 夏の牙みたいなラムネ瓶を掲げて
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外界をプールの底は遮断してここは真夏のひかりの棺
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贋作を見破るような眼差しに射抜かれている面接室で
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もう君の匂いも消えたこの部屋は墨絵のようで花を買い足す
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イヤホンをとつぜん外されるように夏を証明する蝉時雨
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しあわせをあきらめないで生きてゆくビールグラスもちゃんと冷やして
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感情が想定内をはみ出して気づいてしまう好きの領域
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放たれて月に遠吠えするようなクレーンたちの工場夜景
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獏が食べ残した夢の断片をパズルのように当てはめる朝
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居間にあるバリの土産でいただいたお面がずっと他人行儀だ
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降り出した雨があたって街じゅうをパーカッションにしてゆく夜更け
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ていねいに型紙をとるよう暮らす身の丈に合う凪をもとめて
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さみしさを磁石のように吸い寄せる夜によく合う詩集をひらく
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平素よりお世話になっておりますという目で猫がねだるおかわり
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それぞれがつくる時空のシェルターに籠るみたいに過ごす図書館
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大輪のダリアみたいに笑い合うカフェをかつての放課後にして
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