猫谷しゅう
40
48
投稿数
177

帆立みく 、桃香でもあります。よろしくお願いいたします。

思い出は濃くなるでしょういつか死をじっと見つめる獣になって
6
乗客のすべてが降りて終バスは夜の棺となり眠る町
9
煌めきに花野をおもう蜂蜜の光りを舐めた人から春へ
4
ぎこちなく色をあなたと足してゆく日々はパレット絵を描くまえの
12
はなやかな陽ざしに春の糸口を見つけすべてがひかりだす朝
5
人肌に悲しみひとつ馴染ませて紅茶を淹れる春はすぐそこ
4
いい人の鎧を剥がす銀色の雨さみしさがほのあたたかい
9
春が来る夢の浅瀬をゆくように心へ香る蝋梅の道
9
対岸のホームに分かれ強力な磁石のように僕ら手を振る
8
お互いの理想で出来た中庭を見せ合うように花を選んだ
11
どこからが空か答えを探すよう好きな理由がないままの好き
11
帰路すこし聴きながらゆく傘の肌あたる雨粒たちのショパンを
4
雪原を割けば春だと足跡で切り取り線をつける野うさぎ
15
春風が吹いた狼煙にするために桜色したストールを買う
9
読むぼくを労うように伏線が回収される推理小説
7
モノクロの写真に在りし色彩を見る祖母の目に広がる花野
5
風になる犬と駆け出す少しだけ浮力を授けられた心地で
5
悲しみが沈むまで待つ上澄みの水面へとまたひかり差すよう
6
さみしさに杭くい打つような雨わたしきっとあなたの知らない顔だ
6
吹き出しのように紅茶の湯気のぼり無言で冬を語る雪空
5
遊園地その賑わいのゼンマイを巻くようまわる回転木馬
4
舞う蝶とおだやかに戯れるようイチョウ並木を老犬とゆく
4
さよならが笑い話になる日までワインを寝かすよう胸に抱く
7
しゃぼん玉その飛び方でなんとなく分かってしまう風の表情
4
心にも怠けてしまう筋肉はあってなかなか好きが言えない
4
港へと寄るごと栞挟みつつゆっくり本の航路をすすむ
5
丁字路でどちらにするか幸運が匂う気のする方ゆく散歩
6
晩鐘の絵を描いている秋風に揺れる窓辺のカーテンを描き
4
ほっとする「あったか〜い」の缶たちはきっと魂くらいの温度
12
普段から温存してたやる気みな衣替えして使ってしまう
4