春闘も 鳴くだけ無駄とホトトギス 季節移るも景色変わらず  
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巣立ち行く 君のにぎやか遠くなり 机や椅子に残り香遊ぶ
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毎週金曜に出勤するたび降る雪に「もう三月なのに」とついぼやきけり
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頸筋に四季折々の掌が重なっており瞑想の夜
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親が喜ぶから「好き」と食べて見せたホタルイカでえずく晩酌
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北欧のパン捏ねたる老いた手よ伝統紡ぎし美しき手よ
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「歪む」って 「不正」って書くね、そういえば  あ、それだけです じゃあまた明日
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吾子がえがいたデタラメな線にカンディンスキーの息吹宿りて
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なんでもない夜にあなたとドーナツを食べられる関係になりたいのです
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記念日に食べるフレンチもいいけれど なんでもない日のミスドも嬉しい
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今年はもうニットの服は着おさめだ インターホンを春が押してる
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最高な気分をいつも自分で台無しするのを 20年以上繰り返してる
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めんどくさい あぁめんどくさい めんどくさい コレがずっと生活を牛耳る
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へらへらと笑う貴方とその罪は もはや裁けぬ 私以外に
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春なんて別れるだけで悲しくて出会いなんかは求めないから
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三月の吹雪に縮むふきのとうゴメン私は春が嫌なの
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友達から「終活中で」と数枚の布地届きてあれこれ思案
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ただ空を見上げていたい、言う君に そっとしたる月の目薬
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ほらここに君のためなら何だってしようと思う男が一人
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静けさは ぬばたまの夜 薄氷の 撓むが如き 紅をひく月
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音もなき 今際の淵に しずむなら 聞こえるだろう いつくしむ聲
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願いかい? 生の期日に 音もなき みずのなかより そらをみること
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舌先でドロップの文字読みながら君を待ちます 霖雨の間
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やがて知れ うつろひの世を 行く河に 差す翳は吾 華曇らしむ
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時給からはみ出す分の頑張りを靴で踏み消す深夜のバイト
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もし君が また下の名で 僕のこと 呼んでくれたら それだけでいい
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地下鉄を 彷徨う夜は 何気なく あの子のくれた 一輪が杖
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市が推しのフレイル予防講習へそれを恐れる歳となりたり
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いたづらに 苦界な生みそ きみがため 愛別離苦ぞ 已むなけれども
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わがままを言ってしまって後悔す 「お前は何歳いくつだ」自分を殴る
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