囲む木々蝉声せんせい注ぐどこからも情緒も淫ら恥じればいかが
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美しい 語彙の源泉 かき混ぜて 生まれ流るる 無数の泡沫うたかた
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バスを降り 紅き白粉花オシロイバナ香る 蝉時雨と 夕涼みの月と
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なつむしの エコー︵残響︶ながなが 尾をひいて みみなりみたいと ひるねにおちる
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消えた火から 煙が月へ 昇るなら ずっとみていよう 満ちても欠けても
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あの人と巡れる夏は自らをずるけられない私のいる夏
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多様化の 社会の波に 揉まれても 自分の足で 歩み行きたし
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一時間 クーラーべやで ひえたから やきそばくらいは いためてみせる
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もともとは我ら他人さ違う人ちがうからこそあなたと生きたい
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木陰にて 思い出したる 風のおと  ただひたすらに 楽しき日
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米よりもケーキを炊いてばかりいるアイデンティティ崩壊の危機
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この最も暑き夜にこそ ポトフする トマトポトフと 敢えて呼ぼうぞ(蒸し大豆いり)
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宝くじ売り場に並ぶ人の顔みんな真顔で誰も笑わず
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(おおきめの)保冷剤 タオルでつつみ 扇風機ウラ 冷風扇には およばぬけれど \とけたしずくの蒸発熱も
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終業式 終えて駆け出す小学生 綿アメ千切って高し夏空
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おいなりに ばけそこなって おみそしる なつのおあげは あしはやい \あぶらあげにカビ
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奥方のにかぎろひの湯気見えてかへり見の間なくツキ傾きぬ / 人麻呂 meets 令和
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泣きながら 笑うわたしを 誰もしらず 鏡に放つ 私の狂気
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風鈴の音が混ざって夏の空やけに重たい夜が近づく
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目的地は決めずにただ出かけたい 恋人繋ぎであなたが隣で
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部活後に 友とだらだら 長話 気づけば空に 涼月ひとつ
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埋まってた 夏の予定に 感づいて 作り笑顔で 背中を押した
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ヒマワリのうつむき加減で朽ちてゆく姿はいつもモノクロ写真
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清らかな植物のごと指のばし爪を彩る娘の真夏
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夜明け前眠りし吾子の指赤し明るきあはひに夢の通い路
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光差す 向日葵色の 海を行く 麦藁帽の 君に手を振る
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ひとりきり鳴いて鳴いても夏蝉のいのち尽きても結べぬ恋だよ
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足元の 最後の火玉 見届けて わずかな煙 月へと消えて
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夜太鼓 五尺五寸の おのこの背 ただに打ち抜く 実らぬその実
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涙声の朋友ともから急に電話鳴り 一緒に泣いたり すこし笑ったり
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