Utakata
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岡久生
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椿の森木陰の轍に雨は降り花が落ちれば波紋広がる
14
風寒み辛夷の蕾固くして照らす街灯早春の宵
17
仏頭に
小
(
ち
)
さき傷あり
境内
(
けいだい
)
の庭の日陰に
斑雪
(
はだれ
)
残れり
18
梅が枝に降りし小雪の消え残り目白しば鳴く小さな声で
22
ひよどりは声高高と飛び上がり凍れる空に朝の月見ゆ
26
バス停のベンチに座り来ては行く電車の音を聴きて わびしや
17
同じ家の並んだ街を寒風と過ぎれば暮るる人参畑
21
花が咲く頃また会はむと言ひし人帰らずなりぬ朝の空に月
21
さるすべり夏の名残りの赤々と街路に咲けり血の色をして
18
どくだみの花咲き初むる朝の雨心は道に惑ひぬるかな
27
山を行けば幹に苔生す桜ありて少し咲く花に風は冷たし
23
残月の光冷たき広場からほぼ貸し切りの路線バスに乗る
16
朝靄の中に光の染み入りて白木蓮の蕾ふくらむ
24
風の吹く夜更けにバスを待ち居れば影絵の森に怯える月夜
20
切れぎれの雲の向こうに有明の月が隠れる冬の明け方
22
赤き実の豊かなる枝に
鵯
(
ひよどり
)
ら集いて遊ぶ
朝
(
あした
)
楽しも
21
年を経し杉の根元は影差して朝日に映える梢の緑
19
バスは行き後に残りしバス停に光つれなき夜の街灯
20
暮れ果つる梢の上の
東
(
ひむがし
)
の空に氷れるシリウス青し
20
一月の日射し明るき林間を母と歩けば冴ゆる
阿夫利嶺
(
あふりね
)
16
枯れ葉散る道のほとりの水溜まり薄き氷に朝日差し初む
25
柚子の木に柚子の実のなる庭ありて売却物件なるぞわびしき
21
高い空飛行機ゆっくり交差して西と南に見えなくなった
16
東向きの窓たちみんな輝いて朝を迎える瞳となりぬ
18
花も葉も無き枝にいて鳴く鳥の声のかそけき朝の坂道
20
有明の月の白さを手に受けて雑木林の梢に落とす
17
枯枝に風の浮かべる月の舟響き冷たき銀色の笛
15
四十雀枝を渡りて囀ずれば冬の朝日に冴ゆる霜風
20
あったかいコーヒー全部売り切れの自販機の前たたずめる人
24
雨の名残り
滲
(
にじ
)
める空のさざ波によどむ空気を
鴉声
(
あせい
)
引き裂く
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