Utakata
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岡久生
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雨の名残り
滲
(
にじ
)
める空のさざ波によどむ空気を
鴉声
(
あせい
)
引き裂く
12
思い出は電車に乗って帰り道川面に映るみかんの夕陽
18
空に冬の見えたる朝の尾根道を行けばすすきの穂は光りたり
19
坂の上の空き家の庭をいっぱいにコスモス咲けり 荒れにけるかも
13
誰がためか悲しかるらむ すすきの穂遠ざかる見ゆ 秋の夕暮れ
17
草の葉の切っ先にいて風に揺れるオレンジ色の羽の蝶々
15
歌いつつ自転車を漕ぐ人が行く秋の真昼の心地よければ
16
青柿の枝をはなれて地に落つるまでの時間を思い遣る朝
16
種々
(
くさぐさ
)
の虫の音色を聞き分けて秋の
夜
(
よ
)
夢の中で覚めたり
13
八月
(
はちがつ
)
の光る地面に百日紅
梢
(
こずえ
)
の影を揺らして燃える
17
ギボウシの花咲く朝に妹を納棺のため車に乗せる
17
まっすぐな坂を登れば風が吹き風が吹くなかこの夜を眠る
11
白樫
(
しらかし
)
の枝葉の茂りそが中の雉鳩の巣をたれか
毀
(
こぼ
)
ちぬ
8
風の中に草の香りのふくらんで雨雲走る空の遠くを
13
ギボウシの薄い緑の葉を濡らし雨は降る降る天高くより
16
朝曇り雉鳩の声響くなり谷間の駅へ続く坂道
12
行くバスの一瞬窓を
過
(
よぎ
)
りたる白くて淡い梨の
花群
(
はなむら
)
13
ひともとの木に紅白の花が咲くこともあるなり駅への坂道
9
山雀
(
やまがら
)
の枝伝い行く街路樹の桜の花は
勝
(
あ
)
げて数ふべし
8
なづの木のさやさやなびく川底に揺れる魚は空の上に眠る
8
亡き人と暗き道にて語り合う夢から覚めて涙に気づく
19
あてどない営みと知り繰り返し手を振っている人の苦しみ
8
夜明け前の冷えた地面に横たわる人の胸にある黒い塊
4
白い月のそばをゆっくり遠ざかる飛行機を見る人の悲しさ
13
冬の日の午後の
日向
(
ひなた
)
の果ての無さ観音堂の鐘鳴り渡る
11
高行くや飛行機雲は夕陽受け送電線の彼方を進む
9
川の
面
(
おも
)
に白さ一瞬はじけ飛び
小鷺
(
こさぎ
)
が一羽
川上
(
かわかみ
)
に飛ぶ
12
街に出て見上げてみれば
黄葉
(
もみぢ
)
せるメタセコイヤは空に突き立つ
14
鉢植えのコーヒーの葉に秋の陽はゆらりと照りて風は止まりぬ
17
夜明け前上がれる雨に黒く濡れ青空映し光るアスファルト
7
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