殺伐とした風景をなお見下ろしてビルの上から今年を望む
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あたらしき年にもあらむ難き日も いのちを紡ぐ野の花のやうに
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老い二人 孫達きみが帰りし我が暮らし 日常戻るも 寂しくなりて 
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ひび割れた大地に「慈雨」を草花に 「光明(ひかり)」を注げ我が杯満たせ /全部お酒🍶
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消灯を過ぎた静かな談話室 人気ひとけの絶えた食堂の隅 /「しゅくだい」
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左手で握る粉雪固まらず 冷えた指だけ霜焼けとなる /雪解け流れて水泡に帰す
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弁慶は脛で泣いたがアキレスは 筋を射られた可哀想にね
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天井の染みも夜空の星屑も 痒い場所すら手は届かずに
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切り餅をそのまま齧ったことはある? 消ゴムみたいな食感だよね
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綿入れに勝るものなしぬくぬくと 隙間風から守ってくれる
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下山や 松川事件 あった戦後。クーデタ 飛行機 火事やらつづく
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布団の中で詠む歌は布団の中でこそ読んで欲しい仕上がり
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穏やかに 無病息災 健康が 難しくなる ような年頃
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天の川架けるようにこの黒髪をドネーションする彼の命日
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雪の日を面倒だと感じて二十歳はたち境界線が見えた気がした
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ひとつだけ誇れるものを持っている君を好きだと思える心
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マップから マンションと君 マーク消す 歩が止まる 永訣の朝
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たそがれが 街ごと二人 かげにして そのまま君を 見失ってく
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恥ずべきは昨日までの過ちでなく明日に望んで押し出す今日だ
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悪を悪正義を正義と謳う間に明ける年あり喰らう空あり
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予想超え勝利夢呼ぶ磨かれた魔球目にして感服の夏
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向こう側見えるくらいに透明な君を消さないために生きてる
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この場所にすべての歌を置き去りにしてさよならの向こう側へと
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満たされぬ心に気づいて明ける新年とし 知らない街を旅してみよう
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少しだけ居心地悪い義実家も年賀の味と交わす盃
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垢すりでゴシゴシ擦(す)られ疲労までも洗い流された
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十五年経て年末帰省実現すキャリアブレイクの成す二人旅
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富士の峰ダイヤモンドと重なりて今年の幸を願いに込める
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初詣子宝御利益ある神社独女ひとりで気まずい参拝/実家に一番近い神社なので
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ひび割れた夜中に飲んだハルシオンあれはきっとポラリスだった
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