一日じゅう昼の香りがただよって生きていられる気がしたよ、春
11
遠くからでも分かるひと太陽は遠くにあってこそあたたかい
10
冷たいが先に来ていた町を出て知った底冷え、ゲームスタート。
5
梅の花やっと咲かせた老木を労うようにホトケノザ咲く
17
ねぇ君と食べたあの日のクレープの重たさだけが手の中にいる
10
タカトシのタカが着ているライオンちゃん キティちゃんより好きかもしれない
15
夕飯は私の好きなものばかり受験前夜の母の励まし/題『前』
16
オリオンがこんな時間に高くいて春はもうすぐ春はもうすぐ/題『春』
12
腰痛の妻に付き添う通院の帰り付き添い交代になり
13
ストーブと 涙で揺れる 卒業生  夢のひととき まだ冷める覚めるなよ
10
寒空に丸まる君の背中には 春の日向が隠されている
17
「ゆ」の文字が 50の中で 1番好き 君の一文字 心を泳ぐ
9
しんどくて誰にも言えぬと言うのなら 鬱々短歌わりといいのに
20
黒豆茶花粉症にもいいらしいいや効いているそう思い込む
10
「おはよう」で昨夜のケンカを強制終了します修理はしない
16
街と海つなぐ七色なないろのアーチかな 小雨の神戸 青空に虹
25
啓蟄を知りて出でくる虫らしい夫はすかさずテイッシュでギュッ
25
ひさかたに君の消息聞く午後は少しの道も遠廻りせん
32
寒くって春がきたとは思えない春の花粉は鼻にきている
12
切れかけた街灯の下またたいている十五年分の感情
10
きのこ傘雨に弾かれ艶を増す誰も知らない朝のはじまり
12
石突を見つめて傘をきつく巻く 絞めたい首でもあるのだろうか
9
の想い重く重く 地の底までと重く想いし
7
弥生そら 月と木星 寄り添いて 星の絵の具と 群青パレット
25
いつ見ても片方だけで落ちている手袋迷子の仔猫のように
13
ママちがう ショベルとブルを間違えて 謝罪するまで説教続く
12
孤に徹すあまりの酷に過ぎ来たる過去も甘やかな感傷もなし
14
柔軟さ失い老いの加速する義母を案ずる日々始まりぬ
26
卒業を目の前にして気づく幸せ ぽろりと落ちた涙は後悔の味
6
二分咲きの寒梅揺れて偕楽園 我らの梅は酒で飲もうぞ
21