晶史
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おかあさまに似たたたずまい還暦で店番をするあなたのすがた
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あの雲の上には確かに満月が若くて逝った君の居る場所
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初恋の手紙をもいちど出すようにガラスペンにはインクを少し
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この秋もひっそり萩が咲きました名曲喫茶は閉店しました
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日陰へと横切る猫もこの夏を耐えてるように足どり重し
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送り火が来年もまたともるころ生きてく道は見つかってますか
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合歓の花咲くときポンと音がする電車の中であなたが言った
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南方で兵隊さんが亡くなってエアコン温度すこおし上げる
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老夫婦なぐさめあったり笑ったり大学病院の待合受付
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暑いのは大っ嫌いなはずなのにろうじに流れる祇園ばやしが
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青空にギーコギーコとジャッキ鳴る長刀鉾が直角に立つ
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青春が制服を着て駆けてゆく下校時間の突然の雨
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道草を連日食ってた本屋さん今月末でお店を閉じます
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休み時間まで待てずに朝顔は日差しの下で葉のしおれたり
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アンシャーリーテレビアニメをみるたびにハネムーンから三十五年
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扇風機しまう頃にはまたひとつ体の具合が悪くなるよう
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尾道に行ってみたいと妻が言う  私に青き思い出のあり
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瞳孔を開きて網膜覗き見る心の奥を見透かすように
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昨晩の雨を含んだ砂利道の自転車の音高く誇らし
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いただいた紹介状は教授宛て どんな治療が始まるのやら
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朝顔のふたばの鉢が並びます一年生が元気なように
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新しくアンシャーリーが訳されて半世紀ぶりに本棚に置く
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あのように砂子が振れるものなのか春の夕べの西山の雲
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車椅子通れぬほどの通路なら「ごめんなさい」はいわなくていい
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滲むこと震えることもない手紙キーボードでは筆にはならず
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孫多くひ孫はもっと多くいて春の葬儀をにぎやかに終え
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我が国の戦果を伝えたラジオ塔 戦後静かに公園に立つ
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人生が賑やかだったころ聴いたフォークソングが真夜中聞こえ
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戦争と別れと涙の連続で洗礼うけて四十五年
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それぞれに事情はあると思うけどイスラエルからメールが届く
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