晶史
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寒い夜に何を話して過ごしたかガレージの隅にねこが三匹
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刃なる月西空に輝ける今宵寒さと明星を連れ
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この石はアクアマリンという名です恋人だったママにあげたの
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連れられたトイプードルも立ち止まり株価ボードをながめています
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路地にある蠟梅の鉢がなくなって春の足音聞き逃したり
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若い日に思い出のある国訛り連続ドラマの台詞のなかに
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車椅子押す奥様をしたがえて彼は両手に杖もて歩く
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このドラマあの方言はその昔川辺をともに歩いたことば
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スマホなどなかった時代のクリスマスエクスプレスが岡山に着く
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かの人を育てた町が舞台ですドラマに彼女の訛りをきいて
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後足あとあしを車輪に乗せた老犬の散歩の瞳が潤んだように
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三日月も見ずにペットショップの仔猫らは憂いを知らず戯れている
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こっそりと公衆電話で待ち合わせ約束をした初恋記念日
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懐かしい友より遠き電話あり彼女と彼は別れたらしい
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ようやっと金木犀が香りだしあの日のことをまた思い出す
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英語ではスーパームーンというらしい竹取の姫今夜かぎりに
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姫君の名前のような朝顔と桔梗が集う小さい路地に
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古書店の和泉式部の日記にはうすき書き込み行間にあり
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飼い主とトイプードルは行儀よくおすわりをして診察を待つ
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わたしにもあんな時代がありましたふたりで帰る堀川高校
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あのことは許してあげようと思うよな 北のほうから秋風が吹く
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通学路子らの横断に旗を振るその老人は杖をつきたり
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この店のウィンナコーヒーは飲みませんあの思い出が壊れてしまう
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同窓会どうして君は来なかった 話したかったあの日のデート
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半世紀過ぎてようやく古紙に出す宮本武蔵と橋のない川
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この星は地軸がすこし傾いてお盆を過ぎれば虫の音聞こゆ
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灼熱のアスファルト這う虫のごと自転車こいで礼拝に行く
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またひとつ悲しい話が生まれたか阪急電車運転見合わせ
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飼い主が一歩あるけば四歩行くダックスフントのお散歩せわし
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この湿度なければここまで漂わぬ ひそやかに咲く白いくちなし
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