榎本明音
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短歌の表記は口語・現代仮名遣いです。自然や季節を中心に、食べ物や日常の出来事など明るいトーンの内容が多め。ほぼ全て定型遵守。
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星空の下で触れてる肩の先寄り添う影が風にたゆたう
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風鈴の音が混ざって夏の空やけに重たい夜が近づく
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ひまわりがを追わされて曲がるけど折れない意地を天に伝えた
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パツパツと皮の張ってるトマトには夏の光が満ち満ちている
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増えたのは日焼けのあととそばかすで皆が等しく夏をくぐった
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種が飛ぶその一瞬の隙間からスイカの汁が喉をすりぬけ
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濡れた葉とつやめく粒がきらめいて私を誘うブドウの房よ
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おにぎりの海苔がパリッと鳴るくらい夏の朝には風がほしいと
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ひやむぎの白さに涼を見つけたら大葉をんで気取ってみたり
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焼きそばの屋台の前で決心し「ソース多め」と言ってた子ども
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お揃いの焦げ目がついたハンバーグ今日はちょうだい大きい方を
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漫然と背丈を越えた夏草が隠す小道を鼻で指す犬
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暑すぎて限界だったアスファルト私の影で火照ほてりを冷ます
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焼けついた日傘の影を追う道の蜃気楼すら夏に飽きてる
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折りたたみ傘の入れ場所悩み中雑に詰め込む梅雨の火曜日
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春風を背中に受けて歩き出す今日の私の足音がいい
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バス停で紫陽花あじさい色の傘を差し雨が止んでも潤ったまま
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春キャベツちぎるときだけ思い出す故郷の土に沈む夕日を
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朝顔がごく丁寧に咲き誇り息をひそめてただ晴れを待つ
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地下鉄の人波の中まごついて傘のがらだけひどく目立って
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トースターふくらむパンの麦色よ昨日の夢を柔らかくして
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静けさが映る湖面に霧時雨きりしぐれ向かって語るひとりの夜に
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雨上がり梅の香りをすりぬけて空を切り裂く一羽のメジロ
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ネギを切るからい香りで満たされて一人暮らしはキッチン狭め
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麦茶には氷が三つあればいいグラスの音はちゃんと鳴るから
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チクタクを無視してしまう癖がある秒針だけはときどき睨む
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青薔薇の棘をなぞれば指先にひやりと残る実験の跡
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トラックに積んでいたのは服じゃないつい飲みこんだありがとうとか
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ランナーが並んだ朝の川沿いで刻む鼓動が道を彩る
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書きためた百の想いを積み上げて言葉の山が背を追い越した
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