榎本明音
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短歌にハマってつくったアカウントです。
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春風を背中に受けて歩き出す今日の私の足音がいい
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バス停で紫陽花あじさい色の傘を差し雨が止んでも潤ったまま
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春キャベツちぎるときだけ思い出す故郷の土に沈む夕日を
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朝顔がごく丁寧に咲き誇り息をひそめてただ晴れを待つ
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地下鉄の人波の中まごついて傘のがらだけひどく目立って
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トースターふくらむパンの麦色よ昨日の夢を柔らかくして
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静けさが映る湖面に霧時雨きりしぐれ向かって語るひとりの夜に
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雨上がり梅の香りをすりぬけて空を切り裂く一羽のメジロ
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ネギを切るからい香りで満たされて一人暮らしはキッチン狭め
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麦茶には氷が三つあればいいグラスの音はちゃんと鳴るから
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チクタクを無視してしまう癖がある秒針だけはときどき睨む
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青薔薇の棘をなぞれば指先にひやりと残る実験の跡
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トラックに積んでいたのは服じゃないつい飲みこんだありがとうとか
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ランナーが並んだ朝の川沿いで刻む鼓動が道を彩る
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書きためた百の想いを積み上げて言葉の山が背を追い越した
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雲ならばこんな感じと思いつつ干した布団ででんぐり返し
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潜ったら綿の香りが背にまわり小春日和にぎゅっと抱かれる
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つぎつぎと膨らむ枝を見上げたらうすももいろが光に混ざる
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暖風ではらりと舞った桜たち新たな春のあわさが薫る
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いつだっておやすみだけは伝えてる黙ったままのぬくい枕に
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雷鳴が空を割っては轟いて目をつむっても見える一閃
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靴下のくるぶし側の刺繍から歩いた距離をそっと思わす
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砂浜で真白の貝を拾ったらバキリと折れてまた砂に成る
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起きたてで目が閉じている雛鳥ひなどりに春を告げるか母鳥の声
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菜の花を踏まずに歩く健脚が春の土へと確かに触れる
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甘辛のタレが絡まる肉巻きは陶器の皿で熱く輝き
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菜の花の黄色い波を道として歩きほほえむ恵みの春よ
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白薔薇は雨に濡れてもうつむかずひとつふたつと雫をいだ
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緩やかに流されるまま昼寝して夢とうつつが溶ける境目さかいめ
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やみくもに流れた汗は滝のよう自分の軸がぐらりドロドロ
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